<観劇レポート>た組。「ぽに」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 た組。「ぽに」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | た組。 |
題 | ぽに |
脚本 | 加藤拓也 |
演出 | 加藤拓也 |
日時場所 | 2021/10/28(木)~2021/11/07(日) 神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
2013年に結成、加藤拓也が脚本・演出を務める劇団。丁寧な言葉とドラマ運びで、底抜けた暴力性と虚無感がねっとりと複雑に立ち上がる物語を上演している。15年に小川洋子の小説『博士の愛した数式』を舞台化。18年に発表した演劇に不確定要素として実際のスポーツを持ち込んだ『貴方なら生き残れるわ』が大きな反響を呼び、映像が公開された時には1週間で1万回以上再生された。19年『在庫に限りはありますが』がNHKBSプレミアムでオンエア。近年では地方の公共劇場とのワークショップや実験的な映像作品やインスタレーションにも活動範囲を広げつつある。
過去の観劇
- 2023年05月24日劇団た組「綿子はもつれる」
- 2022年09月30日劇団た組「ドードーが落下する」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
円佳(23歳 松本穂香)はやりたい事が見つからず、ひとまず海外に行く事を目標として、時給1000円でバイトシッターをしている。好きな人である誠也(24歳 藤原季節)の家に頻繁に寝泊まりしながら、生意気でシッターを奴隷扱いする男児・れん(5歳 平原テツ)の家から最近よく指名をもらっている。
ある日、いつもの様にバイトへ向かうが、業務中に起きた災害によって円佳はれんと避難せざるを得なくなる。しかし避難所は定員で入れず、2人は彷徨う事に。そんな最中、れんはいつも通り横暴で、限界に達した円佳はれんを置き去りにしてしまう。
円佳が誠也の家に帰宅した翌朝、れんは43歳の姿になって訪ねてくる。れんは「ぽに」になってしまったのだ。
激怒するれんの両親(豊田エリー、金子岳憲)業務外の事故として関知しない雇用主(津村知与支)、関係性のはっきりしない彼氏、ぽに化が進むれん、円佳の世界の輪郭はどんどん曖昧になっていく・・・
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年10月30日 18時00分〜 |
上演時間 | 130分(途中休憩なし) |
価格 | 4500円 全席指定 前半割 |
チケット購入方法
チケットかながわで購入、決済をしました。
セブンイレブンでバーコードを見せて、チケットを受け取りました。
客層・客席の様子
男女比は6:4くらい。
様々な年齢層の人がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・会話劇
観た直後のtweet
た組。「ぽに」130分休無
すごく面白かったんだけど、結局それが何を意味してるのかは全然分からなかった。不条理劇ですかね。私が鈍いのかも。困った。主演の松本穂香さん、記憶正しければ2時間出ずっぱりだけど演技が素晴らしすぎた。オススメだけど。分からないかも。誰か解説して欲しい。 pic.twitter.com/MK4w2E3Tt7— てっくぱぱ (@from_techpapa) October 30, 2021
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
まず最初にメモ。「ぽに」は「に」にアクセントがある。「鬼」と同じイントネーションで、どこか鬼みたいな印象も受ける。観る前は「ポニー」と同じ「ぽ」にアクセントを付けて読んでいたので、ちょっとその点にびっくり。
劇団初見。KAAT大スタジオ。四方に客席を配置する中、公演の砂場と遊具を模した円形の枠の中で繰り広げられるお話。ストーリーは、カンパニーの事前紹介の通り。円佳は、あまり頭が良いとは言えない女性。少し的外れた向上心を持ちつつ、それでも日々懸命に生きている。そんな中、ベビーシッター中の事故で、五歳児のれんが体が半分腐って「ぽに」になった状態で彼女の元にやってくる。「ぽに」は、どこか霊みたいな存在にも思える。「ぽに」がいる時、れんは行方不明。両親から責任を追及されるも、結局は河原で溺れているのが見つかり、ラストに一命を取り止めるのが示唆されて終わるが、除霊?をお願いした占い師の言葉通り、円佳は失明してしまう。
緻密な緻密な会話劇で、観ていて飽きない。人間の嫌な面をえぐり出すような会話の応酬。恋人(未満)の誠也とセックス後の生々しい会話や、弱気で自分を主張できない円佳の会話。作り出す空気が、粘っこくて、観ている側の嫌悪さえ誘ってくる。常に言葉の切れ味が鋭い。
繰り広げられる物語は明確なのに、結局、何が言いたかったのか…みたいなことは、分からなかった。「ぽに」とは何か。失明は何を意図しているのか。いろいろ考えるも、しっくりこない。おそらく創り手側も、そこに明確な意味なんて込めていないのかもしれない。いろいろと考えることで、既に術中にはまっているというか。「ぽに」というよく分からない存在も含めて、この空気感を描くための材料でしかないのかも。…ただ、どうしても「意味」を求めてしまう自分もいて、その部分が「歯切れの悪さ」にも感じられてしまったのは確かだった。
答えを求めて、普段は感想を書き終わるまで読まない、当日パンフを読んでみる。「責任には出口がない事を鬼ごっこをベースにした」と。「ぽに」は「鬼」でいいのか。でも、責任には出口がない…。そうか。ものすごくハイコンテキストに仕上がっているなぁ。説明を読んでみても、やっぱり明確な意図を捉えずに、雰囲気を楽しむ方が良い作品に思えてきた。
主役の円佳を演じている松本穂香が、とにかくすごかった。記憶違いでなければ、全編出ずっぱり。考えるのが苦手な女性の、会話の癖というか、思考がまとまらないまま生きている人の癖みたいなものを、的確に表現しきっていた。初めてみる女優さんだけれど、映画等にも出演されるし、有名な方なのか。実際にどんな人なのか(半ば地を出しているのか、演技なのか)が気になってしまった。