【観劇レポート】劇団さいおうば「はにわのにわはわにのにわ」
【ネタバレ分離】 劇団さいおうば「はにわのにわはわにのにわ」の観劇メモです。
もくじ
初回投稿:2025年09月20日 9時49分
最終更新:2025年09月20日 9時49分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 劇団さいおうば |
回 | 劇団さいおうば第十回公演 |
題 | はにわのにわはわにのにわ |
脚本 | 寺腰玄 |
演出 | 寺腰玄 |
日時場所 | 2025/09/19(金)~2025/09/21(日) インディペンデントシアターOji(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
やさしい劇で、
むずかしい話をしたい。劇団さいおうばは2023年3月、明治大学を母体として発足した劇団です。現在の劇団員は4名。「やさしい劇で、むずかしい話をしたい。」をテーマに、喜劇的な枠組みの中での社会問題の提起に取り組んでいます。劇団名は故事成語の「人間万事塞翁が馬」から取りました。「人生は喜劇か悲劇一辺倒ではなく、ふとしたきっかけでどちらにもなりうる。」私達はそんな表裏一体のどちらに転ぶかわからないような劇を作りたいと考えています。劇団のロゴである《蹄鉄》は馬の蹄に付ける金具であり、上部が開いている形状から幸せを受け止めるアイテムと言われています。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ここは令和の古墳跡地。
不真面目なバイトたちに業を煮やす教授・丹羽は、
1500年前の日本に思いを馳せる。__一方、その1500年前。
有力豪族である和珥氏の娘・ワネメは、ふとしたきっかけで古墳から転落。
落下死してしまう。しかし、彼女は死ぬに死ねずに目を覚ます。
そこは_古墳時代から百年後の飛鳥板蓋宮だった。
彼女は何度も死に、何度も生まれ変わって輪廻の謎を追う。古墳、飛鳥、平安、鎌倉、戦国、江戸、明治、昭和、平成、令和。
はてしない過去と未来を描く、劇団さいおうば最大規模の時代劇。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年09月19日 18時00分〜 |
上演時間 | 140分(途中休憩なし) |
価格 | 3000円 全席自由 |
満足度
(3/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
はにわのにわはわにのにわ
ストーリーは記載の通り。記載するのが難しいストーリーだが補足すると。古墳時代から、令和の時代まで。何故か死んでも生き返る女性のワネメ。様々な時代で死を繰り返しながら、その時代ごとの「死」の形「命の形」を描いていく。最終的には令和の今、「ハラスメントはしてはならない」という価値観を形成するに至る世までを描き切る作品。
団体初見。チラシに惹かれて観劇。様々な時代の死を通して人間の尊厳とは何か、のようなものを問うてくる作品。あまり見かけない構成・構造の演劇。各話のお話は手塚治虫の「火の鳥」のようでもあるし、恐竜の命名のお話は、どこか「南極(ゴジラ)」を思わせる。団体初見なので毎回こんな構造の作品なのかは不明。
意欲作だとは思うものの、演劇としてまとまりに欠けているなぁというのが率直な感想。描きたい事はわかったつもりだし、他の作品ではあまり見かけない唯一無二な感覚はある。でも、演劇を構成力が弱いので半年くらい掃除をサボった部屋みたいにとっ散らかっててつながっていない感。なので140分と長い上演時間がさらに長く感じた。
前半。ワネメが何度も死ぬ話が長い…。3回目の途中くらいで、もー分かったから、ってなる(「笑の大学」の西村正彦の台詞「繰り返しで笑えるのは三回が限度だ」を思い出したり)。後半。学生運動時代の価値観、いわば根性論的な過去の価値観を無批判に否定するのは正しいのか…みたいな問いかけ。最近の劇作でよく見る話ではあるけれど、令和の価値観の違いとの差の描写は面白い。ただ、前半の古墳時代、平安時代あたりとの関連性が薄い。全編、博物館で流れてるビデオ映像の若干無機質な解説とともに語られる中、一見一貫性がありそうに装いつつ、前半と後半で別の物語を観ているようにも感じる。
「歴史の積み重ねで現在がある」という事がテーマだすると。タイムマシンのように時代を飛ぶこの作品の構成であるなら、令和時代のさらに先の価値観がどうなるのかを提示する必要があるように思う(あるいは、令和はあえて描かないようにするか)。今の時代が仮に「なんでも誰かのせいにできる」時代なのだとすると、その時代もいずれ変わっていく。そこまで描かないと「今」の物語が、どうしても特別な重みを持ってしまう。客にとっても「今」は最大の関心事だし、重い。その重さ、特別さが「歴史を積み重ねてきた」前半の描写を殺す、構成としてのちぐはぐさを持っていると感じた。