観劇

【観劇レポ】ばぶれるりぐる「ほとびる屋上」

【ネタバレ分離】 ばぶれるりぐる「ほとびる屋上」の観劇メモです。

初回投稿:2026年10月03日 1時01分
最終更新:2026年10月03日 1時02分

公演前情報

公演・観劇データ

項目 データ
団体名 ばぶれるりぐる
回 MITAKA”Next”Selection 27th参加作品
題 ほとびる屋上
脚本 竹田モモコ
演出 チャーハン・ラモーン
日時場所 2026/10/02(金)~2026/10/12(月)
三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2018年旗揚げ。竹田モモコ主宰の演劇ユニット。

竹田の出身地、高知県土佐清水市の方言『幡多弁』によるコントや会話劇を発表しています。

『ばぶれる』とはだだをこねてあばれる。『りぐる』とはこだわる。という意味。

普遍的な悩みや葛藤を扱いつつも印象はライト。

おもわず笑ってしまう劇作を得意とする。

日々がんばる大人のための演劇を目指す。

ばぶれるりぐる

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

【ごあいさつ】

正月を過ぎカチカチになった餅を、少しの水で茹でて潤(ほと)びかす。

すると完全な輪郭「がわ」をもってない餅みたいなもんが出来上がります。そういうだらしなくて雑な解決方法と、そのセカンドチャンスみたいなものにうっとりします。

「がわ」をしっかり持つ、ということは会社や学校では常に求められます。急に大きい声で歌ったりしない。家に着くまで寝ころばない。自分の機嫌を表にださない。本音もださない。

それを8時間週5。え、しかも一度でもミスったら変人扱い?やってらんねぇ。

それより僕と踊りませんか。

どうぞ、ほとびることを許された会社の喜劇をお楽しみください。

【イントロダクション】

ずんぐりしたビルとむっくりしたビル。

似たような社長に、似たような社員。似たような屋上に、似たような灰皿。

最近、どうも境界線がぼやけだした。

みせかけの電気工事に、暴走する恋心。屋上いっぱいに描かれた白線。

どうでもいい大問題が業務を侵食する。

大丈夫ですか?まだいけますか?それってこっちまできますか?これって食べれますか?

いつまでも一緒に走っていくんだと思ってた隣の会社は、いつの間にか輪郭を失っていた。

ばぶれるりぐるが「幡多弁」でお贈りする労働群像喜劇。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目 データ
観劇日時 2026年10月02日
19時30分〜
上演時間 110分(途中休憩なし)
価格 3800円 全席自由

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

ほとびる屋上

隣同士に建つ3階建てのビルの屋上が舞台。ふたつのビルは30cm程しか離れていないので屋上同士で飛び移れる。ふたつのビルは、それぞれ別の会社。かつては幼馴染の社長同士が仲良く経営していたのだが、10年前の「かりんとう」の開発問題で大喧嘩して、以来お互いのビルを「無いもの」として無視し続けてきた…とは言っても従業員の喫煙所だったり休憩所になっている屋上。お互いの従業員が話をしない訳もなく、社長の指示に反して、独り言のような会話を続けていたのだが…。片方の社長の様子が変だ。屋上の床に落書きしたり、あれだけ反目していた隣の社長にまるで子供の頃のように呼びかけたり。息子社長に代替わりを予定していたのだけれど…その社長はボケ始めていたのだ。お互いの従業員同士と、、、そしてちょっと変な電気屋さんとの会話を通して描く…田舎の小さな会社の屋上の風景と人々の物語。

団体初見。いや~めちゃんこ面白かった。絶妙なシチュエーション設定。コミカルな会話。淡白だけれどキャラクターの面白さ。最後にちょっとだけ泣かせるストーリー。どれを取っても演劇として最高過ぎた。前作、OFF OFFシアターで上演された作品、チラシの質感が気になっていたのに、予定が混みあってて観に行けなかったんだよなぁ…というのを、過去公演一覧を見て思い出す。観終わった後での感想として、質感って大事だよなぁ…なんて事も同時しみじみ思う。

屋上を舞台に切り取るのが、設定として絶妙すぎ。3階なので、おそらく落ちたら死ぬか死なないかの境目くらいの高さ。柵もないので怖いといえば怖いのだけれど…古いビルだから柵がない可能性もあるよな…な屋上スペース。最終的にはその屋上の二つのビルを行ったり来たり。二つの会社が仲違いの関係にあるけれど、不安定な二つの会社の関係だったり人間関係だったりが、殆ど説明なくすんなりと入ってくる設定。最後、社長さんビルから落ちるのかな…と思ったのだけれど、さすがに落ちたらちょっと深刻過ぎるかなぁ…と思ったら、結局誰も落ちなかった。…もちろん舞台セットとしては落ちても全く問題ないのだけれど、落ちそう、っていうシチュエーションがこの物語の人々の状況を表す意味でも絶妙。

中盤は…仲違いした会社の社長の話というよりかは…従業員や"あと取り"社長のお話。単純作業の労働だけれど、それにいつしか慣れてしまう自分。自分の限界を試せないまま終わるんだろうなぁ…みたいな自分を想像しつつ嫌悪しつつ、でもそれをやんわりと受けて入れている自分。直球で語られるととても深刻な問題なんだけれど…どこかそういった問題を第三者的に俯瞰して、そして笑い飛ばしているような要素を感じる。真剣に描くだけが演劇じゃないよなぁ。とても絶妙な「茶化しかた」でいろんな閉塞感が描かれるのが心地よい。正に劇団の紹介の「普遍的な悩みや葛藤を扱いつつも印象はライト。 おもわず笑ってしまう劇作を得意とする。」の通り。

濃いキャラクーっていう訳ではなくて、どちらかと言うと淡白だけれど愛おしい系のキャラクターがいい。特に、高橋映美子演じるゆき恵が、勤務初日に隣の社長に恋してしまうのが何とも面白い。竹田モモコの一人ユニットという事なので、他の役者は皆客演なのだと思うけれど、座組のハマり具合が凄すぎるなぁ。

ラスト。10年のわだかまりが溶けて、屋上のベンチにたたずむ二人の社長。「10年ぶりにこちらのビルに来たけれど、うちのビルは隣から見るとこんな感じに見えるんだなぁ(うろ覚え)」的な台詞のリアリティが半端ない。いつか誰もが老いていく。仲違いしても、仲直りしても、老いていく。それまではコメディの様相が強かったのに、突然夕日にたたずんでコーヒーを飲む二人に涙。すごく単純な事実としての「老い」を描いているだけなのに、100分くらいかけて物語られただけで、屋上を取り巻く状況を自分自身の老いと重ねられるのなんでだろうなぁ…急な涙に暗転中にセッセコ涙を拭いながらそんな事を考える。笑って笑って、そして涙して。最高な演劇やん。110分間ワクワクし続けた作品だった。

「幡多弁」で話されるのが特徴という事だけれど、個人的には「幡多弁」だから…良いとか悪いとかとう感情は全く生まれなかった。「XX弁を使った演劇」…他にもそういうのをウリにした団体があるけれど(名前は出しませんが…w)、「幡多弁」を利用する必然性みたいなものは感じなかった。カーテンコールで「言葉の意味が分からなければぜひ物販の台本を」とのアナウンスがあった。確かに「正確な意味」は分からない部分もあったけれど、日本語としての「何となく伝わる意味」で十分。むしろ、日常会話のコミカルさを、ある程度「幡多弁」に乗せている。悪い意味ではなく「ある程度」というのさじ加減の方が、むしろ絶妙だったのかもしれない。

役者さん。や乃えいじ、もう何だかんだ20年くらい前かな…関西方面で活躍されている声優・声の出演の多い役者さん…という印象。…あの時のあの方がこの方と同じ人なんだ…という事に記憶がつながるのに時間かかった。。覚えていた名前と繋がって、初めてお姿を拝見できて嬉しい。

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