<観劇レポート>ラビット番長「成り果て」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | ラビット番長 |
回 | 第4八回公演 |
題 | 成り果て |
脚本 | 井保三兎(ラビット番長) |
演出 | 井保三兎(ラビット番長) |
日時場所 | 2020/02/07(金)~2020/02/09(日) 紀伊國屋ホール(東京都) |
成り果て | 演劇・ミュージカル等のクチコミ&チケット予約★CoRich舞台芸術!
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
■主宰の井保三兎によるオリジナル作品を 舞台上演する事を目的としたプロデュース団体。
現在、東京を拠点に演劇活動を展開中。
地方公演も積極的に行っています。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
舞台は西暦2000年、奨励会でプロ棋士を目指していた兄妹の兄が夢破れるところから始まる。
妹は男性棋士に混じりまるで兄の敵を討つかのようにプロを目指し、兄は悩み迷いながら将棋ソフト開発の道へ…そんな矢先、兄が癌に侵されている事が発覚する。
将棋界のセカンドキャリア問題、棋士VS女流棋士、そしてコンピューター将棋。
それぞれの想いを抱え、命の駒を進めていく棋士達のその先の「成りの果て」とは…?
観劇のきっかけ
前回作品が面白かったから、の観劇です。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
観劇日時 | 2020年2月7日 19時00分〜 |
上演時間 | 130分(途中休憩なし) |
価格 | 4800円 tktsで購入 指定席引換券 |
チケット購入方法
当日スケジュールが空いたので、tktsの窓口でクレジットカードでチケットを買いました。
指定席引換券でしたので、当日指定席券を受付でもらいました。
客層・客席の様子
男女比は7:3。30代以上の男性と、何故か若い女性が目立つ不思議な客席でした。ひょっとしたら、普段演劇を観る層とは異なっているのかな、と思いました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・笑える
・泣ける
・将棋
観た直後のtweet
ラビット番長「成り果て」130分休無。
劇団2度目。前半の展開がちと複雑で転んでる気が。前回「カチナシ」に物語の構造が似てるので理解出来た面あり。大舞台だからかな。でも後半の畳みかけ、すごく原始的な感情を揺さぶられた。涙した。生きていくのに職業棋士は要らない、だからこその!オススメ! pic.twitter.com/eULwCkr3ky— てっくぱぱ (芝居好き) (@from_techpapa) February 7, 2020
映像化の情報
会場で、DVDの予約を募っていました。
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは。
2002年頃?棋士とコンピュータープログラムが対局する時代。少し落ち目のプロ棋士の森と、その弟子たちを軸に展開する物語。天野高志は奨励会に入れず、プロ棋士を諦めてコンピューターの対局プログラムを作る。そのプログラムは強くなり、プロ棋士を倒す、という噂が出る。一方天野の妹・幸恵は、女流ではなく奨励会のプロ騎士を目指して邁進していく。女流棋士の名人がコンピューターに倒されて、奨励会プロ騎士の中から対局する三人の中に森が選ばれた。森が選んだ指し手は・・・と、かなり強引にまとめるとこんな話。
ラビット番長、2回目の観劇。紀伊国屋ホール進出、という事で。前回出会った「将棋演劇」が、意外だし面白かったので、また観たかった。公演期間が短いので諦めていたけれど、たまたま、予定が開いたので当日券で行くことに。
ストーリーは、割と前回の「カチナシ」に似ている。今回はAIとの対局をクライマックスに据える構造。淡々と物語を運び、森を巡る人々の将棋への想いをからめとりつつ進む物語。…紀伊国屋ホールでちょっと慌てていたのか、正直なところ、物語の内容が単純に分かり難くて、取っ散らかっていたように感じる。ストーリーの中で自然と時間が経過する物語だけれども、そのあたりも「ん?時間経った物語?」と思う事が多く。滑って転んでいる感覚。「カチナシ」と、お話の構造的には似ているので、内容を見失う事は無かったけれど、細かい人間関係はあんまり理解しないまま進んでいったかなぁ、というのが正直なところ。客席的にはどうなんだろう。感覚が今一つつかめなかったものの。
後半。いろいろと伏線を張り巡らしているので、ラストの展開は正直見えていた。森はニコニコ飛車?でAIと戦うんだろうな。ニコニコ飛車の戦法か有効だった理由は、相手に驚きを与える事と、序盤を終盤に変える事が出来るから。見え見えではあるものの、森の対局前のつぶやきからして、妙に原始的な感覚をくすぐってきて。4手目くらいで飛車を振ったところ、きっとこの芝居のクライマックス。ネット上の民のつぶやきが、バックスクリーンにスクロールしつつ、私自身も涙。きっと、将棋が今の世でもこれだけ愛されるのは、人間が悩み続けているからなのだろうな。勝敗に悩み、プロになるのかならないのかで悩み、女流であるという事に悩み、AIという新しい脅威に悩み。そこまでのストーリーが、森の対局の一点、ちょっと猫背の姿に帰結していく。ものすごく原始的な感情をくすぐられて、素直に、感動してしまった。
チラシにもあるセリフ。「棋士は、この世の中に別になくてもいい職業だ。だからこそ、プロはファンにとって、面白い将棋を指す義務がある。」っていうセリフに、全て凝縮されている。あの展開の中で言われると、本当に本当に、重い。世の中にある、表現やスポーツや、そういったものは、全て将棋と同じで、生きるためには必要ないモノ。そういった一見「ムダに」見えるものを、賞賛し背中を押している。そんな物語に思えた。
気になった役者さん。井保三兎、やっぱりこの役者さんは本当に上手いなぁ。作・演出もされて、あそこまで器用な演技されるんだなぁ。世界観を背負って立っている感じ。松沢英明、前回も会長役だったけれど、風格がいい。ちょっと間が抜けていたり、厳しかったりの緩急がたまらない。西川智宏、前回も「将棋世界」の編集長だった気が。安定した世界観を作ってくれる感じがいい。ラストのサスのところ、「カチナシ」でもあった気がするけれど、面白い。
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