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【観劇レポート】ドアとドアノブとドアノブカヴァー「暗いのでブロッコリーなのかカリフラワーなのか分からない」

#芝居,#ドアとドアノブとドアノブカヴァー

【ネタバレ分離】 ドアとドアノブとドアノブカヴァー「暗いのでブロッコリーなのかカリフラワーなのか分からない」の観劇メモです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名ドアとドアノブとドアノブカヴァー
ドアとドアノブとドアノブカヴァー第8回公演
暗いのでブロッコリーなのかカリフラワーなのか分からない
脚本飯田恭大
演出飯田恭大
日時場所2025/08/01(金)~2025/08/03(日)
OFFOFFシアター(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

ドアとドアノブとドアノブカヴァーは上質のナンセンスコメディーを上演すべく結成された劇団です。
そのナンセンスな内容もさることながら、暑くも寒くもない、徹底した客席の温度管理に定評があります。
「素晴らしい温度管理と湿度管理! 私はしばし服を着ていたことを忘れていたくらいでした。」(21歳・大学生)
「私は直接空調の風が当たる席だったんですが、その風は当たるというよりは愛撫といった表現が的確に思われるほどの優しさだったのです。」(32歳・会社員) 
「暑くも寒くもないその劇場はまるで桃源郷のようでした。ただ劇が始まると『おなら』だの『うんこ』だの下品な内容が多かったため、桃源郷にいる心持ちには全くなれませんでした。」(45歳・自営業)
「私はとある広告代理店の本社に勤める会社員です。私の仕事は主に社内のの温度管理なんですが、生来温度管理が下手で、他の部署からクレームの毎日でした。『真冬なのに外の方が暖かいってどういうことだ、バカヤロー!」「なんで真夏に社内でダウンジャケット着なきゃいけねえんだ!」など、本気で胸倉をつかまれることもあり、私のロッカーには嫌がらせか、糞尿の類が入れてあることもしばしばでした。私は自分に自信がなくなり、なぜ私は会社に行かなければいけないのか分からなくなっていました。そんなときに友人から誘われて観に行ったのが、ドアとドアノブとドアノブカヴァーでした。劇場の温度管理はすばらしく、ああ温度管理とはこういうことなんだと私は悟りました。翌日から私は早速温度管理を徹底し、ほどよい温度の社内に他の社員たちからは次第に感謝の声が届くようになりました。「やればできるじゃないか、見直したよ!」「会社に来るのが楽しみになったよ。」「糞尿の類を入れてごめんね。」など、今では臭いこそ若干残ってはいるものの、ロッカーに糞尿の類を入れられることもなくなり、周りの人たちからは尊敬の眼差しで見られるようになりました。これもドアとドアノブとドアノブカヴァーのおかげです!」(28歳・会社員)

ドアとドアノブとドアノブカヴァー

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

タイトル通り、暗いのでブロッコリーなのかカリフラワーなのか分からくて、恐怖におののく人々を描いたナンセンスコメディです。恐怖におののきながらいつも使ってるヘアワックスとは違うヘアワックスを買ってみたり、恐怖におののきながら日帰りで尾瀬に行ったり、恐怖におののきながら普段は散らかしてるくせにやっぱりテスト前は気になっちゃうと部屋の掃除をしたり、恐怖におののきながら冷蔵庫の余りものを見て今晩の献立を考えつつも、結局恐怖におののきながら外食で済ませてしまう人々を描きます。恐怖におののきながら劇場に観に来て頂けると嬉しいです。出演者・スタッフ一同、恐怖におののきながらお待ちしております!

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2025年08月01日
19時30分〜
上演時間90分(途中休憩なし)
価格3000円 全席自由

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

ストーリーを読むと、暗闇でブロッコリーかカリフラワーかを見分ける話、とある。確かにそんな話もあったような気がするがそんな話は全くなかった気もする。ラストの方で、カリフラワーに緑色の照明があたってブロッコリーに見えた気もする。いや、気のせいな気もする。そもそも私はこの芝居を本当に観たのだろうか。内容を殆ど忘れている。映画「メメント」か。辛うじて覚えているのは幼稚園児が「♪右手はグーで、左手もグーで、おきゃんたま、おきゃんたま」と歌っている様子で、いやむしろ忘れてしまいたい。割とうら若い女優さんも「おきゃんたま」と言っていたので、どこか忘れたくない自分もいる。でもよく覚えていない。いや、記憶するのが馬鹿馬鹿しくて仕方ない。ごめんよく分からないナンセンスなコメディ。

劇団2度目。ナンセンスなコメディだが、客席が「ガハガハ」と笑う訳ではない。どこか「ヤヤ受け」なクスクス笑いと、微妙な空気の客席が90分続く。劇団ホームページの団体紹介を読むと、自分たちの劇団がいかに温度管理が徹底しているかが、客の声とともに書かれている。寒すぎもしない、暑すぎもしない、ちょうどよい温度に徹底管理。前作もそうだった。いつでも平常運転に馬鹿をやっている団体、という事だろう。

誤解しないように敢えて書いておくと、下ネタは変な方向に尖っているが全体的にはマイルドだ。「鶴の恩返し」の鶴が障子の向こうで機織機を折りながら、手を止めたと思えば屁をこく場面が何十回も続く。音がしなければ「すかしっぺ」だ(読めるので先に笑ってしまった)。要は小学生のような、尖ってマイルドな下ネタだ。

正直なところ役者の面々の演技がそれ程上手いという訳ではない。正確に言うと、役者ごとに演技力にかなりバラツキがありすぎる感触。演技が不安で突き抜けられず寒くなることがあるが、演技に安心して暑くなることもある。いいバランスで混ざっているのがこまめな温度管理の秘訣だろうか。ただ徹底しているのは、役者が羞恥を完全に切って馬鹿をやっている事。演技の上手い下手や成熟度を問わず、羞恥を切り切って馬鹿やっているのは素直に凄い。どこかとても懐かしい、小劇場の「雑味」みたいなものが詰まってる。「アングラ演劇」みたいないつの間にか高尚な言葉になってしまった猥雑さではなく、もっと純粋な、雑でゲスい雑さが詰まってる。

それ故、観劇後に爽快感とかそういった特段の満足度がある訳でもない。むしろ前述のストーリーの振り返りのように、終演後3時間で何を観たのか既に忘れている。観たかどうかさえ怪しい場所に連れていかれる。故に万人に勧められるものではない。観劇好きの玄人でも、かなり好き嫌いが別れるだろうけれど。ただ、どこか愛おしい、定期的に摂取したくなるような、そんな「雑味」のある作風を持つ劇団のようだ。

ふと、最近の似た作風の団体として「武蔵野ハンバーグ」を思いつく。ただ、この団体と比べると武蔵野ハンバーグは上品すぎる作風。