<観劇レポート>演劇集団TEAM ZEROプロデュース「ファントム・ペイン」

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名 演劇集団TEAM ZERO
演劇集団TEAM ZEROプロデュース公演 #05
ファントム・ペイン
脚本 鴻上尚史
演出 阿久津紘平
キャスト Bチーム
日時場所 2019/07/21(日)~2019/07/28(日)
池袋GEKIBA(東京都)



劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

なぜ俳優やスタッフが踏み台のような扱いを受けているんだ?
私たちはこんな疑問からスタートしました。

小劇場界には数々の問題があります。
その問題ゆえに劇団が立ち行かなくなり、所属している俳優が路頭に迷ってしまうことがあります。
小劇場の世界は、ほとんどの劇団が赤字経営だということをご存知でしょうか。
多数の動員を見込める劇団ですら金銭的に逼迫していることがほとんどです。
ギャランディの遅延/未払い、チケットノルマを背負っていたりします。
これらが当たり前にまかり通っていることが不思議でなりませんでした。

5歳で初舞台を経験し、以後80歳近くまで活躍した喜劇人がいます。
その喜劇人の名は、チャールズ・チャップリンといいます。彼はこんな言葉を残しています。

Imagination means nothing without doing.
(行動を伴わない想像力は、何の意味も持たない)

夢を語るのは誰でもできます。
しかし行動を伴わない夢物語で終わってしまっていることが殆どです。
その中途半端な夢に俳優やスタッフが巻き込まれ、消費されていきます。
俳優やスタッフは、必ずしも劇団や演出家の表現の一部や成り上がりの手段ではないのです。

多くの機会に触れることで経験を積み、成長していくものです。そして競うべきです。
それがひいては演劇の質を高めることになり、観客の皆さんに喜んでもらえることにも繋がります。
私たちは作品毎に内容に合った俳優に声をかけ、俳優は演出家の提案を聴き判断します。
そして互いに意見をぶつけ合いながらも最高の作品を作るわけです。
役者も演出家もスタッフも常に対等な関係であるべきだという基本的な考えがあります。

メンツを優先し、採算度外視の公演を繰り返して立ち行かなくなる話はよくあるものでした。
赤字前提の公演は、単なる浪費や趣味の世界でしかありません。
我々は商業ベースが成立する領域を目指します。
採算を度外視するような真似はしません。無理のない計算された劇団運営を徹底します。

・特定の劇団に縛られない組織。
・常に対等な関係。
・俳優に対するより多くの経験の提供。
・共有資産の獲得と管理。

TEAM ZEROにはこれらの考えを理解し、賛同し、実行する強い意志を持った人たちが集っています。
まだ繋がっていない方でも、賛同してくれる方とはジャンル問わず手を組んで、どんどん新しい挑戦をしていきたいと思っております。
自ら動く強い意志を持った方の参加を、心からお待ちしています。

演劇集団TEAM ZERO | Imagination means nothing without doing.

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

平行世界=パラレルワールド。
2574日前…
「大恵」という平行世界から「平成」という世界へ飛ばされてきた7人。
ショックで記憶を失ってしまった者。
闘争を捨てこちらの生活に適応した者。
それぞれの生き方で過ごしていた。

そして「平成」から「令和」へ移り行こうとしていたある日、
ネット上に投稿された言葉…

「スナフキンの手紙。あります」

スナフキンの手紙とは、向こうの世界での「希望」
それがこの世界にもあるのだろうか?
7人の忘れようとしていた記憶が
再び戦いへ突き動かしていく。

この世界のスナフキンの手紙とは?
ついにその謎が解かれる。

あなたが強く思ったとき、世界は分裂する。―― 鴻上尚史

観劇のきっかけ

「ファントム・ペイン」は、第三舞台の初演(って劇団は、一度しか上演していないけれど)を観ていますので、チラシを観て「この作品を第三舞台以外がやって、成功するのか?」と、とても気になっていました。そんな中、関係者の方からTwitter DMでお誘いを頂きましたので思い切って観に行くことにしました。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時 2019年7月26日19時15分〜
価格 3500円 全席自由(事前にネット予約)
上演時間 120分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★★☆(4/5点満点)

客席の様子

男性客が多く7:3くらい。押しの女優さん目当ての観劇も多かったのかもしれません。ただ、舞台としては変なノリを煽るようなこともなく、誰でも違和感なく客席に座れると思います。

観劇初心者の方へ

観劇初心者の方でも、安心して楽しめる舞台ですが、この作品は「スナフキンの手紙」という作品の続編としての性質を持ちます。単独の作品でも楽しめるようになっていますが、細かい人間関係は、前作を観た方が楽しめると思います。

観た直後のtweet




ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは、案内の通り。鴻上尚史率いる劇団第三舞台が、2001年に劇団を10年間封印する時に上演した演目。個人的には、大楽を福岡までわざわざ観に行っているので、思い入れの深すぎる作品。だからこその不安の方が強い中での観劇。

この作品は、ある時代の真っただ中で、劇団が(要は第三舞台が)公演することに意味のある作品であるという思いが、私にはある。また、95年に岸田國士戯曲賞を受賞した「スナフキンの手紙」の続編に当たることもあり、単独で公演するには意味の飛躍が多すぎる。あと、鴻上尚史の作品の中でも、絶頂期の作品に比べるとどこか物足りなさを感じる時期の作品だし・・・。第三舞台じゃない劇団が、割とロングランで上演するのは無謀なんじゃないか・・・という思いが強く・・・チラシ見て、気になるけれど避けていた。・・・けれど、役者さんからtwitter DMで熱烈な宣伝を受けて、観劇を決めた。正直なところ、イメージが壊されるのが怖くて、恐る恐る観た感じ。・・・でも、杞憂だった。初演の記憶など、殆ど思い出すことなく、自然と新たな物語として引き込まれていった。
(ちなみに、TEAM ZEROは、2月に「スナフキンの手紙」も上演しているのを観劇直前に知った。)

改めて、この物語を観て思う。野暮なことを言えば、人間が「物語」を求めるのは、「もし、あの時ああしていたら・・・」の世界を、どこか垣間見て見てみたいからだ。パラレルワールドとは、結局は人生の選択の「取らなかった方」の選択肢の、疑似体験的。要は、想像力が産み出す世界。この物語は、その想像力の世界を、若干大げさに、物語にしたもののように思う。それはどこか「フィクション」の一部、要はチープなトリックとして、展開されていく。しかしその「フィクション」の前に現れる人々の感情や態度は、どれも真実。物語を、額面通りに受け止めてはいけない。人間が持っている「想像力」という業を浮き彫りにするために、トリックを使っていに過ぎない。

冒頭の、氷川サキの独白が効果的だ。ものすごく、ゆっくり、ゆっくり・・・あえて比べると、第三舞台の長野里実とくらべて、倍くらいの時間をかけて、ゆっくりゆっくり、独白する。人間の「想像力」の業を具現化した世界に、観客を催眠術で眠りの世界に落していくような感覚。この独白が終わる頃、第三舞台版と比較なんてもう頭の中にはなかった。そして、ラストの独白は、催眠術から覚ます感覚。物語って何だろう、っていう事をひたすら考える。想像する。18年経って、深く理解できる部分があるなぁ、と思った。

テンポのいい音楽に乗せて芝居をスピーディに進行させるのが、第三舞台の特徴だけれど(80~2000年代初は、第三舞台に類似の作風が乱立したけれど)、TEAM ZERO版は、ビートのある曲は使うもセリフをテンポでオーバーラップさせるような事は全くなく、演出に第三舞台の影を感じる事はなかった。裏を返せば、第三舞台向けに書かれている脚本を、正直にストレートプレイにしているようにも見える。例えるなら、ミュージカルを、歌を歌わずに、歌詞を台詞として読むように改変している・・・ようなものと言ってもいいかもしれない。ストレートに演じてしまうと通常はどこか、退屈さが目立ってしまうようなこともある。(実際、他劇団の「天使は瞳を閉じて」などは、テンポが無くて上演時間が無駄に長い、退屈なだけの作品を何度か見たことがある。)今回の公演、そういった類の退屈さは、全くなかった。物語の内容を際立たせる細かい演出と、役者さんの個性の活かし方が成功しているのだろうと思う。

特に一つのシーンで、ストーリーのメインにはなっていない役者さん達の感情が、途切れることなく続いているなぁ、と思って観ていた。アンサンブル、と言ってしまえばそれまでだけれども、舞台の脇まで流れが止まらない、というのはなかなか難しい。物語をよくよく知っている分、「このシーンでは、(ストーリーには関係ないけれど)○○役は、こんな事思うだろうなぁ」などという事を、ふと考えてしまい、そんな思いを基に、セリフを喋っている役者さんから視線を外に逸らしても、そこに展開されているシーンに嘘が少ないように感じた。

DVDも出ている作品だし、全く一から世界を構築する、というのはなかなか難しいと思うのだが(私が、初演のファンだからそう感じるのかもしれないけれど)、そういった「影」を全く引きずっていなかったのがよかった。

・・・と、書いていくとどうしても、第三舞台と比較する言葉が出てきてしまうけれど。誰もが想像する、あるパラレルワールド、想像力の物語を、楽しませてもらったし、自分としては、若干のノスタルジーを感じながら、観る事が出来た舞台だった。

観劇したのはダブルキャストのBチーム。アンサンブルとしてはとても整っていたように思うけれども、気になった役者さん。平井亜矢子、冒頭とラストの独白は見事。木許舞由、お話の脇にいる時の演技がこまやか。「世界はここにしかないの!」好き。太田勝、あの後藤田像、力の抜けた感じがすごく上手いなぁ。「子供を風呂に入れないと」好き。齊藤みのり、天下一品のシーンはどうなるかなぁ、と思ってたけれど、豹変したな。でも顔真っ赤。その後の深町の「あんまり自分の子と茶化すの上手くないですね」ってセリフが、基の意味とは少しズレても成立しているのが面白い。斉藤未来、残留思念を読むあのシーンは、可愛くて好きだった。

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