<観劇レポート>やみ・あがりシアター「こっちみてるの、しょうこ」

【ネタバレ分離】

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観た芝居の感想です。


公演前情報

公演・観劇データ

団体名 やみ・あがりシアター
こっちみてるの、しょうこ
脚本 笠浦静花
演出 笠浦静花
日時場所 2019/06/12(水)~2019/06/16(日)
小劇場楽園(東京都)

やみ・あがりシアター?

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2012年に旗揚げ。

「ヒトのやんでるところとあがってるところを両方、病気が治ったばかりのようなハイテンションでお届けしたい」

というコンセプトのもとに芝居作りを行う。

やみ・あがりシアター//

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

「そろそろ、来るんですよ」

「……。」

「これくらいの時間にほら」

「……。」

「あの人、これくらいの時間にいつもほら、ね」

「……。」

「店の前で立ち止まって、こっちみてるの」

「……。」

「ねえ、あたしか店長か、どっちが目当てなんですかね」

「……ウインドウショッピングでしょ」

すべての窓が、

割れれば凶器になる、スリル💔


ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時 2019年6月12日 19時30分〜
価格 3000円 全席自由(事前にネット予約)
上演時間 95分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★★★(5/5点満点)

客席の様子

男女は半々くらい。若い人が大半ですが、シニアな方も結構いました。1人客が多い印象です。

観劇初心者の方へ

観劇初心者の方でも、安心して観劇できる舞台です。

観た直後のtweet

ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

店員がマネキンのように立ち尽くして、接客を全くしないのが売りのちょっと変わった、でもお洒落な洋服屋。店長の、しょうこ、のこだわりに乗っかって一緒に働いている、マフィン。ある日マフィンは、毎日決まった時間に、二人の立ち姿を窓越しに見にくる男に気付く。しょうこ、マフィン、どっちが男にとってのミューズかな、などとからかい合う二人。(事前ストーリーはここから)ある日、同じ時間に見に来た男。雨に濡れても見ているので、男を店に招き入れ、どうしていつも見ているのかと男に聞くしょうこ。帰ってきた答えは「窓ガラスが美しいから。」男、綿貫はガラス職人。この変わった店の窓ガラスを作ったのは綿貫で、自分の作品を見に来ていたのだ。

しょうこは、自分など眼中になく、男の間にあったガラスに興味があった事を知り、変化していく。気が付くとしょうこもいつしか、奇麗なガラスに魅せられる。店をマフィンに任せて、綿貫が社長を務めるのガラス工房に弟子入り。すると工房では、客からの依頼で綿貫の工房が制作していた作品が、何者かによってすべて割られていた。そんなさなか、再度出会い、すぐに意気投合する、しょうこと綿貫。まるで一心同体で、お互いが考えている事は何でもわかる、と感じる2人。作品が壊されたことを機に「最も透明なガラス」を2人で創ると言い出す。妻と工房の職人を放置して、ガラス創りに邁進する二人。しかし、二人には、たどり着くべき場所、戻るべき場所が微妙に違っていた。・・・と、ストーリーをかな~り強引にまとめると、こんな感じ。

舞台演出として、大切なポイントが一つ。主役の「しょうこ」は、パリコレですかというようなお洒落な服を着て、常にマネキンのように、殆ど動きがなく舞台に立つ。周りの工房の荒々しい人々の雰囲気や、男の妻の朗らかさと、マネキンな所作のギャップが、常にこの舞台の雰囲気を創っている・・・そんな、ちょっとズレている世界観の中でのお話。

不器用な人が、不器用なりに何か至高なものを求めていくと、そこには、足のつかなくなる深さの場所がある。二人はその深さの場所まで、行ってしまった。ただ、足のつかない中では、当然足が付かない。拠り所がない。何も産まれず、「透明なガラス」を意気込んでいたはずが、いつしか、何もない枠を、ガラスだと偽るまでに落ちぶれる。綿貫は結局は、妻のもとに戻り、しょうこは店に戻る。

私の中の「順当」な解釈として考えるなら・・・「それまで信じていた美」より更に至高な美を見つけてしまった人が、その美に魅せられ、その美に自らを捧げ、そしてその美に失望させられるまで、の話だと思う。不器用な生き方と、至高の追求は、何処か両立しない。戻るべき場所、拠り所となる場所が必要である、というメッセージを感じる。

足のつかない場所の先に求めるものは、純粋に「美」とも取れるし、熱中するものとも取れるし、「不倫」的な解釈もあるのかもしれない。しかし、物語上はあえて「透明なガラス」というモチーフだけが語られる。そこに、大きなメタファーがあるのか、という事が、終始気になって仕方がない。そんな中に放り込まれたので、結局この物語はいろんな解釈が出来る気がするし、全く理解できない人もいるお芝居じゃないか、と思う。

舞台の展開、「マネキン」みたいな2人の演技もありどこかコミカルで、テーマのようなセリフはきっちりテーマっぽく紡がれるので、ストーリーは分かり易い舞台なのだけれど。どこか、今自分が観ているもの・・・芝居として観させられたものは、物語としての表層でしかなくて。実際に感じている事は、どこか観ているものとは違っているような気がする、という、とても不思議な、ハイコンテキストなものを観させられているように感じる舞台だった。その証拠といえるのか、ラストの20分程度、理由の分からない、うっすらの涙が止まらずに、自分でも自分の感情に驚いた。

少し落ち着いて、距離を置いて、ゆっくり捉えなおしてみたい舞台。もう一度チャンスがあれば、観たいかもしれない。ただ、この言いしれない「切なさ」と「共感」のような感覚は、舞台体験としては非常に強烈で、しばらく忘れられなさそうだ。

気になった役者さん。キリがなくなってしまいそうだけれど・・・。加藤睦望、しょうこのキャラクターが強烈で、美しい。終始見とれてしまった。去る時は、正にランウェイを歩いているように見えた。土下座のシーン好き。久保瑠衣香、冒頭のマネキンからの後半の変わりようが面白い。しょうこと二人のシーン、この二人は、こんな感じでどうやって店をやってきたのかなぁ・・・なんて想像を巡らしてしまう。越路隆之、感情を出さないけれどストイック、しょうこと対をなす部分と、奥さんとのやり取りがいいなぁ。

それと、前回の「サンカイ」に続いて、笠浦静花の前説・後説が、あまりにも謙虚過ぎて面白い。2度の面白い作品に出会えて、もう既に彼女の作品のファンだけれど、あの前説の若干計算もしている不器用さが、妙に「しょうこ」とダブって見えてしまった。考え過ぎだろうか。

珍しくツイート貼っておく。しょうことマフィンのビジュアルは、後々思い出したいから。

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チラシの裏

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舞台