【観劇レポート】Seiren Musical Project「Be More Chill」
【ネタバレ分離】 Seiren Musical Project「Be More Chill」の観劇メモです。
もくじ
初回投稿:2025年09月07日 21時09分
最終更新:2025年09月07日 21時09分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | Seiren Musical Project |
回 | 第62弾公演 |
題 | Be More Chill |
脚本 | Joe Tracz |
原曲・原歌詞 | Joe Iconis |
演出 | 平戸麻衣 |
日時場所 | 2025/09/03(水)~2025/09/08(月) シアターグリーンBIGTREETHEATER(東京都) |
価格 | 5000円 全席自由 |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
Seiren Musical Project は、
「あなたの、きっかけに。 」
をスローガンに掲げ、
それを実現するために
①学生に出来る最高のミュージカル
②誰もが本気になれる場所
③早稲田のミュージカル文化を創る
の活動指針を持つ、
早稲田大学公認インカレサークルです。
過去の観劇
- 2025年03月16日 Seiren Musical Project「春のめざめ」
- 2024年12月27日 Seiren Musical Project「City of Angels」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
気の弱いゲームオタク、 ジェレミーの望みは平凡な高校生活を無事に生き延びて、 憧れのクリスティンと結ばれること。
ある日、彼を学校の人気者へと変貌させてくれるというスーパーコンピューターが入った錠剤 「SQUIP (スクイップ)」 を手にする。
夢見た世界が広がるが、 その先には思いがけない代償が待っていた--。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年09月06日 18時30分〜 |
上演時間 | 160分(途中休憩を含む 休憩 15分(75-休15-70) |
キャスト | DOWNLOAD |
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
アメリカの高校。ジェレミーとマイケルはスクールカーストの最低位だけれど友達。あるモールの靴屋で600ドルのSQUIPという錠剤を飲むと、血液にナノ・スーパーコンピューターが搭載され、脳内の声がきこえて「一軍」になれる。たまたま在庫があってSQUIPを手にしたジェレミーは、脳内の「マトリックスに出てくるキアヌ・リーブスに似た」声に従う。確かに一軍にはなれるし未来予知もできたが、マイケルを失い学校は変なことになる…と強引にまとめるとそんな話。
Wikipediaで調べると、2015年地方初演。2018年オフ・ブロードウエイ、2019年ブロードウエイ公演、日本でも2022年にTBSによる上演歴のあるミュージカル。基は2004年のNed Vizziniによる小説とのこと。詳しいストーリーはあちこちに解説があるるので検索していただくとして。
パンフレットに演出家が書いていた通り「ちょっと変わった」ミュージカルだった。アメリカの高校生のスクールカーストもの、ディズニーチャンネルのドラマとかでよくありがちな設定。SQUIPはSFにしたってかなり突飛で、物語として受け入れられるのか?と不安になる設定に見える。マウンテンデューの話等90年代のカルチャーがキーポイントになっている(今回のSeirenの上演だと、おそらくかなり端折ったのかな?と想像するが、開幕前にレトロゲームっぽい曲が流れるのもその一環かな)。ステレオイプで荒唐無稽でレトロな描写なのに、「苦悩」の感覚が生々しい。若者が感じる苦悩。恋や親との関係や承認欲求。いつの時代の若者も抱えている苦悩が、とにかく生々しいのが印象的。ここまで設定がぶっ飛んでると、生々しさとは無縁になりそうなものだけれど。どこか「等身大」という言葉さえふさわしいような気がする。
SQUIPが何のメタファーなのか?というのが途中から気になる(ちなみに"Super Quantum Unit Intel Processor"の略らしい)。脳内の全能なる(マトリックスに出演している時の)キアヌ・リーブスが、ジェレミーの行動を変える指示をすることで、全能感を掴んでくる。おそく「ドラック」がその答えの一つなのだろうけれど。それにしても「スクルーカースト最下位の男が、ドラックをキメたからって一軍になるのか?」って疑問が頭の中を巡る。ラスト、どこか映画「ハイスクール・ミュージカル」(2006年)のダーバス先生を思わせる演劇の先生が、しかし相当にイカれた解釈の「真夏の夜の夢」を生徒たちに演じさせながら展開されるやり取りが、SQUIPは「SNS」のメタファーとも取れる話が見え隠れしたりして。
結局最後まで観た感覚だと、SQUIPは特定の何か特定のものを指示している訳ではないような気がしてくる。不安を引き受けてくれるものの象徴としてのSQUIP。原作の小説を読んでみたくなるが(どうやら日本語未翻訳だが)、あまりにも突拍子もなくて物語の設定としては異物として排除されてしまいそうなのに(・・・要は一見ツマラナイ設定なのに)、その設定が若者の感覚の「生々しさ」に繋がるのが何とも見ていて不思議。キツネに化かされたような、でも二人の抱えているモノの重さがのしかかってくるような、そんな不思議な感覚が付きまとい続ける作品だった。
Joe Iconisの音楽がいい。Amazon Primeにブロードウエイ版のサントラがあったので、帰りしな早速聴く。90年代レトロゲームっぽいテイストが各所に織り込まれているのが良いのと。特に二幕の曲、"Michael in the Bathroom"が最高。一軍のパーティに紛れ込んだマイケルはQUIPに支配されたジェレミーに冷たい態度を取られ。パーティで行く場所がなくてトイレにこもって歌う歌。切なくて切なすぎて、でも曲が良くて、涙出てきた。
Seiren Musical Projectは3度目の観劇。相変わらずいい勘所のミュージカルを持ってきてくれて嬉しい。