<初日レポ>古城十忍の新作、ワンツーワークス「善悪の彼岸」は、死刑制度に望むものを問う挑戦的な作品!

(ネタバレ、多少あり) 死刑の目的とは何なのかを、日本人に問う作品。あっという間の2時間でした。

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公演データ

劇団ワンツーワークス #26 『善悪の彼岸』
[作・演出]古城十忍
2018年11月22日(木)~ 12月2日(日)

観劇データ

場所 中野ザ・ポケット
観劇日時 2018年11月22日 19時開演
料金 4000円 初日割引 全席指定(全席均一料金)
上演時間 2時間10分 休憩なし

20年ぶりの古城作品

20年程前に、古城十忍「赤のソリスト」という舞台を、地元の劇団が演じていたのを観たことがある。それ以来、気になってはいたものの、古城十忍本人の作品に出会うことがなかった。宣伝のチラシをパラパラ観ていたら、たまたま見つけたこの作品。木曜日が初日という事もあり。初日公演で観てきた。

客席は、明らかにシニアな層が多い・・・。20年来の古城ファンが初日に集まったからだろうかと想像してしまった。

ここからは、多少ネタバレ、ありです。

ストーリー

新人の死刑執行担当の刑務官と、金欲しさに2人を惨殺したのちに、哲学者との手紙のやり取りを通して改心と悟りの境地に達し、穏やかに死刑執行を待つ事になる死刑囚との会話として語られる。

刑務官は、自分の職務として「どのように死刑を執行するのがもっともよい執行なのか」を悩む。はじめは執行ボタンを押すことさえためらう、執行官。自らの職務を忠実に、意味のあるものとして考えるなら・・・死を与えることが自らの大切な使命であるならば、「理想の死刑執行」というものがあるのではないか、と思い悩む。
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一方、死刑囚は、独房で一人になり、家族や兄弟に見放されて初めて、自分がどれほど取り返しの取り返しのつかないことをしたかを悟り、自分が「よく生きる」ことでしか、償いが出来ないという境地に達する。遺族に謝罪の手紙も書くこともなく、淡々と日々を過ごす。哲学者との手紙のやり取りを通して、その確信を深め、穏やかになっていく。

この死刑囚の、死刑執行までの物語。ストーリだけまとめてしまうと、こんな感じです。

死刑という重い命題


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この芝居は、登場人物も多く、テーマが無数にちりばめられている。ただ、やはりメインのテーマは、刑務官を通してみた「日本国民が死刑に望んでいる事は、本当に行われているのか?」という命題だと思う。

刑務官は、判決を待つ死刑囚に「そこまで改心して、平静な心を取り戻し、"真人間"になったのなら、遺族に謝罪の手紙を書け!」と強く迫る。しかし、「それに何の意味があるのか?」と問い返す死刑囚。むしろ、執行官の方が必至だ。まるで「罪を後悔して、命乞いして、泣き叫ぶ」ことが、死刑囚の仕事であり、存在意義であるかのように。

しかし、良き人間として悟りきってしまった死刑囚は、そんなことに意味がないことに気が付く。そして、結局、最後まで平静な心のまま死んでいく。舞台は、死刑が執行され、床の板が落ち、ロープ枷垂れ下がるところで、カットアウトの幕切れとなる。穴に落ちた死刑囚を、恐る恐る、どこか興味本位の目線で覗き込む、執行官の姿を残して。

「正義の天秤」の片方に、「2人を惨殺した罪」をのせたとき、もう片方が「死刑」なのかどうかは、実は誰にも分からない。そもそも、誰かを殺めてしまったという事に対して釣り合いが取れるものなど存在しない。「死刑」というおもりを乗せてみても、釣り合うはずがないのだ。「天秤の禅問答」を用いて死刑の執行直前に、看守の部長が言っている事がこの芝居のテーマ、メッセージを表している。

ともすると「死刑が存続すことの是非」という議論に行きがちだが、是非ではなく、純粋に「何のために必要?」という素朴な疑問から、死刑の存在意義が語られているのは、脱帽としか言いようがない。

大音量音楽と照明を用いた場面転換

殆どが会話劇で進行するこの舞台。場面転換は、短い音楽とともに、逆光の照明の中で役者たちが素早く転換する。これは、古城がいつも使う演出手法だろうか。後半、場面展開が多くなるとどうしても退屈を隠せなくなってしまったが、効果的に機能していたように思う。また、冒頭、刑務官たちが白い手袋を使って群舞するのは、短時間ではあったが息を飲むカッコよさがあった。
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役者たち

主役の刑務官を演じる竪山隼太は、若い正義感のある刑務官が持つ熱っぽい演技・・・つまりは日本の常識的な感覚、を見事に演じていた。
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死刑囚の多田直人は、惨殺に至る過程と、改心の後の演技の対比が素晴らしかった。(なぜかパンフの写真は看守だが。)
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死刑囚と手紙のやり取りをしていた哲学者を演じていた関谷美香子は、サバサバしているが死刑囚と理解しあえる人、という様がよく出ていた。ガンに侵されているというエピソードが、死刑囚の悟りに対する現実味を与えていた。(こちらも、なぜか看守)
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公演は12月2日まで

公演は12月2日まで。ぜひ劇場に足を運んでほしい。

舞台