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【観劇レポート】NICE STALKER「暴力先輩」

#芝居,#NICE STALKER

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

|団体名|NICE STALKER|

2020年代の多様性と自由について考える異色女子正義譚
暴力先輩
脚本イトウシンタロウ
演出イトウシンタロウ

|日時場所|2019/09/11(水)~2019/09/16(月)
ザ・スズナリ(東京都)|

劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

NICE STALKER:ナイスストーカーとは?
作家イトウシンタロウを主宰とする「個性的な女子」をフィーチャーした作品制作を行う創作団体です。
最新のWEBやIT、プログラミング技術を駆使し、デジタル・ネイティブ世代の肌感覚に沿った「オンラインの身体」の実感を舞台上に再現しています。
イトウの個人企画を経て2014年頃より正式に団体名を「NICE STALKER」として活動しています。

[http://nice-stalker.com/:title]

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

「先輩、それ、もう犯罪に片足突っ込んじゃってますよ」「馬鹿野郎、両足だぁ」正義で目の曇った先輩は、なんだってできる。落ち度のある相手には何をやってもいい!それが21世紀ルール。炎上必至…先輩と暴力と現代社会、あと、ときどきわたしのお話。
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多様性の時代…?

来年はオリンピックイヤー。
世界の様々な文化圏から外国人がいっぱいやってきます。
インバウンド、ポップカルチャー、クールジャパン!
・・・お祭り気分で迎える2020年代は、「多様性」の時代になるそうです。

ですが、「みんな違ってみんな良い」と言う人たちが、
他人の「不適切な発言」を執拗に攻撃する光景は珍しくありません。
LGBT、男女平等、移民問題、・・・配慮の必要な「多様性」は日々増え続けています。「前科」や「前歴」すら個性と呼ぶ人もいます。

この正論渦巻く令和の日本で、
絶対にわかりあえない者同士「汝の隣人を愛する」にはどうしたら良いのか。
「共感」でも「理解」でもなく、敢えて今、
「暴力」先輩に聞いてみたいと思いました。

NICE STALKER 主宰
作・演出/イトウシンタロウ

観劇のきっかけ

劇評を参考にしている方が、この芝居を絶賛されていたのが、観劇のきっかけです。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

|観劇した日時|2019年9月13日
19時00分〜|

価格3000円 全席指定
(プレイガイド発券)
上演時間135分(途中休憩なし)

|個人的な満足度
[https://stage.corich.jp/user/206853/done_watch:title=CoRichに投稿]|★★★★★
(5/5点満点)|

客席の様子

劇団が『「個性的な女子」をフィーチャーした作品』を謳っているだけあり、男性8割、女性2割くらい。男性はアラフォー・アラフィフが多く、女性は若い方が多かったように思います。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観劇できる舞台です。

観た直後のtweet

icon

てっくぱぱ

NICE STALKER「暴力先輩」135分休無。
美術おかあさんといっしょ風、軽い音楽ヘビロテだし、若い子が歌って踊っての軽い話かなと舐めてたけど。
こんな深い話をこの調子でやるのね。すごいな、すごいな。サンデル先生の授業とか、今年の東大入学式の祝辞とか、思い出す。笑えないよ!涙!超オススメ!


ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
マクドナルドで、女友達に包丁を突き出した「先輩」。突然の事態に、周りの客は驚くが、そこに、マックの店員の姿をした、都市伝説的アイドル「みしゃむーそ」がやってきた。みしゃむーそが語る4つの「ストーリーパート」の教訓劇的なお話と、「先輩」の今と回想シーンの「スタジオパート」を行ったり来たりしながら進むお話。7つの大罪と、シェークスピアの台詞や、「夏の夜の夢」を下敷きにしつつ、「先輩」はどうしたらよかったのか、を考えるお話。

劇評を参考にさせていただいている方が絶賛していたので、前情報をあまり入れずに、プレイガイドでチケットを買った。劇場に入ってみたら、ビックリ。舞台美術は「おかあさんといっしょ」他、NHK教育テレビの子供向け番組みたい。物販コーナーや開演待ちの劇場内は、アイドルっぽい女性の歌声がヘビロテ。あれ、間違ったところに来ちゃったかな・・・というのが、正直な感想だったけれど。・・・完全に裏切られた。舞台全体を貫く話は、非常に深かった。

女性を中心に進む劇中劇。各エピソードで語られる「困った人」「どうしたらいいのか迷った人」が、アイドル「みしゃーむそ」を呼ぶと、変な恰好で現れる彼女。それぞれが「困っている」という状況が、あまりにも「哲学的」な悩みだし、みしゃむーその答えも、その問題に対して誠実に答えている。・・・こんな書き方すると、めちゃくちゃ真面目な演劇に思われるかもだが、展開はあくまでも童話的。NHKの子供向け番組をしっかり構成したようなイメージ。

例えば1話目は、小学生の話。女の子なのに自分の事を「僕」と呼ぶ主人公。友達の学習障害に気付いてしまった「僕」。勉強を教えてあげると気が付く、彼女の根深い問題。助けてあげたいけれど、学習障害のその子曰く「他人が他人を助けるなんて、出来ないって、お母さんが言ってた」と言い。そもそも「助ける」という事は、どういうことなのか。相手に対しての迷惑や、優しさの押し売りなのか、とか。そんな事を考え、結局、「僕」は友達に、一緒になろう(結婚しよう)、と申し出る(小学生なのに)。家族になれば、他人ではないと考えたのだろう。そこまでのお話。

2話目は、「可愛いという理由で優遇されてきた私」。3話目は、「貧乏という理由で冷遇されそうな私」。4話目は少し毛色が違ったが、「誰も助けになんか来てくれなかった私」。

各劇中劇を締めくくる、東京オリンピック2020の応援歌「パプリカ」を聞きながら、子供向け番組のようだけれど、何て深いことを、サラッと言うのだろう、と感じた。助けるとは何なのか。他人とは何なのか。そんな事を考えるとグルグル回って、まるで少し前に流行った、ハーバード白熱教室のマイケル・サンデルの授業や、2019年の東大の入学式祝辞を思い出したりした。また、最近観た芝居で言うと、MCR「死んだら流石に愛しく思え」、iaku「逢いにいくの、雨だけど」、埋れ木「降っただけで雨」、Mrs.fictions「月がとっても睨むから」なんかも思い出させた。
[https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html:title]
[https://www.nanka-ku-kai.com/entry/2019/05/10/56/:title=MCR「死んだら流石に愛しく思え」]
[https://www.nanka-ku-kai.com/entry/2018/12/01/154/:title=iaku「逢いにいくの、雨だけど」]
[https://www.nanka-ku-kai.com/entry/2019/03/22/78/:title=埋れ木 「降っただけで雨」]
[https://www.nanka-ku-kai.com/entry/2019/08/06/1024/:title=Mrs.fictions「月がとっても睨むから」]

要は、目新しいテーマではなかった。でも、こんな切り口で提示されたこともなかった。パプリカの曲に乗せながらたどり着いた場所は、とても優しい場所だった。少し暑さは和らいだ日だったけれど、正に、夏の夜の夢のように、見せてもらった一夜だった。

・・・とここまで書いて、当日パンフレットを読んだら、マイケル・サンデルの本が引用文献として提示されていた・・・。・・・引用に気が付かないとは、不覚。

気になった役者さん。ダメだ。書き出したら終わらなそう。記録のために、名前だけ。
帯金ゆかり、山本光、東京ドム子、桑田佳澄、カクイ、山本光、藤尾勘太郎、そして、みしゃむーそ、印象深かったです。

続けて観てみたい劇団に、一つ追加。

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