<観劇レポート>ラビット番長「カチナシ!」

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名 ラビット番長
第31回池袋演劇祭参加作品
カチナシ!
脚本 井保三兎
演出 井保三兎
日時場所 2019/09/19(木)~2019/09/23(月)
シアターグリーンBOXinBOXTHEATER(東京都)

劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

■主宰の井保三兎によるオリジナル作品を
舞台上演する事を目的としたプロデュース団体。
現在、東京を拠点に演劇活動を展開中。
地方公演も積極的に行っています。

ラビット番長HP

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

日本初の劇団主催“福祉フェス”で1200名様を超える集客を記録。さらに将棋をテーマとした舞台で数々の演劇賞を受賞しているラビット番長。今度のお話は“介護士が将棋のプロ棋士を目指す”介護×将棋の最強コンビ! 池袋演劇祭2010&2011&2017王者のラビット番長が放つ渾身の一手、今年はどう成る…?!

観劇のきっかけ

出演されている方のツイートを拝見し、気になっての観劇です。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時 2019年9月14日
19時00分〜
キャスト 【A】キャスト
価格 3800円 全席自由
(事前にネット予約)
上演時間 120分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★★☆
(4/5点満点)

客席の様子

男女半々くらい。男女共に、アラフォーアップが多いように思いました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者の方でも、安心して観劇できます。
将棋の知識が多少でもあると、より楽しめますので、開演前の「ルール解説」を是非聞きましょう。

観た直後のtweet


ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
伝説の対局。その途中で脳梗塞で倒れ、そのまま介護施設で寝たきり生活を送っている大原。弟子たちは、行方不明の大原を今でも慕っていて、人望も厚い大原。施設には、かつての大原の弟子、北島が偶然働いていて、かつての師匠の変わり果てた姿に驚く。北島は、挫折し大原の前から逃げ出したのだ。そんな大原の面倒を見ているのは、大原のめかけの娘。そこに正妻もやってきて、大原の面倒をみることに。その頃将棋界では、ネットの将棋ゲームで絶対に負けない棋士のことが話題に。その棋士を見つけ出して、プロ試験を受けさせる、なんて話も上がり。実はその棋士は、空いた時間を見つけてはネットの将棋ゲームにハマっていた、北島だった。正妻の想いもあり、胃にチューブを入れる寝たきり生活をやめた大原。将棋連盟会長が、もし自分と大原が対局するなら、北島に特例で、プロ試験を受けさせることにする、という。辛うじて将棋が指せる様になった大原と、会長と。ついに対極。会長は、脳卒中で倒れた時の、あの指し手迫ってきた・・・と強引にまとめるとこんな感じ。

まず、将棋を題材にした演劇という事で。開演前の将棋ルール解説から、本番中の対極の様子まで。将棋のルールが分かっても、分からなくても楽しめて、でも将棋にとても根差した話で。これはとても、面白い。こんな演劇の手法・・・というか、題材の取り上げ方があるんだ、というのがかなり新鮮だった。

本編。ものすごく感情の山・谷があるお芝居のはずなのに、描き方がとても淡々と淡々と、していて。逆に淡々とした感覚のままクライマックスの対局のシーンまで運ばれるるので、その感覚が良かったのだろうかとも思う。もっと、ドラマチック過ぎた演出をすることも出来たと思う。例えば、最後の「角、成らず」なんて、もっともっと盛り上げてもいいのに、と思ったけれど。淡々と進む。その結果、単純な感情というのか、すごく原始的な感情を、直接揺さぶられたような感覚がして、気が付くとうっすらと涙していた。そして終演後は、底抜けに清々しい。そんな不思議な感覚のお芝居だった。

テーマはいろいろあると思うのだけれど、私自身が最も共感したのは「人の生き様」だろうか。劇中「太陽みたいな人だった」と評される、大原。芝居の中では、回想シーンのごく短い時間しか動かない。ほとんどの時間は、車椅子で麻痺しているか、ベッドに寝ている。元気だった頃の生き様は、周りの人から語られる物語が多いにも関わらず。加えて、演じている俳優さんも、二枚目とはとは言い難い方だっけれど。それでも確実にこの人「カッコいい」というのが見て取れて。なんだがその部分が、観ていてとても心地よかった。

特に、いいな、と思ったのは。めかけの子と言われ、本妻から疎まれる娘。実は、彼女は大原の娘ではなく、将棋連盟会長の子だった事。大原は、会長と過ちを犯した弟子を助けて、その場を納めるために、その子を自分の子として認知したのだった。結局、その秘められたストーリーは少し中途半端に語られるのみで伏線回収される事はなく、大原の妻も、その事を知らずに、物語は終わる。それでも大原の妻は、何か大原の事を、どこか大きな懐で理解しているようなフシもあり。夫婦にしかわからない事って、あるよな、なんて事も思い。淡々と突き放した感覚が、ここでも続いていて、カッコ良さに輪をかけていた感覚だった。

音楽の使い方が気になった。選曲も古いのが多かったけれど、気になったのは選曲ではなくて「使い方」。率直には「ちょっと古臭い感覚の、曲の使い方」だった。「このセリフのタイミング、この音量で、この歌詞のはっきりした曲を流すんだなぁ」という感覚。私自身が演劇を観初めた1990年代には、トップランナーの劇団にも、こういう演出は多かったように思う。出来の悪い芝居でも、音楽に乗せてとりあえず強制的に感動させる的な演出を、昔は結構観た気がする。今の若い人の小劇場の演劇を観ると、こんな風に音楽を使うケースは、実は少ない。そんな事もあり、久しぶりのノスタルジックな曲の使い方の感覚に、ちょっと面食らってしまった部分もあった。一方で「カチナシ!」、2時間の芝居に比して登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの個性みたいなものが見えたので、「音楽に乗せられて」感動しました、という嫌な感覚とは無縁だった。淡々とした物語と相まって、いつしか「心地よいノスタルジー」を感じるようになっていた。・・・たまにはこういうのもいいかな、と。

・・・否、かなりいいタイミングで、大好きな曲「Only love can break your heart」が流れたので、ちょっと個人的に嬉しかっただけかも。

気になった役者さん。やはり、シニアな俳優さんが上手いと舞台が締まるなぁ。井保三兎、カッコいいわけじゃないのに、カッコいい。うん。カッコいいな。あら、作・演出もこの方なのね。すごいな。車椅子でチュー迫るの好き。木村望子、大原を根本的なところで理解している感覚、諦めと認め合っている感覚のバランスがいい。卑近な例だが、どうしても樹木希林と内田裕也、中村玉緒と勝新太郎的なものの影を見てしまい。松沢英明、呼ばれた時の、あの世間を恨むような少し鈍い反応が好き。桜木ユウ、ちょっと胡散臭い感があるけれど、プロ騎士頑張ってます感がいい。岡村輝之、誰が何といっても羽生さんだ。あと、おばあちゃん達好演だったなぁ。「ババロアーズ」と勝手に命名。・・・関係ないけれど、ふと、舞台の全出演者が突然、設定を気にせずに、ババロアーズと一緒にキレッキレに踊ったら楽しいのにな、と思うシーンが何度かあった。(それこそ、キャラメルボックスのように。突然のダンス。勝手な想像。)

あと一言。香子ってどこかで聞いたと思ったけれど、思い出した。将棋ドラマの名作、「ふたりっ子」だ!


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