<観劇レポート>Stokes/Park「フィルタリング」

#芝居,#Stokes/Park

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名Stokes/Park
フィルタリング
脚本白鳥雄介
演出白鳥雄介
日時場所2020/01/29(水)~2020/02/02(日)
OFFOFFシアター(東京都)

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

ストークスパーク。白鳥雄介主宰の舞台ユニット。2018年旗揚げ。
情熱を燃やす場所。心の火を大きくする場所。

Home | Stokes/Park ストークスパーク

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

学校、の会議室。来年度の春に向けて、クラス編成の会議が行われていた。

「この子がほしい」「あの子がほしい」
「この子はあげる」「あの子はいらない」​

教師たちが優秀な生徒を取り合う壮絶差別的視点……??
教師たちにとって、そんなことはどうでもよかった。
大事なものは、どこにある?

1年ぶりのStokes/Parkは、個性的なキャストを迎えて送る
情報ダダ漏れの非・密室劇!!教師たちよ!!おまえの正義を振りかざせ!!

観劇のきっかけ

昨年観た第一回公演が面白かったからです。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

観劇日時2020年1月30日
19時30分〜
上演時間110分(途中休憩なし)$$
価格2310円 全席自由 tktsで購入

チケット購入方法

直前にチケットを手配しようかなと思ったところ、tktsにチケットが出ていたのでこちらで購入しました。
tktsの窓口でカードで支払い、チケットをもらいました。

客層・客席の様子

男女は半々くらい。年代層は幅広くいましたが、割と役者さんの友達などの関係者っぽい感覚でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・コメディ
・笑える
・考えさせる

観た直後のtweet

映像化の情報

DVDの予約を公演時に受け付けていました。

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
高校の先生たち。130人の生徒のうち、30人はエリートクラス。100人は普通クラス。より分ける選別作業。成績、生活態度、家庭環境などでエリートを選出している。学校で事故を起こした堀部を、尾野はエリートクラスに推薦する。…実は堀部と小野はつき合っていて。いじめを避けるために堀部が起こした事故から、かばっていたのだ。一方、先生たちの間では、マッチングアプリ「デュアーズ」が流行っている。みんな既婚なのに、深入りせずにちょっとお酒を飲むくらい、と言って相手を探している。自分のプロフィールを登録して、フィルターにかかった相手を引っかけようとしている。尾野も試してみると、すぐに女性から声が。この女性、かなり大柄な太った女性なのに、細い写真とアバターを用意して何とか出会いを探そうとしている。…実はこの物語、時は2121年。異常気象でハリケーンが急発生して各地を襲ってる。そのため、優秀な人だけ北極圏に移住させようとしている。エリートクラスとはそういう事。北海道に残っても住めなくはないけれど、生活は大変。そんな中、堀部が事故を起こした時に顏の半分を負傷した水城が、出来心で学校の放火と、北極行きの先生の入れ替えを企てる・・・と、強引にまとめてしまうとこんなお話。

お話の組み立て方と、コメディ要素と、そして、背後に横たわっているテーマの要素のバランスが絶妙で、上演中殆ど醒める事なく物語に没頭。う~面白い。面白いけれど、テーマがかなりエグいなぁ、という感覚。普段は見たくない人間の嫌な部分を描いているのに、それでもストレートにエンターテインメントな作品だった。

舞台は100年後の世界で、選ばれた人が北極に避難したり、タバコが麻薬並みに取り締まられていたり、スマホがかなり小型化されてVRみたいなものが導入されていたり(スマホのような板状のものの事をADってい呼称していた。何の略だろう)と、今の世の中といろいろと変化があるも、その世界観を過度に説明し過ぎないで、あっさりと淡々と物語に取り入れているのが演劇として気持ちよく、かつリアリティもあり。一方、出会い系のデュアーズは、今とあまり変わらない「出会いの」距離感で。

コメディとしては、かなり笑った。男の先生四人組の掛け合いがとにかく面白いし、太った女の子の澪の突っ走り具合も。瀬川のオドオド。ニュースの衛星中継の遅れ具合なんて、腹抱えて笑ってしまった。

テーマとして出てくる「フィルタリング」っていう言葉には、二つの視点で見る事を想定しているのかな、と感じる。
一つは、優秀な人を北極圏に移住させる計画に代表されるような、自分たちにとって「良いモノ」を選ぶ時の大きな視点での「フィルタリング」。上から目線のフィルタリング、とも言えるかもしれない。設定の社会的な影響を真面目に考えれば、北極圏に行けるかいけないかでその人の人生は大きく左右されるのに、この植えなく不真面目に決めている先生たち。まるで出会い系で人をフィルタリングする時のような気軽さ。冒頭の生徒を選択する部分、若干笑いが少なめだったのは、この、人を簡単にフィルタリングしてしまう不気味さ、みたいなのがあったのかな、と思う。(私はあまりにもブラックすぎるので、逆にガハハと笑ってしまったけれど。)また、水城が途中で唐突に話始める、パラリンピックの話題。何故パラリンピックにみんな注目しないんだろう、とサラッと指摘するような怖さは、この部分の事なのだと思い。
もう一つは、もっと身近な関係の中で、自分がフィルターされている、という焦燥からの視点。瀬川が堀部に言っていた「俺見えているのかな」という不安。また、澪の出会い系登録の作戦も、笑わせてくれるんだけれども、実はどこか笑えない部分もあってチクチクと痛い。出会い系の作戦としては、ポッチャリ好きを探した方が作戦としては賢いんじゃないか・・・と思うのだけれど、そういう「賢い」路線を取らない当たりとか(一方、ラストの尾野とのシーンを見ると、意外と澪は計算してやってるのかとも思ったけれど(汗))、テレビのアナウンサーを見て「高校時代、あの人にイジメられていたんです」と、サラッと画面を指さしたり。あるいは、パラリンピックに出たいけれど、事故で火傷した水城は片目の視力を失っただけなので、出たくても出れない、という、どこかひねくれてしまったもどかしさ、悔しさ、絶望。
この二つを見せたかったのかなぁ、と感じた。どちらも、何かをフィルターするという点で、日々我々がやっている事のようにも思うし、まじまじと見てしまうと、とてもグロテスクな決断のようにも思う。そんな嫌な部分を、軽快な笑いで隙を作っておいて、サラッと観客の人生に潜り込ませた、そんな印象を受けた。

フィルタリングすることが悪いとか、誠実にフィルタリングしなさいとか、そういう説教臭い事を言っているのでは、きっと無い。単に、人が生きていく時、そういう「エグい選別」は致し方なくも起こるよね、という事。その意味で、途中で堀部が瀬川に言っていた「見てもらうように努力したら」と、ちょっと厳しく言うのだけれど、帰結するテーマとしては、そういう事なのかなぁ、と感じる。ラスト、瀬川が自分のリュックを探るシーン。あれ、自分としては大事に持っている本だから、きっとリュックの底の方に入れていて、すぐに取り出せなかった…という事を示しているのだと思うけれど、やっと取り出した本を堀部に渡して、結局映画を見に行くことになる。瀬川、「見てもらうように努力したら」の努力が叶ってよかったなぁ…と、割と素直にそんな事を思ってしまった。

…ここまで書いて、当日パンフに目を落す。半ば作者の自虐的な部分をデフォルメしている作品のよう。「これを、笑ってください」との事。ブラックすぎるどうにもならなさに、シコタマげらげら笑わせてもらったので、解釈は、大きくズレてはいないのかな。

気になった役者さん。んーもう、たくさんいて困る。芸能事務所に所属している方も多いようで、舞台経験は豊富な方が多いの、かもだけれど。…座組の適材適所感がハンパない。特に気になった人だけ。大野泰広、先生に乗せられてデュアーズに手を出した時の時の中途半端な笑顔と、堀部を抱きしめている時の顏と、先生としての真面目な顔。ギャップのある三つが次々飛び出すのが凄く印象的。太田知咲、顏のグロテスクな火傷の後、上手いタイミングで出してきて。感情移入は出来なかったけれど、本当に不気味だった。信江勇、太っている事を前提としているけれど、あの明るい感じがいい。陰にこもられたら、なかなか観続けるの辛いけれど、明るいから助かる。内田めぐみ、なんていうか、尾野が惚れてしまうというか、寄りかかってこられるともうどうにも避けようが無さそうな感じの魅力。地味な、というのもツボ。要は尾野と恋しちゃってるのがリアリティあり過ぎ。でも、セリフの「地味」は役作りだろうなぁ。十河大地、セリフが殆どなくても、この人今何考えて何に葛藤しているのか、というのがつぶさに伝わってきた。

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