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【観劇レポート】第62回 横浜市高等学校演劇発表会(高校演劇 神奈川県横浜市 中央大会)

#芝居,#高校演劇

第62回 横浜市高等学校演劇発表会 中央大会の感想です。

初回投稿:2025年10月26日 17時49分
最終更新:2025年10月27日 0時08分

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
名称第62回 横浜市高等学校演劇発表会 中央大会
日程2025年10月25日(土)26日(日)
会場横浜市泉区民文化センター テアトルフォンテ
(神奈川県)

上演演目(観劇したもの)

上演順学校名タイトル日時
1県立横浜国際高等学校妥協点P柴幸男/作 吉中真菜恵/潤色10/25 10:00-
2浅野高等学校ルール・ブルー末松 充羽/作 〇10/25 11:20-
3横浜隼人高等学校雲に隠れた星に、指をさすぬーと隼人の仲間たち/作 〇10/25 13:10-
4神奈川大学附属高等学校ホット・チョコレート曽我部マコト/作 中島智仁、阿部百音/潤色10/25 14:30-
5県立新羽高等学校魔法少女エラー安達 若衣菜/作 〇10/25 15:50-
6県立金沢総合高等学校ひと夏の肖像向井瞬/作 菅原 琉音/潤色 〇10/25 17:10-
7県立岸根高等学校パラボラに、問い。川村利実/作 〇10/26 10:00-
8県立神奈川総合高等学校ロータスの花松永紺里/作 〇10/26 11:20-
9県立希望ケ丘高等学校始業式とダンス河内爽桜/作 〇10/26 13:10-
10中央大学附属横浜高等学校放課後屋上倶楽部髙橋洗樹/作 〇10/26 14:30-
11県立横浜平沼高等学校太陽の花来依/作 〇10/26 15:50-

〇 創作

満足度の記載について

私自身の満足度を、個々の演目ごとに記載します。 「CoRich観てきた」に投稿している個人的な満足度と同じ尺度で表現しますが、大会なので順位が付くため、1点きざみの5点満点では表現できないので、小数点まで細かく書いてます。

感想(ネタバレあり)

上演順1.県立横浜国際高等学校「妥協点P」

柴幸男/作 吉中真菜恵/潤色

感想

芝幸男の既成作品。文化祭の生徒が脚本を書くクラス劇。教師と生徒との恋愛を取り上げようとしたら、教師に検閲されて内容変更を迫られる。しかし実際に教え子と結婚した先生はいるわ、先生の主張は二転三転するわでまとまらない…という議論の過程を、最終的にはクラス劇(≒この演劇)にしてしまおうという作品。
メタメタな話で、なかなか面白いし考えさせられる。例えば物語上で「殺人」を描くことが高校生にとって不道徳になってしまったら、世の中の物語はかなりの数上演することが不可能になる。高校生とはいえ、何のために虚構の作品を演じているのかという問題提起までされる感覚。途中、先生が死んだ…という世界線が出てきて、その後先生が生きていたのが理解できなかったのだけれど話が早くて何か台詞聞き落したかな。ミュージカルのバイオリンが勿体ない、後半もう一度登場させればよいのに。客席で聴き耳を立てていたらどこかの高校生が「地区大会ではあの演出は無かった」と言っていたので中央から盛り込んできた内容かな。

満足度

(4.1/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順2.浅野高等学校「ルール・ブルー」

末松 充羽/作 〇

感想

ランク制が行われている学校。それぞれの生徒たちはS・A・B・Cのランクの札を下げている(が、ランクは「個人情報」なのでお互い同士はその札は見えない様子)。Sランクの子が女子からのにゃいん(LINE)の返信をCランクの子に聞いたり、、、とランクが全てじゃないという事を暗にテーマにしている作品。
描き事は理解したつもりで最後の叫びはもう「ポートフォリオ」に対する明確な批判なんだと思う。私自身も(高校までの)ポートフォリオと(大学の)GPAは本当に最悪な制度だと思うので、主張には共感できるものの。演劇としてはちょっとリズム的に単調すぎて途中から頭に入ってこなくなり。とはいえ頭に入ってこなくても話は理解できる程度に結構な予定調和に陥っていた感。ランク的なものに似た設定を高校演劇で何度か観たことがあるが、状況を「物語る」ためにはもう少し極端にお話を振らないと「まあそういうのが導入されたらそうなるよね」という近距離に玉が落ちてしまうように見える。

満足度

(3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順3.横浜隼人高等学校「雲に隠れた星に、指をさす」

ぬーと隼人の仲間たち/作 〇

感想

労働環境に悩む先生と、進路に悩む高校生。そして、かつて先生を挫折した人が、自然と絡み合いながら描かれる作品。先生と生徒、それも色んな立場の人々の想いを上手く絡み上げて、短絡的な視点にならずに物語にしているのが良い。先生の労働問題は2年くらい前から高校演劇のトレンドと化していて、私自身はその手のテーマの押しつけがましさが好きになれないのだけれど(顧問創作の時は特に)、この作品はその押しつけがましさとかとは無縁のなか、物語として描かれているのがとても良かった。その中に、かつては教師で挫折した先生が、最後まで「教師だった」というのを明かすことなく物語に上手く組み込まれていたのがとてもお洒落だし効果的だなあと思った。一点、先生が東京で見た星空…というのがちょっと理解できなかった。東京を知らない人が東京の夜景に感動した…という理解で正しいとするとちょっと弱いかな。

満足度

(4.3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順4.神奈川大学附属高等学校「ホット・チョコレート」

曽我部マコト/作 中島智仁、阿部百音/潤色

感想

引っ越す友達。見送る仲間たちの会話を、引っ越しをする子の家の片付けの中の会話として描いた作品。
2002年の全国高校演劇大会の最優秀だけれど作品初見。とても良かった。後半曲がループする前の客席の静寂・引き込まれ度が凄い。ラストの方はもう「好きな食べ物」にホット・チョコレートって書いてあるんだろうって分かってはいるものの、そのセリフで涙腺崩壊気味になった(読み上げる友達がサラッと読むのがまたいい)。作品の素晴らしさはもちろんだけれど、役者さんたち、全員変なリキミみもなくグルーヴ感が最強。あのグルーヴ感が出せる演劇部がうらやましいなという思い。この作品「たんぽぽとかずのこ」との類似点が多いのだけれど、初演が上演された年代的にもオマージュかな。「本を大きな箱に入れてはいけない」とかそのままな気が。

満足度

(4.6/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順5.県立新羽高等学校「魔法少女エラー」

安達 若衣菜/作 〇

感想

野球部のエースは実は秘密裏に魔法少女で、魔法少女のゴスロリの恰好をして、学校にくる変な奴らを退治して、YouTubeにアップしている。その事を知ってしまう内気な少女と日々活動するが、変なきっかけでその事が周りに知れ渡ってしまう。最初は拒絶するが、次第にその事を受け入れていく話。
ちょっといろいろなところにツッコミどころ満載で感情移入が難しかった。そもそも魔法少女は何を退治しているのかよく分からないのと、仮に野球部キャプテンがゴスロリ男子でも、変だなあとは思っても突然「変態」呼ばわりする世の中でもないように思う(時代設定がイマイチ掴めなかったが)。魔法少女路線でコメディに落とすにはちょっと突き抜けが足りないしシリアスとのバランスが悪い。全体的にコメディに寄せ切って、もっと大胆に変なことをやってしまったらよかったのかなぁ、なんてことを思う。

満足度

(3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順6.県立金沢総合高等学校「ひと夏の肖像」

向井瞬/作 菅原 琉音/潤色 〇

感想

美術室。補習授業。登校拒否の子と、母の関心を買いたくて学校をサボりがちな子。ふたりがお互いに「肖像画」を描く課題が補修として出る。お互いの事を描きながら話すうちに、それそれの「学校に行かない理由」が徐々に明らかになっていく会話劇。二人芝居。
既成本。作品初見。脚本の素晴らしさはもう言うまでもないのだけれど、二人の演技力が半端なく凄い。間の取り方と、二人それぞれのキャラクターの分析が完璧で、完璧に分析し切って演じているというのが分かる…。まぁ、分析しているんだろうなぁ、という努力の後はよく見えたのは否めないけれど、それにしてもそこにいる二人の人物の解像度の高さが凄くて。ラスト以外音楽のない二人だけの芝居だったけれど、劇場の静寂と、長い間の後に台詞を言う時の引き込まれ感がとてもすごかった。

満足度

(4.7/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順7.県立岸根高等学校「パラボラに、問い。」

川村利実/作 〇

感想

高校の文化祭で演劇を作る。主役に抜擢された二人とその友達を通して高校生の内的な悩みを描き出す物語。
うーむ全く感情移入出来なかった。高校生には響いたのかな。演劇で、悩んでる人が悩みを語る時に「私悩んでます」ってトツトツと語るのは最悪手だと思っていて、正にそのタイプの作品だった気がする。物語るより前に、状況が前に出てきている感覚。宇宙人が転校してきたり変な校則があったり、面白そうな題材が結構隠れてるのに、物語の中のキーポイントでは全然出てこないのも残念。高校生には響いた…のかもしれない。階段の使い方がミュージカル「ゴースト&レディ」に似てるけど、影響受けたりしてるかもと思い。

満足度

(3.4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順8.県立神奈川総合高等学校「ロータスの花」

松永紺里/作 〇

感想

3つの世界が交錯。1つはどこかの星。不時着した宇宙飛行士たちが生き残るために星を耕し食べ物の収穫を目指す話。1つは弥生時代。卑弥呼とそれ以外の勢力が食べ物をめぐって争う話。1つは現代。何かの事情で食べ物の味を感じなくなった従妹を助ける話。3つの話が、ロータスの花、要は「レンコン」を通してつながる。
3つの世界。きっと最後には上手いこと繋げてくれるのかな…と期待したので 40分くらいまでは楽しく観てた。でも、40分で特に繋げる気はない…というか、「ロータスの花」と「食事」っていう事に絡めた3つの物語でしかないのか…・という事に気がついてしまってその時点でちょっとがっかり。それぞれのパートの描き方や演出は良かったけど、やっぱり一つの演劇としては無理があるよなぁ。昨年の中央大会でもうだったけど、結果的に意味ありげな話を並べただけ、になっている。学校の作風か。部員多いから仕方ないのかもしれないけれど。

満足度

(3.6/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順9.県立希望ケ丘高等学校「始業式とダンス」

河内爽桜/作 〇

感想

夏休み明けの始業式の朝。高校二年生の教室。ダンス部員の小倉は今日大会だけど、補欠なので大会に出れるわけでもなくちょっと朝早く登校してぼんやり。次に入ってきた優等生の佐々木は東大の赤本で勉強してる。クラスの子二人は夏休みの宿題をやってなくて焦って読書感想文と美術のポスターの宿題をやっている。そんな朝の教室の、他愛もない会話の時間のお話。
前半の他愛のない時間の会話が、テンポが良くてすごく面白かった。4人のグルーヴ感、自然な会話のやり取りが最高で、もうそのまま特に意味のない朝の風景描写の演劇で終わらせてほしいなと思ったのだけれど。ダンス部の子の補欠繰り上がりはこれだけじゃ終わらないとは思ったらちょっと突如にテーマ的なのぶっ込んできた感あったな。まぁ大会だしテーマ入れたくなるのは分かるけれど。前半の会話がとても自然でしかも笑えるのがとにかく印象的。とても楽しい演劇の時間だった。

満足度

(4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順10.中央大学附属横浜高等学校「放課後屋上倶楽部」

髙橋洗樹/作 〇

感想

思い詰めた高校生。施錠されてるはずの屋上に行くとそこには「放課後屋上倶楽部」なる部活動が。部活の面々と悩みを打ち明けたりしていると、、、実はその部活の生徒たちは、かつてそこから飛び降りて死んだ人たちの幽霊だった。高校時代、その部活のメンバーになってしまった先生を交えてつつ。その屋上が不思議と居場所になっていく話。
とてもいい題材なんだけど、、、テンポが遅いのと、かなり早い段階でこの人たち死んだ人なんだ、ってのがわかってしまい、オチが見え過ぎて辛いって感覚。あと、物語が「あーなってこーなって」と直線的なのもあまりよくなかった。舞台にテンポと緩急・序破急を組み入れる技術が欲しい。昨年の中央大会もこんな感じの演出だったので学校の特徴かもしれないが。

満足度

(3.4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順11.県立横浜平沼高等学校「太陽の花」

来依/作 〇

感想

生徒会長のみことと、副会長の向葵は幼馴染。でも新しく庶務スタッフとして生徒会に入ってきた優莉がみるところ、どうも仲が悪そう。文化祭を前に、異装…要はコスプレに対して、昨年の文化祭のクレームから新たな規則を作るのを迫られている生徒会。生徒会室で議論しているも、みことと向葵がトゲトゲしくてやってられない。先生の意向に従うことにしたら向葵が爆発して、ここぞとばかりにみこととのわだかまりをぶつける。その中で二人の関係が見えてくる物語。
この二人にとってはとっても大きな事なんだろうけれど、多分周りからみたら結構小さなこと。それをものすごく大きく鮮明に描いている。いろいろ粗い面もあったけれど、みことと向葵の二人の感情と、まわりで仲裁することになった優莉と和樹のの感情の動きも良く見えて、最後は結構涙してしまった。小さな物語をちゃんと1時間の演劇のサイズまで解像度を高めているのがとても良かった。前半、和樹の笑いの取り方が大きいと、後半の二人の感情の触れ合いにとの落差につながる。ホールの残響で早口の台詞が聞き取りにくいので、ゆっくり前を見て言って笑いを確実に取っていくと、後半の落としが尚よくなると思ったり。「ヒマワリは太陽に向かって咲くけど、ヒマワリは決して太陽にはなれない」ってセリフが素晴らしすぎる。

満足度

(4.3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

審査結果

file

情報源

過去の観劇

舞台#芝居,#高校演劇