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●5/16(日)まで 劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
●3/14(日)まで 劇団チョコレートケーキ 「帰還不能点」

<観劇レポート>劇団青年座研究所「萩家の三姉妹」

#芝居,#青年座,#青年座研究所

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、劇団青年座研究所「萩家の三姉妹」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名劇団青年座研究所
実習科45期卒業公演
萩家の三姉妹
キャストA
脚本永井愛
演出磯村純
日時場所2021/02/12(金)~2021/02/14(日)
川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(神奈川県)

団体の紹介

ホームページには、こんな紹介があります。

「創作劇の上演」を趣意書に謳い森塚敏、東恵美子ら10人の俳優たちによって1954年に結成された劇団青年座。
その養成機関として1975年に創立した劇団青年座研究所は、これまでに1000人を超える卒業生を演劇界・芸能界に送り出してきました。

その特徴は充実したカリキュラムと多彩な講師陣にあると言えます。
基礎的な身体訓練から実践的な俳優訓練まで、経験豊かな講師陣があなたの中にある俳優としての才能を導き、舞台、映像の現場で活躍できる人材の育成を目指します。
劇団青年座研究所では青年座や演劇界を背負って立つ若い力、新しい感性と強い意志を持つ俳優志望者を募集しています!

劇団青年座研究所

事前に分かるストーリーは?

ある地方都市の旧家、萩家には三人の姉妹がいた。 長女鷹子は大学でフェミニズムを教え、次女仲子は二人の子育てに奔走する専業主婦、 三女若子は自由気ままに暮らすフリーター。 父の一周忌の日、鷹子の元不倫相手である本所武雄が現れたところから、 三姉妹それぞれを取り巻く運命は動き始める・・・ これは、心の自由を求め、不器用ながらも一生懸命に生きる人々の物語。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年2月12日
17時00分〜
上演時間175分(10分間の休憩含む)
価格2000円 全席自由


  • 2020年02月25日 劇団青年座研究所「ブンナよ、木からおりてこい」
  • 客層・客席の様子

    男女比は6:4くらい。
    養成所の卒業公演だったからか、若い方とシニアの方に二極化していました。

    観劇初心者の方へ

    観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

    芝居を表すキーワード
    ・会話劇
    ・ジェンダー

    観た直後のtweet

    満足度

    ★★★★★
    ★★★★★

    (5/5点満点)

    CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
    ここから先はネタバレあり。
    注意してください。

    感想(ネタバレあり)

    チェーホフの「三人姉妹」をモチーフにした(と思われる)、永井愛の戯曲。ジェンダーの問題を取り上げつつも、どうにもならない人間のサガだったり、性とフェミニズムだったりを取り上げた作品。恥ずかしながら私は、チェーホフの方は、読んでも観てもいないのだけれど、先日観た、東京デスロック「外地の三人姉妹」で、大枠のあらすじを把握していたので、下敷きの物語に気が付いた。ただ、別にチェーホフを知らなくても、観劇には全く問題なかった。

    永井愛の戯曲。会話を積み重ねていく作品が多く、個人的な印象としてはどこか生真面目な印象の作品が多い感覚。このストーリーも、チェーホフを下敷きにしていて、どこか生真面目さ・・・会話劇で魅せるある種のストレート勝負な感覚はあるものの、内容は結構ドロドロ。一歩間違うと、昼メロになってしまいかねない題材を、人の細かな感情を解像度高く見せる事で意味深くしている感じ。3時間、人間ドラマに魅入って観た。

    次女はチェーホフと同じくやはり不倫。三女はパラサイト。同僚の大学教授は最終的には「トランスジェンダー」。それぞれの居心地の悪さを、なんとか乗り切ろうともがく。おそらくチェーホフの「三人姉妹」にはない、「フェミニズム」「フェミニスト」を、話の中に取り入れているのが面白い。「フェミニズム」をキーワードにしながら、それ以外の事もいろいろと考えを巡らせてしまう。

    フェミニズムを教える大学の教師の鷹子が、フェミニズム的な考えを追求すればする程、実は自分自身がその呪縛に囚われている。観客席にいると、むしろそれは「フェミニズム」の問題には全く見えないのが、面白い。むしろ、単にそれぞれの人生の問題に対してあがいているだけなのに、その問題に対して「フェミニズム」とか、「女性/男性」の問題を"後付け"して、なんとか目の前の事象を解釈しているいるようにさえ見える。劇中のセリフの感覚を借りるなら「自分が定義している学問の反証を自らが作り出している」かよう。…あるいは、私自身の視点が「男だから」かもしれないけれど。

    おおよそ2000年頃に書かれた戯曲だから、2021年の私たちの価値観の方が、少しずつ変わった、時代の経過なのかななんていう事も思う。鷹子が、元旦の萩家に現れた、ゴスロリ女装の武雄を「ゲイ」と呼ぶ。LGBTなんていう言葉がまだ日本では一般的ではない時代だったからか。専門家でさえそうなのだから、「ゲイ」と「トランスジェンダー」の区別なんて、まだまだだし。あの頃から比べれば、LGBT、という言葉を全く聞いたことがない人は、今の世では少ないだろうし。

    ラスト、いつか女性/男性、なんていう事を気にしない世の中になればいい、という三姉妹の想い。戯曲が、時間を経た事で見え方が変わったのだとすると、実はそういう世界は、意外と早く来るのかな、なんて楽観的な事も感じたりもするが、…そういえばオリンピック大臣が「女性が出る会議は長い」とか言ってクビになったばかりでもあるか…なんていう事も頭をよぎった。

    三幕。鷹子と武雄の、自分自身を題材にした研究の会話のやり取りが凄かった。自分たちの交際での初夜…、初エッチの時のお互いの感想を述べあうやり取り。体感的には20~30分くらいの長い会話。結局、男は「男らしさ」を、女は「女らしさ」を、実はどこかで渇望している。それをフェミニストの教師の立場からする、というのが何とも凄いシーンだなぁとおもった。それは「あがなえないサガ」なのか、「毒された結果」なのか、作品の中でそのどちらなのかの価値観は示されなかったように思う。私は、「それはサガだから仕方のない事」という風に考えてしまうのだけれど、それはもう古いのかな、なんて事も思う。初夜の、一つひとつの動作をたどっていくと、最終的には、男も女も、ポルノに毒されている、という結論。すごく言い難い事ではあるけれど、確かにそうだよなぁ。気が付くと、この戯曲の時代より進んで、ネットでなんでも簡単に見れる世の中になってしまった。時折、やり取りの滑稽さに吹き出しつつも、いろんなことが頭をめぐった。

    青年座研究所の卒業公演。昨年、「ブンナよ木からおりてこい」を拝見した、45期の研究生の方々。昨年のブンナに比べて、全体のグルーヴ感というか、適材適所というのか、役へのハマり具合というのか、その場に溶け込んでいる感覚が更に深かった感覚。脚本の違いもあるけれど、大変な一年間だったからこそ、なのかなと、パンフを読みながら思った。

    ご卒業おめでとうございます。

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