<観劇レポート>多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科「メビウスの輪〜縁の交わり〜」

#芝居,#四日目四回目,#多摩美術大学

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科「メビウスの輪〜縁の交わり〜」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科
2022年度 多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 卒業制作演劇公演
メビウスの輪〜縁の交わり〜
脚本オノマ リコ、野田 秀樹
演出蔭山あんな、旦妃奈乃
日時場所2022/12/25(日)~2022/12/26(月)
東京芸術劇場シアターイースト(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

多摩美術大学の卒業制作の発表会です。

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

【演劇舞踊デザイン学科 卒業制作演劇公演】
演劇舞踊デザイン学科は、感性豊かな身体の表現者、創意豊かな空間を演出するデザイナー、劇作家、演出家等の育成を目的とした学科です。それらの専門性から演劇舞踊コースと、劇場美術デザインコースを設けカリキュラムを展開しています。
卒業制作は、学びの集大成として、両コースのコラボレーション作品を企画し公演を行なっています。今年度はカンパニー全体でミーティングを重ねた結果、2本立てで上演することに決まりました。卒業制作演劇公演で2つの作品を上演するのは、2019年の『英雄』『運命』以来です。また、初めての試みとして学生が既存戯曲を脚色し演出します。

【メビウスの輪〜縁の交わり〜】
 全人類に平等に与えられている"時間"を、何に費やすかは個人の自由である。私たち演劇舞踊デザイン学科6期生の学生たちは、大学4年間の時間を舞台芸術に費やしてきた。
 人は自分の生きやすいように生き、心地よい環境を作ろうとする。自分が見たいものを見、聞きたいことを聞く。しかし、果たしてそれでいいのだろうか。過ごしてきた時間は一人一人異なるため、人の数だけの正義があり、それだけ偏見も生まれる。全員が幸せな空間を作ることは難しいことなのかもしれない。それでも相手を慮って想像することは、芸術に触れている私たちにとって重要なことの一つではなかろうか。
 さて、今回の卒業制作のタイトルである『メビウスの輪』。これは、細長い帯を 1 回ねじって両端をはり合わせたときに、表裏の区別ができない連続面となる図形である。表側がいつのまにか裏側になっている不思議さを示している。正反対のものは相容れないものではなく、実際には共存しているものだ。子供と大人、男と女、過去と未来、生と死。未来に向かって生きるために私たちには過去を振り返り、先人たちが作った歴史を学ぶ意義がある。その終わりがなく正解のない作業を経て、今の私たちが表現できるものを残したい。     

【監修コメント 柴 幸男】
彼らの集団運営、創作の姿を見ていると、新しい時代が来ているのだと強く感じます。これまでのような権力構造からはなれて演劇はつくれる、と彼らは証明しようとしています。『メビウスの輪~縁の交わり~』と名付けられた本企画は2作品の同時上演という多摩美の演劇公演でも見たことのないものになりました。どちらも過去への対峙、忘却への抵抗、そして未来への創造を扱っていることは注目に値すると思います。上演が終わったときどのような景色が見えるのか。今から楽しみです。        

【上演作品】

『解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話』
ここからはじまり、ここからおわり、ここから続いていく。
ここはみんなが集う場所。彼女たちの痛みも揺らぎもやさしさも。
とある大学の、とある学生たちの、とある時間が詰まっている。そんな場所。
私はこの旧体育館が好きでした。
春でも冬でもやわらかな光が射して、この光に大事に包まれているように思えるから。
きっとみんなも、この場所が好きなんだと思う。
やがて解体されゆくこの場所に私は何ができるだろうか。彼女は何を思うだろうか。
(脚色・演出:蔭山 あんな)

●キャスト
※○は12/25(日)、◉は12/26(月)の配役となります。
息吹 ○上瀬 もも        ◉上瀬 もも
敬虔 ○小山田 匠        ◉仁科 穂乃花
奔放 ○原 裕穂         ◉望月 さあや
哲学 ○大森 菜生        ◉田坂 歩
癇癪 ○佐藤 桃彩        ◉内川 大輝
沈黙 ○石田 陸         ◉荒木 香乃
平穏 ○片寄 梨亜        ◉黒木 真衣
飴玉 ○JIANG Xiaoqian      ◉佐々木 夢
〇〇 ○中嶋 千歩        ◉川口 時生

『エッグ』
古びた原稿用紙に書かれていたのは、
"エッグ"というスポーツで東京オリンピックを目指すアスリートたちの物語。
忘れられていた物語を今、読み解いてみる。
そんな今もいつかは過去になり、過去はいつか忘れられる。
でも私たちは、
白い殻が何を包み隠そうとも、
これまで過去になったこともこれから過去になることも、
忘れたくない。
(脚色・演出:旦 妃奈乃)

●キャスト
阿倍比羅夫    椎名 陸斗 / 太田 華子
平川       虫鹿 優也 / 平岡 美理
苺イチエ     井澤 佳奈 / 島田 和哉
振付師      佐藤 里帆
芸術監督     下田 あい
消田監督     越石 裕貴
粒来幸吉     奥山 樹生 / 青木 樹
◯田フミヨ    田中 伶奈
オーナー     鈴木 彩愛
女学生      済木 心媛
         福嶋 まりあ
         本田 実子
         水落 燈李

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2022年12月26日
13時00分〜
上演時間180分(途中休憩なし)$$
価格4000円 全席自由 開場時整理番号順入場

チケット購入方法

ローチケで購入、決済しました。
ローソンでLoppiにQRコードを読ませてチケット発券しました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
50代upの方が目立ちました。生徒さんのご両親・家族でしょうか。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・卒業制作

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科の卒業制作に伴う公演。同学教員の柴幸男が監修しているが、実質、2つの作品を連続上演して、ひとつの作品「メビウスの輪」としてまとめている。いちおうのテーマとしてのメビウスの輪はあるものの、2作品に大きな関連性はなく、それぞれのチームが制作した作品をつなげた、という印象。それぞれの作品について、感想を記載する。

ご卒業おめでとうございます。

「解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」

(オノマリコ作、蔭山あんな演出)

高校演劇なども含め、あちこちで上演されているのを見かけるけれど、作品初見。オノマリコの作品は、過去高校演劇で上演されている、精華高等学校「大阪、ミナミの高校生3」を観て以来2度目。

大学の入学から卒業まで。様々な想い、様々な日常を持った学生たちの交錯を描きつつ、その中で、大学にあったレーモンド建築の旧体育館の保全運動とを、からめて描く。旧体育館を守る活動に精を出す学生と、その活動との距離感的な描写をしながら、大学と、人生と。それぞれの模様を群像的に描く作品。

正直なところ、あまり手に合わなかった。なんというか、そこはかとない違和感。観てる途中から、なんでこんなに不自然な違和感を持つのかなぁ、作品(脚本)に対する違和感なのか、演出に対するものなのか・・・みたいな事を考え出してしまう。作品自体は、大学生の等身大な悩みが、それぞれの方向性を持って存在する・・・という、まあ、青春な事を淡々と描いている作品で。それが故、高校演劇をはじめとする上演作品として、取り上げられることがあるのだろうけれど。

途中、ふと気がついたのは、演者の「等身大」なものが、透けて見えないなぁ、という事。大学の卒業制作の公演として、大学4年間の生活を描いた作品なのだから、それなりに「痛さ」「ほろ苦さ」みたいなものがあっても良さそうなのに。そういった感覚が、全く伝わってこない。意図的に消したかのようにさえ思える。・・・もちろん、大学生が大学生を演じるからと言って、実生活に投射した表現である必要は、全くないのだけれど、でも、そういうものって透けて見えてしまうし、この場合、透けて見えてしまっても良いもの、だと思う。一言で言ってしまえば、大学生が演じているのにもかかわらず、現実味に乏しい事。美大ならではの奇抜な衣装も相まって、どこか「未来の大学の物語」なんじゃないかな、という、変な現実感の無さとの折り合いの付け方を探してる自分に気がつく。

そもそも、作品(脚本)自体があまり好みじゃない・・・って可能性も捨てきれないけれど、別演出での作品を、観てる途中から想像してしまったので、やっぱり別演出で観てみたいなぁ。精華高校の「大阪、ミナミの高校生3」を観た時の、もう少し淡々とした演出。高校生が、他者を「演じ」ながら、それでも自分と重ねざるを得ない状況を、ふと思い出す。

「エッグ」

(野田秀樹作、旦妃奈乃演出)

告白すると、こんだけ演劇作品を観てるけれど、野田秀樹の作品を観るのは初めて。若い頃、嫌な思い出があり明確に避けてきた。40代になって、観劇を頻繁にするようになって、観ようとすると、必ず横やりが入る。最近だと、「カノン」を多摩美の先生でもある野上絹代が演出する公演も、コロナで観れなかった。きっと野田秀樹とは縁がないんだろう。もう観ないで死ぬんだろうなぁ。いや、能動的に観ないで死のう。(夢の遊眠社のDVDも買わないぞ)・・・と思っていたのだけれど。・・・最近、2度ほど作品を拝見して、ちょっと気になっている、四日目四回目の旦妃奈乃が演出するのなら…と思い、観劇。…まぁ、私以外の人にとってはどうでもいい情報なのだけれど。要は、野田秀樹作品との初対面。

観てはいないものの、前情報はたくさん得ている。「ことば遊びな演劇」…ってのをよく聞いていたのもあって、展開としては割と予想通り、だった気がする。前半、意味も分からないままに、何度もまくし立てられる「エッグ」という競技。それが気がつくと、戦中の「人体実験」の記憶に結びついていく。寺山修司が、この件とどういう関りを持っているのか、私は予備知識もなくて正確なところは分からない。後半の「人体実験」の話に結びつくまで、気持ちが離陸するまでには結構な時間が必要だったものの、(おそらく)オリンピックに対する批判など・・・要は見境なない全体主義的なモノ・・・とも話が繋がってくると、あー、という納得な場所に落ち着いていく。「エッグ」をスポーツに例えていることもあって、途中、身体的に魅せる事がどうしても必要だけれど、そのあたりの演出が見事。ワサワサと、とっ散らかっている感覚も、後々思うと効果的。

ただ、野田作品、割と「予想していた通りだなぁ」という感覚は強く、40年以上ひっぱってしまったのだから、もう少し驚かしてほしかったなぁ、という気もする。卒業公演の演劇としては、抜群に面白かったけれど、野田作品に対する想いという意味では、ちょっと肩透かしをくらった感じもあって、複雑な心境。

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