【観劇レポート】Lunt-Fontanne Theatre「Death Becomes Her」

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【ネタバレ分離】Lunt-Fontanne Theatre「Death Becomes Her」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名Lunt-Fontanne Theatre
Death Becomes Her
脚本Marco Pennette
演出Christopher Gattelli
音楽Julia Mattison & Noel Carey
場所Lunt-Fontanne Theatre(New York)

公演URL
TDF公演ページ

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2024年02月16日(日)
19:30~
価格$89.5

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

整形外科医の夫を持つヘレンは地味でちょっと根暗。友達である女優のマデリンの舞台後、婚約者で整形外科医のアーネストと共に楽屋を訪ねる。マデリンはヘレンの婚約者を奪って結婚。ヘレンは姿を消す。10年後、マデリンとアーネストの結婚は上手く行っていない。そこに現れたヘレンはすっかり垢ぬけて歳に釣り合わない美貌に。一方マデリンは老いが災いして女優としても落ち目で悩む。そんな時に謎の男に声を掛けられ、ビオラ・バン・ホーンの整形外科へ。永遠の命を手にできる薬を手にする。一方、ヘレンはアーネストに言い寄って、マデリンを殺すように企んでいる。計画は上手く行きマデリンは階段から転げ落ちるが…永遠の命を手にしたマデリンは、首がひん曲がっても死なない。怒ったマデリンは、ヘレンに散弾銃をぶっ放すが…じつはヘレンもビオラ・バン・ホーンの薬を飲んで若返っていて、体に穴が開いても死なない。病院に連れていかれるマデリン。でも脈が無いので死人扱いで遺体安置所に入れられて。これから長い間生きていくには、体が壊れた時に治す整形外科医が必要だという事を悟るマデリンとヘレン。アーネストにも薬を飲むように迫る2人。でも拒否したアーネストは整形外科医として天寿を全う。残されたのは、死のうにも死ねない、体のあちこちが痛んでる、マデリンとヘレン…、ちょっと原作映画と話が混じっているかもしれないが、大まかにこんなお話。

シカゴでのトライアルを経て、2024年の11月にBroadway開演の2025年TONY賞eligibleな作品。1992年、ロバート・ゼメキス監督の映画「永遠に美しく…」のミュージカル化。映画未見だったので今回NYに行く前に映画を予習した。1992年当時、首が曲がったり体に穴が開いているCMが結構センセーショナルで気になっていた作品。30年して初めて見た。タイトルの"Death Becomes Her"は、「死が彼女に訪れる」と「死が彼女にふさわしい」のダブルミーニングかな。

ストーリーの内容からも分かる通り、若干ホラー系要素があるものの、基本はおバカコメディ。ミュージカルも同様で、観客席の湧き方が凄い。客席全体が呼吸しながらゲラゲラ笑ってる感覚。あんなに一体感のある客席は、観劇人生それなりに長い私でも、初めての経験かもしれない。マデリン役のMegan Hiltyが何かしゃべる度に笑いが起きる(さすがに全部は英語を聴き取れない)。盛り上がりに盛り上がったところで、一幕最後、マデリンが階段から落ちるシーン。ワイヤーアクションからの、スタントと入れ替わっての、有名な首曲がりシーン再現。客席は手を叩いてヒューヒュー・ゲラゲラ盛り上がる。続いてのヘレンを散弾銃でぶっ放すシーンは、一旦袖に追い詰めたかと思えば、後方のスクリーンにブッ飛ぶヘレンの影が舞台を横切る(背景画が妙に明るいな、とは思っていたけれど、まさか背景、全面スクリーン使っていたのか…。要は飛んでる映像なんだけれど、あまりの唐突さに客席が笑ながら総拍手)。戻ってきたヘレンは体に穴が開いている。

映画版は1992年製作。当時はSFX技術的にも凄いと言われたらしいが、2025年の今見るとやっぱりどこか「ちゃちい」部分は否めない。ミュージカル版は、その「ちょっと懐かしの安っぽくみえるSFXの映画」を、そのまま自虐的に、ちゃちい部分も含めて再現した感覚。古い仕掛けも、スタントと変わるミエミエの演出も、とにかく馬鹿を真面目にやっているのが最高に面白い。

私が観た回が、たまたまそうだったのかも知れないが…、三階席の客は結構観劇慣れしていない人が多かった。前日テレビを見ていたら、このミュージカルの出演者が、ニュース番組みたいなのに出ていて宣伝をしていたが、難しさが一切ない作品というのもあり、普段は劇場に来ない層が客席を埋めているんじゃないかなぁ…と考える。それにしても、盛り上がりが凄い客席だった。

加えて、ビオラ・バン・ホーンの神秘的な雰囲気をはじめ、舞台セットがとにかく豪華で、これでもかこれでもか、ときらびやかに飾ってくる。アンサンブルの衣装がエロ神秘的で何だか目線に困る場面も多々あったが、豪華絢爛で最高のエンターテイメントに仕上がっているのは間違いない。

映画のラストシーン、体バラバラになってもまだ生きている2人、っていうのまでは、さすがに舞台では再現できていなくて、少しストーリーも変わっていたのが残念だったけれど、…まあそれでも、そこまでのおバカの再現度が凄いので、仕方ないと諦められる。

日本に持ってきたらどうなるだろうとふと考える。「ブラックな要素」で「笑う」だけのミュージカル。楽しめるファンって割と少ない気がするので、日本市場での上演の難易度が高いかもしれないけれど。普段芝居を観ない層は、難しい事考える必要もなく間違いなく楽しめるので、ちょっと期待したい作品。

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