<観劇レポート>ハツビロコウ「夏の砂の上」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ハツビロコウ「夏の砂の上」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | ハツビロコウ |
回 | #11 |
題 | 夏の砂の上 |
原作 | 松田正隆 |
上演脚本 | 松本 光生 |
演出 | 松本 光生 |
日時場所 | 2021/09/21(火)~2021/09/26(日) 「劇」小劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
ハツビロコウとは
『俳優が、自ら主体となって発信する』をコンセプトに、
2015年、俳優たちだけで発足した演劇企画集団。
特定のプロデューサー、脚本家、演出家を置かず、 公演毎にそれぞれが企画を持ち寄り、その時々のテーマに応じ表現方法から興行形態まで模索し上演している。
代表は松本光生。
過去の観劇
- 2022年09月22日 ハツビロコウ「かもめ」
- 2020年03月27日 ハツビロコウ「野鴨」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
錆びついた造船所
陽光で眩む 乾いた夏
この街に 雨は降るのだろうか1999年、第50回読売文学賞受賞作「夏の砂の上」。
平凡な男の手から、砂のようにこぼれゆく日常と、大切な人々。
かすかに残る「ざらついた記憶」は、現実のものなのだろうか・・・
これは、あやうさの中に立たねばならぬ人々の、とても静かな物語である。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年9月22日 19時00分〜 |
上演時間 | 125分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席自由 |
チケット購入方法
劇団ホームページからのリンクで予約しました。
当日受付で、現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は5:5。
様々な年代の人がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
観た直後のtweet
ハツビロコウ「夏の砂の上」125分休無
ど真ん中ストレートプレイ。面白かった。濃厚な空間、人間模様。終盤出てきた「無かったように思う」的なセリフが切ない。テーマよりも、虚無感の埋め方の違い、みたいなのを感じる作品かな。その意味での水のモチーフな訳で。効果音がいい。オススメ! pic.twitter.com/vJpaF9qhBc— てっくぱぱ (@from_techpapa) September 22, 2021
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
長崎。造船所を見渡せる、丘の上にある家。息子を水の事故で失い、造船所が倒産して仕事も失った治。どことなく何もやる気がない。妻の恵子は愛想をつかしたのか、他に男が出来たのか、家を出て行ってしまった。そんな中、妹の阿佐子が娘の優子を預かってほしいと訪ねてくる。どうやら博多で男と暮らしたというのが本心らしい。造船所のかつての同僚たちは、再就職に苦労し、住み着いた阿佐子の娘の優子は、コンビニでバイトしながら、アバンチュールのような恋もしている。恵子はやはり、治の同僚、陣野とつきあい出したようだ。・・・そんな、あるきっかけで乾き出してしまった人々の物語。
松田正隆の原作。元々は読売文学賞の最優秀作品。元々の作品を、ハツビロコウの松本光星が上演台本として起こしたものらしい。青年団で再演などもされているようだけれど、私はどちらも知らず。ど真ん中の会話劇。舞台には、ちゃぶ台と扇風機。治の家の居間だけがえがかれる作品。ちょっとしたセリフに、人間関係の裏の事情を垣間見る。その場に居て、そこで展開されるドラマに耳を澄まして聞いている感覚。
作品全体から、客に投げかけてくるようなテーマは見い出し得なかった。あえて言うなら、ここに出てくる人々は皆、何とか喪失感を埋めようとしている人々だという事。舞台は茶の間のはずなのに、床には、ざらついた砂が敷き詰められている。水道が断水で、水が出ない。満たそうとしても、どこか満たされない乾き。それが、終盤の雨で、若干満たされていく。優子がはしゃぎながら雨水を飲むのに、治が恐る恐る水を飲む。対比というか、人生の喪失に対する向き合い方の差が面白い。でも、どうにもならないざらついた感覚と、水の潤いはどこか二人に共通していて。そんな感情の動きを、つぶさに見ていた。
恵子が治に別れを告げるシーンが印象的だった。直前、恵子が「あなたとの生活を忘れられると思う」と言っているにも関わらず、治か「(事故死した自分たちの息子は)本当に存在したのだろうか・・・。存在しなかったんじゃないのか。」と問いかけると、その事に怒り出す恵子。かつて営まれた家族三人の生活と、息子の死。その記憶を、それぞれがどう捉えているか。二人の間にもこんなに差があるのか、と思うと、興味深さと空恐ろしさみたいなものも、感じずにはいられなかった。