<観劇レポート>劇団5454「カタロゴス-「青」についての短編集-」

#芝居,#劇団5454

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名劇団5454
カタロゴス-「青」についての短編集-
脚本春陽漁介
演出春陽漁介
日時場所2019/12/13(金)~2019/12/22(日)
赤坂RED/THEATER(東京都)

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

「5454」と書いて「ランドリー」
脚本家、演出家の春陽漁介を主宰として、2012年4月旗揚げ。
『青空の下になびいている真っ白いTシャツのように、日々当たり前に見えている風景をリフレッシュさせたい。日常の汚れた気分を“ゴシゴシ(5454)と洗い流したい”』というのが劇団名の由来。
作風は、人間の心理的な部分から作られるヒューマンコメディー。
俳優部は、自然な会話劇を得意としながらも、日常のどこかで見たことがあるような人間をデフォルメさせたキャラ作りに定評がある。劇団外でも幅広く活躍中。
全ての作品にオリジナル楽曲を起用をし、台詞とメロディーが融合した、ポエトリーリーディングが作品の価値を高めている。また、舞台美術は、抽象的でシンプルな作品が多く、照明の演出により映画さながらの展開スピードが強み。
第二回公演「ト音」は、劇作家協会の第19回新人戯曲賞の最終選考に選ばれ、同作は高校演劇を中心に、各地で上演されて続けている。
2015年より大阪公演をスタートさせ、総動員1500名を突破。
2017年より大分公演をスタートさせ、総動員2000名を突破。
現在は、俳優部9名、脚本演出1名の計10名が所属。

劇団5454|web site

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

3年半ぶりの短編集。発展途上の脳内に溢れるのは「青」
劇団5454は、不定期に「カタロゴス」というタイトルで短編集を上演しています。今作は「青」についての短編集。
僕は、学生を終えて10年ほどが経つのですが、未だに毎日が輝きに満ちていたあの頃を反芻することがあります。そしてその度に感じます。経験不足の未熟者は、自分の感覚を信じ続けなければならないと。
そりゃあ同世代の活躍を羨ましく思うことは多々あります。でも、彼らが出した結果だって、それぞれ地道に自分と向き合ってきた成果なのだと思います。
今まで自分に与えられた言葉全てが師です。様々な師に育まれた自分が、師を超える存在になれたらと切に願います。
今作も、エンタメでありながら、ありふれた日常に驚きをお届けします。
ぜひご期待ください。あなたの心に刻みます。

観劇のきっかけ

前回観た芝居が楽しかったのと、twitterでの評判が良いのと、好きな役者さんが出演されているからです。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

観劇日時2019年12月17日
13時00分〜
上演時間125分(途中休憩なし)
価格4500円 前売り・全席指定

チケット購入方法

チケットぴあのサイトで予約し・クレジットカードで決済しました。
Clockというサービスで、セブンイレブン受取を選択しました。セブンイレブンで事前にチケットを受け取りました。

客層・客席の様子

男女比は半々くらい。平日マチネにも関わらず、若い人が目立った印象でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・笑える
・短編
・青春
・思い出

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
3本の短編と、それをつなぐ1本のストーリー。

■ロンディ
別れ話を持ちかけて甘えようとしたところ、逆に自分のことしか考えていない、と別れを突きつけられた一美。友人にクダを巻いていたら、親戚つながりのひょんなキッカケから、韓国からの留学生が下宿するとことになって。迎えてみたら、超優しいイケメン、ヒョンジュ。次第に恋していくも、アラサー女子、いろいろ現実的なことにも思い悩みつつ。一美が、ヒョンジュに恋をしていく物語。

なんて事はない恋の話なんだけれど。なんだか女子2人の掛け合いが、テンポよくてしっかりと笑いも取っていて面白いのと。恋をした時の、ドキドキと切なさと、怖さと、嬉しさの配分が、とても生々しい感じで。見ていてキュンとした作品。

■レストホーム
引きこもりの兄、亮太に、結婚の報告に来た妹、翔子。両親は、なにかのキッカケで亡くなり、2人だけが残された様子の、兄妹。挨拶に来た結婚相手となる賢人(けんと)も、引きこもりの兄に気を使っていて、良さそうな人に見える。しかし、徐々にねじれてくる会話。その結婚相手は、まるで兄妹の争いに火を注ぐかのように、変な事を言い出して・・・。結局は、両親の残した家の権利書を奪われてしまう。

結婚相手があまりに胡散臭い奴なので、話の結末はなんとなく、予想通りだったけれど。3人の掛け合いと、徐々に「あーやっぱそうなるかぁ」的な展開に落ち込んでいくのが、面白いのに、悲しくて。引きこもりの兄さんが、真面目なんだか面白い奴なんだか、だんだんわからなくなってくるのがツボ。

■ビギナー♀
大学の女子限定のチャラいバドミントンサークルに所属する、就活を目前にしたはなと、奈津子。このサークルは、バドミントンやるよりも、お喋りしている方が時間が長い。部員は5人。就活を前に、突然「バドミントンの大会に出たい」と言い出す、はな。チャラいサークルなので、相談してみてもほぼ全員から総スカン。大会に出るのは5人必要。泣いているところを偶然、友達のバドミントン部員に見られて、大会に出るまでコーチをしてもらうことに。そこから、大会に出るまでのお話。

実は、変な感覚を覚えた。はなが突然言い出す「大会出たい!」というワガママに、全く感情移入できなかった。「何突然言ってんだオメエ」と心の中でツッコミを入れたのだけれど。同時に、大学生くらいだと、こういう突然の、文脈的な意味不明な願望ってあるよな、という想いも、頭の片隅にどこかあり・・・理解はするんだけれど、感情的には付いていかない。舞台前半の動機は、そんな感覚だったのだけれど。結局、大会出場に向けて一直線に進様がテンポもよくて面白くて。シャトルを打ち返すかの如く、あれよあれよという間に、話が進んで。気が付くと「あー、自分の感覚って、どこかものすごく大人になってしまっているんだなぁ・・・」という、自分自身のモノの見方を客観的に見せられた感覚になった。そうだなぁ、懐かしいなぁ、無謀だったよなぁ・・・特に就活したくない時の暇つぶしは・・・と、ふと、生々しく昔の自分を思い出した。

■コールドベイビーズ
近未来の人類。人口不足に陥って、人工子宮と冷凍精子と卵子で子供を作る実験をしているようで。30人のヒトが誕生した。ただ、上手く成長しなくて、20歳を迎えたのが一人、亜青(アセイ)だけ。少し前に心不全で亡くなった、紫亜(シア)は、誰かが書いた日記を毎日読みふけっていた。亜青は、紫亜への興味から、その日記を読み始める。・・・それが、上の3作の短編・・・というつながりのお話。

3編の結びで、実は30人の子供たちは、父母がいない中で、どのような教育を受けさせたらよいのか悩んだのか、それぞれ違う方法で教育されていたことが分かる。そして、最後まで生き残った亜青は、感情的な教育を一切受けず、ただ勉学だけを学ばせていたことも。ラスト。自分が理解できない「感情の機微」と、紫亜に対する想いから、震えるようにしている亜青。・・・どこか不思議なお話であるものの、この設定を加える事で、前の3編の「割とありふれた」物語が、意味を持ってきたように感じる。

どこか、懐かしいような、ほろ苦いような、そんな感覚を呼び覚ます3編だけれども、多分大切な感情の1つで。それをスポイルされて育った子供が、30人の中で最後まで生き残るのは皮肉だけれど、やはり何処か哀れに見える。人間は物語を紡ぐからこそ、人間であって。様々な感情を受け止めるからこそ人間であって。そんな思いを、ラストの亜青の震えに感じた。

・・・ここまで読んで、当日パンフを参照してみると。「青」についての短編、という事だけれど、これは「青春」の青なんだな。何処かほろ苦い、懐かしい、大人の自分は「オイ」とツッコミたくなる・・・そんな感覚を、「コールドベイビーズ」を挟みこむことでものすごく鮮やかに、舞台上に立体化させた舞台だった。

加えて。舞台美術、照明がどちらも素晴らしく。かつ、物語は感情を描く芝居なのに、全編笑いのツボは心得ている芝居なので、笑いが絶えず。でも、全体として洗練されている、エンターテインメントの舞台になっている。バランスがとてもよい、舞台作品だった。

気になった役者さん。榊木並、なんか恋しているのが本当に伝わってきて可愛かったなぁ。西野優希、友人としての受け方が面白く。テジュ、カッコいいし、いい人!。村尾俊明、笑いの取り方がすごく好きだった。ロンディの、一瞬でてくるおばさんと、ビギーナ♀でのバドミントンのシーンもかなりのインパクト。お兄さんは、雀組ホエールズで観た作品「ひまわりの見た夢」のお兄さん役みたいな感じで、ちょっとかぶってて笑ってしまった。大迫綾乃、一人突っ走って駄々こねているの、感情移入できないからこそ印象に残った。歌ってるの楽しそう。森島縁、地味な役回りだけれど彼女が舞台を回している感じが好き。河西美季、全体的に破壊力が抜群で印象に残った。



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