<観劇レポート>オフィス上の空 /キ上の空論「ピーチオンザビーチノーエスケープ」

#芝居,#オフィス上の空,#キ上の空論

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 オフィス上の空「ピーチオンザビーチノーエスケープ」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名オフィス上の空
キ上の空論 2本立て公演 #12
ピーチオンザビーチノーエスケープ
脚本中島庸介
演出中島庸介
日時場所2021/02/07(日)~2021/02/14(日)
シアターサンモール(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

ホームページには、キ上の空論についてこんな紹介があります。

2013年12月旗揚げ。
“オフィス上の空”代表・中島庸介の創作する為の場である。
言葉遊びや韻踏み、擬音の羅列や呼吸の強弱、近年では若者言葉や方言など。会話から不意に生まれる特有のリズム〈音楽的言語〉を手法に『ありそうでなさそうな日常』を綴る。

2018年に池袋・あうるすぽっとにて町田慎吾と新垣里沙を主演に迎えた公演「みどり色の水泡にキス」が話題に。
2019年に小島梨里杏と藤原祐規で「ひびのばら(東京芸術劇場シアターウエスト)」。
2020年にはシアタートラムで「脳ミソぐちゃぐちゃの、あわわわーで、褐色の汁が垂れる。」を上演した。

オフィス上の空

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

#12『ピーチオンザビーチノーエスケープ』【R-18指定】

アパートの一室。
壁や床はペンキで青く塗られていて、誰が名付けたのかそこは《ビーチ》と呼ばれていた。
ビーチにはセーラー服姿の女や、ナース服やミニスカポリスなど、安っぽいコスプレをした女たちがすし詰めになって生活している。
毎日夜になると藤谷ミキオがビーチにやってきてランダムに女を呼ぶ。
その日は「セーラー」が呼ばれた。
女たちに見守られる中、セーラーは服を脱ぎ、藤谷ミキオに被さる・・。
毎日行われるセックスが藤谷ミキオと女たちの"全て"だった・・。

実話をモチーフに、狂気とエロスを描いたキ上の空論の最新作。

いっそ めいっぱい愛す・・
すし詰めのこのビーチで、藤谷ミキオとコスプレ女たちは愛の熱気に包まれる。

『人間は歪(いびつ)が正しい・・』

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年2月8日
19時00分〜
上演時間120分(途中休憩なし)
価格6500円 全席指定

過去の観劇

チケット購入方法

Confettiのサイトで予約しました。
セブンイレブンで予約番号を伝えて、クレジットカード決済して発券してもらいました。

客層・客席の様子

98%男性。30代upの男性ばかりですが。
ただ、内容的には、女性の視点で観て欲しい作品でもある。

観劇初心者の方へ

性的な表現があり、18歳未満は入れない。18禁の舞台です。
性的に露骨な表現があります。

芝居を表すキーワード
・考えさせる
・依存
・セックス

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

パンフを買わなかったので、配役名・役者さん名が対応できていない点をまずお断りしつつ。

道徳とは、少し離れたところで展開するお話。書き難いけれど、「新潟少女監禁事件」や、映画「完全なる飼育」を連想させる。ストーリーの路線は少し違うけれど、途中でふと、映画「空気人形」なども連想。マインドコントロールや、他者への依存をせざるを得なくなった時に、人は何を見てしまうのか。あるいは、性欲に任せた時に人は他人に何をしてしまうのか。道徳的には許されないけれど、確実に人の中に存在する、ドス黒い何か、を描こうとした作品。

作品観ながら思った経緯をメモしておくと。

前半の感想を率直に言うなら「ちょっとぬるいエロ」だった。主人公ミキオに恋焦がれている、ビーチにいるコスプレ女性たち。選ばれた女性とのセックス。ブラもパンティも乱暴に脱がされて、どんなに乱暴に扱われても、ミキオにぞっこんの女たち。…確かにエロいといえばエロいけれど、チラシから連想するのは、こんな独善的な男視点のセックスじゃないよね、という感覚。妙に嘘くさい。嘘くさいがゆえに、「健全感」がただようセックス。この段階では「アイタタタ」と思った。いやいや、そんな安っぽいセックスを観に来たわけじゃないのに。客席を埋め尽くすオッサン的には、ちょっと不満かもとも思った。(最後まで観て振り返ると印象が変わるのだけれど)

一方、気になる点も。ミキオの弟の、底辺を漂うような怖さ。そして、何故に「シスター」がこの女の子の中にいるのか、という疑問。いくらシスターのコスプレフェチでも、スカートもっと短くしそうなもんだけれどな、という違和感。(我ながら鋭い)そして最大の疑問は、この子たちはどうやって生活しているのか?という事。ミキオは、どう見ても冴えない感じ。大金持ってて、金で女を囲っているようにも見えない。そのあたりに、物語の伏線なのかな?という違和感を感じつつ。

中盤、結婚を控えた友人カップルと、ミキオの弟の怖いやり取り。オオカミに睨まれた鹿のように、なってしまう女性に(名前忘れてしまった)、マインドコントロール的に恐怖心で人を操る怖さ。一方、ミキオの弟が「ビーチ」に来た時の女たちが人形のように振舞っていたので、この女たちは実はミキオの「等身大フィギュア」か何かで(要はダッチワイフ)、フィギュアが感情を持ったらどうなるのか?的な物語にも見えてきた。

終盤、畳みかけていく中で見える「桜子」という誘拐された女性。ここにいる女性たちは、全員桜子のなかの幻想だというのが分かってくる。よくいう「イマジナリーフレンド」とか「ストックホルム症候群」とか言うような、完全に歪んだ世界での愛情。逃げる機会を与えられるも、歪んだ愛から逃れられない桜子は、母を投影した「シスター」の人格に、ミキオを殺すことを止められて、逆にミキオを激しく求めてしまう。一方、ミキオの弟の友人カップルは、束縛から逃れられずに自殺の道を歩む。

依存とか、マインドコントロールとか、そんな一言で片づけられる話ではないのかもしれないけれど、思考を停止してしまった時の愛は恐ろしい。他人の思考を奪う事がきっかけで、歪んで他人を愛したり自死を選んでしまう感情が起こるのだ、という事を実際に見ると、人間の空恐ろしさみたいなものを、まじまじと感じずにはいられない。・・・さすがに、監禁や、売春強要のような極端な例は、実際には少ないだろうけれど。構造が似ている歪んだ愛って、実際の生活の中では沢山あるんだろうなぁ、なんて事を考えると、めまいがして、クラクラしてくる。性欲はもちろんだけれど、親子の愛とかもヤバそうだ。悪者に見えるミキオの弟、「全部親が悪い」って言い訳がましく言うのだけれど、少し考えると、ミキオも、ミキオの弟も、親から思考停止を迫られて歪んだ生活の中で、何かに苦しんだ過去があるのかもしれない・・・なんて深読みもしてしまう。思考を進めるて油断すると、倫理の外にあるドス黒いものが入り込んでくる。エロスの描写、濡れ場や裸もそうだけれど、心の物凄く嫌なところに、深く鋭く入り込んでくる演劇だった。

冒頭挙げた作品などなどで、頻繁に取り上げられているので、テーマとして目新しいな~と感じた訳ではなかった。三島由紀夫とか、こんな話書いてなかったっけ?とか思ったり。けれど、ラストに畳みかけ、全ての物語が見える様・・・コスプレ女たちの正体が分かる部分は、真実を徐々に明かしていく表現が、純粋に観ていて面白い。前半の「ちょっとぬるいエロ」は、後半のテーマを際立たせるための意図的な演出なのかな、というのも、最後まで観ると感じる。おっぱいが揺れて、濡れ場でピストン運動を一緒に観る事で、生まれてくるリアリティみたいなものなのかなぁ、と思った。

気になった役者さん。男3人、ミキオと、弟と、その友達。3人とも、後半に向けてどんどんと怖くなっていくのが、きらびやかな女性に引き立てられてとにかく印象的。その中でも、これまでも拝見している役者さん、斉藤マッチュ演じるミキオの弟。どちらかというと「実はイイやつ」的な役が、今までは多かった役者さんだけれど、ここまでドス黒い役がドはまりするとはちょっと意外で、豹変ぶりに驚いた。他のお二方、名前対応させたい。キャスト名一覧は藁半紙でいいから配ってくれい・・・。下衆な話だけれど、セックス終わった後、みんなちゃんとティッシュで拭くのがリアリティあったりして。暴走族?レディース?の特攻服?着た女性(夜露死苦、的な漢字4文字の人)笑い所が印象的。ミキオがレディースの彼女をビーチに連れてきたキッカケとか想像すると、思わず笑ってしまう。ナースの腹筋・ポリスのスクワットが、私的には、むしろ濡れ場よりとてもエロくてツボでした、オッサンですみません。

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