<観劇レポート>第34回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演(演劇)

#芝居,#高校演劇

【ネタバレ分離】第34回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演の演劇公演の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
名称第34回全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演
日程2023年8月26日(土)~8月27日(日)
会場国立劇場 大劇場
(東京都)

上演演目

上演順学校名タイトル作者日時
1東京都立千早高等学校フワフワに未熟櫻井ひなた・髙森美羽・樋口璃媛26日13:40頃~
2徳島県立城東高等学校21人いる!よしだあきひろ26日15:00頃~
3東京都立町田高等学校オリビアで聴きながら町田高校演劇部27日13:40頃~
4北海道網走南ケ丘高等学校スパイス・カレー網走南ケ丘高校演劇部・新井繁27日15:00頃~
5島根県立三刀屋高等学校ローカル線に乗って亀尾佳宏27日16:00頃~

満足度の記載について

私自身の満足度を、個々の演目ごとに記載します。 「CoRich観てきた」に投稿している個人的な満足度と同じ尺度で表現します。

ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

1.東京都立千早高等学校「フワフワに未熟」

作:櫻井ひなた・髙森美羽・樋口璃媛

感想

高校演劇サミットで観て、南関東大会で観て、東京凱旋公演で三度目の観劇。個人的には、総文で最優秀取る可能性高いんじゃないかと思っていたけれど、優秀賞。以前の感想にも書いているけれど、どちらかというと小さな空間で観たい芝居。やっぱり国立劇場の間口は広すぎるよなぁとか。マスクをして演じているから、国立だとどうしても声が通りにくいなぁとか、そんな事は気になってしまうのだけれど。よくぞ戻って来たねっていう感覚で、多分ニコニコしながら観ている私。

昨年観た時は、出演者は全員一年生。おおよそ半年を経て、彼女たちは二年生に進級し。新一年生の演劇部員10名くらいが、群唱台詞を言うようにラストが変更されている。初めて観た時、短いスカートを振り振りしながら、きわどい台詞を吐く姿に、センセーショナルなものを感じていたけれど。よくよく考えれば高校二年生。役者さん、少しだけ風貌が変わっていたりする。成長しているなぁと、細かな変化も事を感じる。

言わずもがなこの作品、高校生、女子高生の「今」を見事に切り取ったもの。でもそんな作品を作った高校生も、ゆっくりと成長して変化していく。同じ作品を間隔を開けて観たが故に、正に「高校生の今」を更にリアルに感じる。そんな不思議な体験だった。

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満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

2.徳島県立城東高等学校 「21人いる!」

作:よしだあきひろ

感想

地下にある演劇部の部室に集まる21人の部員。でも様子がおかしい。街は爆破されて、男子部員は「ボランティア」に行く。どうやら戦争のようなものが起こっているらしい。そういった事実の直接的な描写を避けながら、極限に近い状態の演劇部を描いた作品。

上演後の感想で、声が聞こえにくい、というツイートを多数見かけた。確かに聞き取るのは大変ではあったものの、私は幸いある程度聞き取れた。(とはいえ、国立の大劇場はこの手の演劇には結構大変な会場ではある…要は高校演劇には決して向いていない劇場。)

今年の最優秀作品との事だけれど・・・全く面白みを感じられず期待外れだった。前半の「よく分からない混沌」を描く時間が、楽しい演劇部を描いているのに、物語の中であまり有効活用できていなくて退屈。後半、どうやら戦争が起こっている世の中らしい・・・っていうのが分かってくるも、作品が「背後にある直接えがかれない何か」があるぞっていう、物語の構造のみに頼り切っている感が強くて、「あーそうなのね」位しか思えない。青いTシャツの子が、最初から幽霊のように出ている理由は、結局理解できなかった。

1970年代位の短編海外ドラマだと割とありがちな種明かしな気もして、妙な古くささも感じる。あるいは当事者視点の映画「クローバーフィールド」みたいなものとして考えると、そこに生きているキャラクターがイキイキしていないと、戦争がある事の哀しみ、みたいなものも描けないように思う。最優秀賞なので、鹿児島の全国大会での映像がNHKでテレビ放映される。聞くところによると、鹿児島総文では「神上演」と言われたようなのて、今回の観劇とどの程度印象が違うのか見比べたい。

タイトルの「21人いる!」。てっきり「11人いる!」のパロディが来るんだろうなぁと思ったら、全く違った。「11人いる!」を知っている人の勝手な想像ではあるものの、ミスリードさせることがあまり効果的でなく、どの程度意識してタイトルを付けたのかなぁという疑問も感じた。

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満足度

★★★★★
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(3/5点満点)

3.東京都立町田高等学校「オリビアで聴きながら」

作:町田高校演劇部

感想

探求型学習で、喫茶店「オリビア」で働く「おばあちゃんたち」に話を聞きに来た女子高生。話を聞くうちに、おばあちゃんの人生や苦悩、そしてコロナの中の苦悩が見えてくるお話。

喫茶店に話を聞きに来るっていう構造が、かなり昔の高校演劇で優秀賞を取った「オアシス物語」を思い出させる。演劇としてはちょっと単調で、演出の観点では素人目線からも改善すべき点が多くあった。おばあちゃんが背中を向けている場面が多いのは、声を出しているのを見られたくないからだろうか。コロナの中でも前を向こう、というメッセージは伝わったものの、ちょっと刺激に乏しかったかな。

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満足度

★★★★★
★★★★★

(3/5点満点)

4.北海道網走南ケ丘高等学校「スパイス・カレー」

作:網走南ケ丘高校演劇部・新井繁

感想

コロナ禍の中。祖母が亡くなって。初七日。実家に集まった、娘姉妹と、それぞれの子どもたち(いとこ同士)4人。祖母が残したスパイス・カレーのレシピを辿りながらそれぞれの想いを辿る。カレーができるまでの60分をリアルタイムで描いた会話劇。

本当にいい演劇を観させてもらった。ラストは嗚咽を堪える必要があった。亡くなった祖母と姉妹の関係。それぞれの親子関係。祖母と孫との関係。近所の知り合いとの関係。ただただ、カレーを作りながら、人々が会話をしているだけなのに、人間関係が透けて見える。カレーのように、匂い立ってくる。そんな演劇だった。

台所。鍋・包丁・まな板・へらなどは本物なのに、それ以外はスチールラックのようなスケルトン。食材もスパイスの瓶以外はパントマイムで演じられる。冒頭は「これ、どうしてこんな(具象だったり抽象だったりの)中途半端な作り方しているのかな・・・」と思う。最低限の道具でスパイス・カレーを作るパントマイム。60分カレーを作って食べるだけだから、かなりの時間がマイムなのだけれど。その動作一つ一つに魂が込められていて。最後の方では、匂うはずのないカレーの匂いが、劇場中に立ち込めている。想像力を刺激するのに最小限のモノだけ用意したんだ・・・という意図が見えてくる。最初は小首をかしげたアンバランスさが、むしろ演劇としての絶妙なバランスになっている。

同時に、丁寧に演じられるパントマイムと同様、ちょっとした会話の端々にも、丁寧に「気持ち」が込められているのが見えてくる。祖母の死に直面した母の態度に反抗している絵里香。看護職だし、祖母の死に直面しても常に気を張っていた絵里香の母、里美。能天気に明るいけれど、会話の中から(おそらく)離婚して男の子を女で一つで育てているめぐみ。(おそらく)離婚の際にいろんなものを抱え、その反動でおどけているように見えるけれど、傷ついたが故の優しさを秘めている遥人。そんな4人の状況が、カレーを作りながらの断片的な会話から匂い立つ。マイムの動作と同じように、精密に描かれる人間関係に舌を巻く。

あまりにも緻密すぎて、観ている途中から、私自身の祖母が20年前に亡くなった時の母の姉妹たちのしていた会話を自然と思い出す。そして、コロナの中での葬式、2021年に父を亡くした時の事が、ありありと蘇ってくる。目の前にあるものの精密な感情描写と、自分の中の遠くにある記憶が、重なっていく感覚。ラスト、母が「刺激のある人生」と言って出したカレーを食べて泣く里美の背中を見つつ、込み上げてくるものを堪えるのが大変だった。

会話劇として秀作。名作。今後、いろんな演劇部で演じられるだろうし、大人が演じても面白い脚本だろうな。あの演劇の時間に立ち会えたことに感謝したい。そんな尊すぎる60分だった。

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満足度

★★★★★
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(5/5点満点)

5.島根県立三刀屋高等学校「ローカル線に乗って」

作:亀尾佳宏

感想

令和時代。ローカル線「木次線」に乗ってみたら。そこにいる乗客たちは、いろんな時代から乗って来た人たち。それぞれの時代について語り出す人々。ポケベルを取り出す人もいれば、令和の私はスマホを出す。そんな中、木次駅の前に植えられている桜の木について話す人。昭和天皇即位に伴って、小学校に植樹され、小学生が育ててきた桜の木。その桜の木が大きくなるようす。戦時中の出征の記憶。集団就職に送り出した時の記憶。そんな記憶をよみがえらせながら、今や閑散としている木次線も、多くの人の想いの中で存在しているんだ・・・という事をファンタジックに表現する物語。

ファンタジーというか、物語としてはとても抽象的で、現実離れしている表現。その中で描かれるのが、ひとつのローカル線の、存在に寄せる様々な人の想い。よく「思いを馳せる」っていう言葉を使うけれど。実際に「馳せる」って何だろう、と問われると中々表現しにくい。「馳せる」を舞台で、実際に形にするとこんな表現になるのではないだろうか。途中、戦争、出征に利用された鉄道の話の割合が多い。ある種の感動を誘ってくるのだけれど、「木次線」にフォーカスするならば、戦争の哀しみを表現し過ぎるのはちょっと違うかな、という違和感を感じる。木次線は特に廃線の予定はないようだけれど、日本中のローカル線は廃線やBRT化など、存続の危機に瀕しているものが多い。そういった路線に焦点を当てる、オマージュな作品がうまれても面白いかな、と思った。

初代国立劇場での、最後の優秀校 東京公演。花道を使った「令和」の高校生役の子と、冒頭に登場した車掌さん役の、前説と幕間インタビューの様子が忘れられない。

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満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

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