<観劇レポート>劇団タッチミー「私劇・シゲキ」

#芝居,#劇団タッチミー

【ネタバレ分離】劇団タッチミー「私劇・シゲキ」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名劇団タッチミー
復活公演
私劇・シゲキ
脚本辻村尚子
演出辻村尚子
日時場所2023/07/15(土)~2023/07/16(日)
アトリエ第Q藝術(東京都)

団体の紹介

チラシにはこんな紹介があります。

劇団タッチミーの結成は二〇〇五年で、最後の公演が二〇〇六年4月です。振り返ってみれば活動期間はわずか1年。 そんな短い活動期間だったのか、と今さらとても驚きました。 なんつってもその1年間に6回の公演をしましたからね。2ヶ月に1度のペースで次々と新作を作ってはやってました。今考えるとものすごい...。それぞれの出産等を機に活動を休止する事になったんですが、気がついたら17年も経っていました。休止期間中は各々活動をしていましたが、ふたりで呑む度に「タッチミーの復活公演いつやる?」と何年もダラダラと語り合っていました。時間ばかりが過ぎたので、重い腰を上げ復活します。今回は若い息吹友ちゃんと共に。

劇団タッチミー

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

三姉妹は異母姉妹。 父親は娘達を分け隔てなく愛し、優しさに溢れた温かい男だったが、女運が悪く三度の結婚をする。長女美智子は最初の妻との子ども。次女真奈美は再婚相手の連れ子で、後にその女とも離婚するが真奈美だけは引き取る。三女千明は三度目の最後の妻との子どもだが、千明が歩き出す前には離婚し千明の親権も父が持つ。複雑な父子家庭での暮らしだったが、その父も先月死んでしまった…。
東京の町外れにある小さなスナック 「波恋多淫 (バレンタイン)」。そこは長女美智子と父が苦労してお金を工面し、華やかな世界に憧れをもつ次女真奈美に開かせたもの。1階が店舗、2階が住居、そこに姉妹3人が暮らしていた。
奇妙な共依存関係の三姉妹がくり広げる悲劇的喜劇。…果たして三姉妹は共依存から抜け出すため自分のコンプレックスと向き合い、希望の光を見つける事ができるのか。・・・どうかはわかりまん!

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2023年07月16日
13時00分〜
上演時間90分(途中休憩なし)
価格3000円 全席自由

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは、記載の通り。複雑な家庭の三姉妹。一番下の妹は血のつながりはないけれど、小さなスナックの上で3人で暮らしている。父の四十九日。妹は相変わらずワガママ全開で、長女は彼女に気をつかってビクビク。真ん中の次女は、何もかにもやる気がなさそうだけれど、実は加工アプリで盛った動画をTikTok?Instagram?に上げている。そんな、どこか共依存しがちな三姉妹。ある日三人に届いた健康診断の結果、一番下の妹が、乳がんである事が分かる。スナックはもうすぐ9周年。でも10周年の頃には生きていないかもしれない。そんな事情もあって、いつもよりもワガママが大きくなった妹に、ついに姉たちがブチ切れる・・・というお話。

17年の時を経ての復活公演らしい。活発に活動していた頃の事は全く知らず、劇団名も聞いた事が無いものの。ふとチラシを手に取って読んでいるうちに、どうにも気になって予約。QRを読み取ると出てくるのはメールアドレス。今どき予約に直メールしか手段がないなんて・・・なるほど17年ぶり。この手の公演は、大当たりか、身内ウケの地雷を踏むか、どちらかなのだけれど・・・。面白い。身内公演にしておくには勿体なすぎる。あっという間の90分。

三姉妹はそれぞれに事情を抱えている。血が繋がっていない妹を「可哀想だと"思い込むことに囚われ"て」人生を前に進められない長女。一方、血が繋がっていないことに「同情されるのはまっぴら」と思っているのに、無意識に「狂おしいほ同情されたいとど思っている」妹と。何につけても冷静なふりして二人の姉・妹を見守っているのに、どこか変身願望みたいなのを秘めている真ん中の女。それぞれの人間模様がある「共依存」っぽい関係。そこに、妹の乳がんが分かって、いろんなものに拍車がかかる。

姉妹3人に限らず、兄弟姉妹、あるいは一人っ子でも、親族に対してどこか依存してしまう心が、演劇としてデフォルメされている人間関係の中に、くっきり、はっきり、浮かび上がる。観ていて、決して気持ちのいい感覚ではない。気持ちよくないのに「分かる、分かる」と共感して観ている自分に気が付く。そこに、スナック「波恋多淫 (バレンタイン)」の、ストレス解消のための変なショーの、若干コミカルなシーンが混ざってくるので、目を背けたいような事に気が付くと向き合わせてくれる、演劇としての面白さがとてもいい。ラスト、ありきたりな大団円ではなくて、結果的に父の死をきっかけに、それぞれの人生の一歩を踏み出す、スタートの物語になっているのが良い。

タイトルが「私劇・シゲキ」だけれど、これは実体験を基にしたのかなぁ、なんて疑問をぼんやりと思う。言葉が鋭い。どこか気だるく展開される必要最小限の言葉から、状況が浮かび上がってくる。ググってみた限り、辻村尚子という作家が見当たらなかったのだけれど、劇作も17年ぶりだとすると驚き。活発に活動していた頃はどんな作品を作っていたのかなぁ、などと想像。他の2人、9周年記念のチラシが、何故か天童よしみに見えてくる・・・岩中千華子の迫力あるワガママっぷりと、佐藤友の(どこかで観たよな…と思ったらPeachboysの「ノリピーチ姫」じゃないか…)、とにかくやる気が全くない中で踊り出すときの顔、が印象に残り。

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