<観劇レポート>Pandemic Design「犠牲と補正」/『1つの部屋のいくつかの生活』#3

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【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 PandemicDesign「犠牲と補正」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
オフィス上の空
「6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3」
チーム黄色
団体名PandemicDesign
犠牲と補正
脚本日野祥太
演出日野祥太
日時場所2021/04/09(金)~2021/04/18(日)
吉祥寺シアター(東京都)

CoRich 公演URL

企画の紹介

ホームページにはこんな紹介があります。

今回は6つの団体をプロデュース致します。
舞台は“とある部屋”この舞台セットを題材とし、選出した6つの団体に“60分”の作品を上演して頂きます。
1.必ず全団体が同じ舞台美術を使用すること。小道具など多少の変化は可。
2.2団体で1組の公演とし、計3組、9日間全18ステージ(1団体6公演)を上演。
3.上演時間は2時間10分《1団体目開演(60mm)→終演→10分の休憩→2団体目開演(60mm)→終演》
決められた舞台美術の中で描かれる6団体の〈個性〉と〈色〉のぶつかり合い。
お客様にはシンプルに楽しんで頂き、作る側には“新しい出会い”と“刺激”になれば、と思っております。

オフィス上の空

団体の紹介

人間の「生」と「性」、薄れていく社会問題や事件などを、
記憶から呼び起こす事を主軸のテーマとして掲げると同時に、
演劇経験や、活動ジャンル、年代など演劇の枠に囚われない
俳優を集めての舞台の普及にも意欲的に取り組む。

"19年、Pandemic Designを旗揚げ。
クリエイティブ会社「株式会社NagiSo」と共同製作を開始。
演劇のみならず、アーティストのライブの演出、
展示会やイベントの企画など、活動は多岐に渡る。

Pandemic Design

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

ここは、丸くて、暗くて、深い海。わたしは、わたしの形になった経緯も知らないまま、わたしの中に閉じ込められている。ここで、光が屈折を繰り返す。音を立てて、匂いと感触をのせて。繰り返すことは、進むこと。時計のように、同じことは、老けること。あるいは、廃れることだと、誰かが言った。わたしの手は、そんな誰かに、繋いでもらうために、この形になったと思い込みたい。手が手であることを忘れてしまったこのかぎ爪のような、この手を。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年4月16日
15時00分〜
上演時間約65分
価格4200円 全席指定
チームチーム黄色として別演目とセット 演目間に10分休憩あり

チケット購入方法

CoRichで予約しました。
当日、受付でお金を支払い、指定席券を受け取りました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらい。様々な年代の人がいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

昏睡している姉の視点と、既に亡くなった母を描くことで、そこにある家族の空気、みたいなものを表現している作品。凄く不思議な世界観。世界の見方。その世界に魅了された。物語を全て理解したわけではなかったけれど、物語の理解が、それ程重要とも思わなかった。

冒頭から、断片的に提示されていく情報。どうやら主役として、時にモノローグのようにしゃべる女性は、既に昏睡状態にあって寝たきりになっているらしい。家族の状況や歴史が、ものすごく断片的に情報提示されていく。母の死については、中盤まで状況がよく分からない。介護士っぽい人のテンションが、最後までよく分からない。どこか全体的に、みんながぶっ飛んでいるというか、心ここにあらず、な雰囲気。むしろ昏睡しているはずの姉が、最もリアルな人間に見える。

色々な解釈が成り立つ作品だと思うけれど、私は、言葉を失って昏睡しているけれど、意識や意思がある人が、どのように世界を見ているか、という物語に見えた。劇中、今日こそは手を上げて手を動かして、介護士に自分には意識があるのだという意思を伝えるのだ、ともがくシーンがあるのだけれど。あのシーンの姉の切実さと、それをほぼ無視して進む家族や周りの人のやり取りが、とても印象的。あえて視点の提示はしないものの、意思を持っていると思われない人が持つ意思を、表現しているように感じた。

詳しく語られていない事もある。1つは、妹が姉を殺そうとしている点。妹の気持ち、姉を殺したくなる気持ちは、何となく想像できる。姉の前で、自己顕示欲、承認欲求を満たすために、ネットで配信したり。何となく屈折した気持ちを理解はできるものの、やはりそこには見る側の想像でしかない。

もう一つは、恋人は何故母を安楽死させたのか。姉とイチャイチャしている時の会話、医師がない人は言語を介さないと意思疎通ができない、という、理解は出来るけれどちょっと怖い発想も垣間見る。その時は制服姿だから、まだ若かったはずなのに。彼は単に、若くて安楽死の知識があったのか。あるいは、その後何年か経って医師になったのか、とか。そういう動機が、分かるようで分からない。

そういう事は想像に委ねられていて、それぞれの視点で補完してみるしかない。その解釈の欠如が、むしろ昏睡の中の意識で見ている人間関係のように見えてくる。・・・物語の解釈としては、ひょっとしたら意図とは異なるかも、とは思いつつ。それでも、そこでとても感覚的に理解した事柄が、何だかとてもと尊い視点の提示のように思えた。

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