【観劇レポート】シリコン「パチパチ」
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | シリコン |
回 | シリコン第三回公演 |
題 | パチパチ |
脚本 | 松尾英太郎 |
演出 | 松尾英太郎 |
日時場所 | 2025/07/29(火)~2025/08/03(日) 「劇」小劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
人工的なお芝居をする団体。主催 松尾英太郎
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
「人の欲の近くで生きていると、幸せになれないんだよ」
たしかここの初日に誰かが教えてくれた。
女は今日長年勤務したパチンコ店を退社する。
どれくらいの客に満面の作り笑いで「大当たりおめでとうございます」と言ったんだろう。
自分はすこしぐらい大当たりらしいことがあったんだろうか。昔のことなんてどうでもいい。
最後の一日がはじまる。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年08月01日 14時00分〜 |
上演時間 | 105分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 全席自由 |
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
パチンコ屋「Lucky」のバックヤード休憩室。16年務めた八木尚美は今日で辞めるがどこかスレていて送別会も嫌がっている。店のバイトの面々、今日入ったばかりのバイト、社員、社長の群像劇が展開され。加えて八木が初めて店に来た日・・・などなど、過去の回想シーンが交互に展開される。上下中央で舞台を区切り、でも上下両方、ただパイプ椅子と机が置いてある休憩室。八木を中心としたパチンコ屋の面々の群像劇。
団体初見。濃密で濃密な人間模様。会話劇。いや~めちゃくちゃ面白かった!一癖も二癖もあるパチンコ屋の面々の濃すぎるやり取り。パチンコ屋・・・ギャンブルにまつわる仕事についている人々のリアルだったり抱えているものを、会話の中から醸し出すように描いている作品。観終わった後に、物語があーでこーでという事より、むしろそこに生きている人の存在感が強く印象に残り続ける作品。
幸田尚子演じる八木尚美の、かつての従業員との恋と、恋人を奪われてしまった存在感がとにかく凄い。傳田うに演じる気のいい姉御肌のうめ子。かつてはホール担当で、今は何故か(おそらく)掃除のおばさん。実はうめ子はSMの女王様で社長とデキているが、女王様は女王様なりに悩みがあって・・・。八木から恋人を奪って今は妊娠中の篠原友紀演じる亜依は、八木との会話で阿修羅のような顔をしていて。。。。他の従業員も社長も、男性含めて皆が皆で個性的というかなんというか。その面々の、現在と過去の対比で人間模様が描かれるのが、何とも巧みというか、上手いなぁと思う。
ここに集まっている人はひょっとすると「人生というパチンコに一発"当たらなかった"」「幸が薄い」人々かもしれない。でも、一発当たらない事はそそのまま「幸せではない」事なのだろうか?。真剣な生き様であるがゆえに、客席から眺めるとどこかコメディのようにも思えてくる作品ではあるが、一方カーテンコールで並ぶ役者たちが、客席に向かって「おめでとう」と拍手する。社会の端っこで生きているひとへの優しい眼差し的なものも兼ね備えた作品だった。