<観劇レポート>演劇プロデュース『螺旋階段』「血の底」

#芝居,#演劇プロデュース螺旋階段,#神奈川県演劇連盟

【ネタバレ分離】 演劇プロデュース『螺旋階段』「血の底」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名演劇プロデュース『螺旋階段』
TAKinKAAT
血の底
脚本緑 慎一郎(演劇プロデュース『螺旋階段』)
演出緑 慎一郎(演劇プロデュース『螺旋階段』)
日時場所2023/08/24(木)~2023/08/27(日)
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

演劇プロデュース『螺旋階段』は、2006年8月に小田原で結成した劇団です。
2006年小田原にて。
居酒屋にて緑慎一郎、田代真佐美、上妻圭志、三春瑞樹の 四人で集まり劇団をやることを決意。酒の勢いで最初は 「マッチ小屋」という名前だったが朝起きたらこれは駄目だと緑が演劇プロデュース『螺旋階段』に改名。
以後、年に二回のペースで公演している。 小田原を秋公演、横浜を春公演に現在は落ち着いている。 全て緑慎一郎が脚本と演出のオリジナル作品を上演。 2016年に演劇プロデュース『螺旋階段』十周年を迎えた。

演劇プロデュース『螺旋階段』

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

あらすじ

1990年、 バブル期の株価最高潮から一気に下落する年。
土地は価格高騰が止まらない。
不動産会社は地上げをし、更に大きな土地を求めていた。
小田原、横浜を舞台に一つの土地に眠る“繋がり”。
全ての人が時代に踊らされていたあの時。
人はなぜ憎むのか。人はなぜ騙すのか。
今垣雄太郎と原田秀樹は出会うべきして出会った。
深い深い穴を掘り起こすと底には血が見える。
暗い暗い道を駆け抜けるとそこには地が広がる。

【TAKinKAATについて】
「神奈川の地で活動し続け50年。神奈川県演劇連盟が誰にも負けないもう一つの演劇の形を、皆様にお届けします。」をキャッチフレーズに、「KAAT神奈川芸術劇場OPENING LINEUP」の1つとして、2011年4月に始まった企画が "TAK in KAAT (Theater Association of Kanagawa in KAnagawa Arts Theatre)" です。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2023年08月26日
18時00分〜
上演時間150分(途中休憩なし)
キャスト
価格3500円 全席自由

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは事前に記載があるものの。それ以上を踏み込んで書くのが難しい。登場人物も多く、かなり複雑。家族の愛情と「恨み」の物語。その恨みの奥底にある「血」としか表現しようのないものの、むせかえるようなしがらみを、表現した物語。

1992年くらいの地上げ屋の物語。幼い頃地上げ屋に、両親の人生を破滅させられて。それ以来恨みを抱いて復習を企んできた幼い兄妹。それを取り巻く人々の物語。すり鉢の底のように。あるいはアリ地獄のように。「血の底」の方に溜まっている、どす黒い感情。「底」を表す舞台美術、空間を彩る照明が秀逸で、冒頭、穴から砂のようなものを掻き出す様子で、心をグッと摑まれる。

150分と長い物語なのだけれど、作品に観入って時間を忘れる。KAAT大スタジオはかなり席が埋まっていた。ジャンル別けすると「サスペンス」とも「任侠」とも「ヒューマンドラマ」とも、どれにも分類出来る気もする。捉えどころの無さもあるからさすがに150分で集中力が途切れそうなものだけれど、「しーん」と静まり返って、同じように静かに舞台に観入る客席が印象的。

観終わった後、細かい人間関係云々、というより、「空間と濃い人間関係から来る、圧力」だけが残る感。物語の細かい部分は忘れてしまった部分も多いのだけれど、アリ地獄のような「血の底」で、逃れられない「血」にあがなうも、結局叶わない。そんな人間の業のようなものが、ストーリー以上の存在感として重く残った。

最近観た芝居だと、同じくKAAT大スタジオで演じられた「湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。」が、物語の時代背景や、出てくる人の生き様としては、近いものがあるかなぁ、と思う。

キャストがダブルキャストで。しかも、TAK・神奈川演劇連盟の公演という事もあり、最近神奈川を中心にブイブイ言わせている上手い役者陣が、片っ端から出ている。スケジュール的に、赤キャストしか観れなかったけれど、白キャストも観たかった。「この役、別キャスだとどうなのかなぁ」と思わず想像してしまう。

前回の「螺旋階段」の公演の感想でも書いたが、緑慎一郎の書く物語の幅の広さと深さが凄い。次回作は「小田原みなとものがたり」でまた人情劇に戻るようだけれど、観る作品観る作品、同じ人が書いたとは思えず、しかもどれも面白い。注目すべき作家。

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