【観劇レポート】キルハトッテ「ながいみじか〜い」
【ネタバレ分離】 キルハトッテ「ながいみじか〜い」の観劇メモです。
もくじ
初回投稿:2025年10月10日 17時23分
最終更新:2025年10月10日 17時27分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | キルハトッテ |
回 | キルハトッテvol.5.5 |
題 | ながいみじか〜い |
脚本 | 山本真生【キルハトッテ】 |
演出 | 山本真生【キルハトッテ】 |
日時場所 | 2025/10/09(木)~2025/10/12(日) 王子スタジオ1(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇作家・演出家の山本真生と俳優の吉沢菜央によって構成される団体。
『あるかもしれない"きっと"を切って貼ってコラージュする』をキャッチコピーに、今を生きる人々の感覚を、思いもよらないフッと笑ってしまうような身近なモチーフや奇妙な設定に繋げ、複数のそれらをコラージュする作品が特徴。
2022年4月、王子小劇場の主催する演劇祭、佐藤佐吉演劇祭2022の関連企画である旗揚げ3年以内の団体を集めたショーケース公演「見本市」にて旗揚げ。
王子小劇場で年間上演されたすべての公演を対象とした賞、
佐藤佐吉賞2022にて優秀演出賞、助演俳優賞受賞。佐藤佐吉演劇祭2024、
豊岡演劇祭2024フリンジショーケース選出。
過去の観劇
- 2025年05月23日 キルハトッテ「チョコレイト」
- 2024年03月15日 キルハトッテ 「そろそろダンス。」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
過ぎていくなが〜い時間をみじかく、
一瞬のみじかい瞬間をなが〜く描く、キルハトッテの短編集。『Job』
出演:吉沢菜央とあるアルバイトの面接にやってきた私は、
面接官に今までのアルバイト経験を語る。
「私、至高の“good job”を探しに来たんです」『ちょとケーキ』
出演:村上桜佳
村田天翔
吉沢菜央あなたが買ってきてくれたケーキ。
食べられなくて腐ってしまったケーキ。
いつまでも残しておいたら、成長してあなたそっくりになっていたケーキ。
あなたには話せないこと、あなたには話せるのはどうしてだろうね?『ダックスフンド』
出演:川合凜
吉沢菜央「ジョンをアコーディオンにしたいんだ」
彼女の腕の中には死んだばかりの飼い犬、ジョン。
友人からの相談を受けて、私はジョンをどのように弔うのかを考える。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年10月10日 14時00分〜 |
上演時間 | 105分(途中休憩なし) |
価格 | 3000円 全席自由 |
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
キルハトッテ「ながいみじか〜い」
劇団3度目。注目している団体の短・中編3本のオムニバス公演。三本とも面白い。これまでの2作とは異なり1本を少ない役者さんで描くので、役者の魅力もモロに出る形で発見がある。山本真生の脚本を何作か観てやっと言語か出来た気がするのだけれど、、、、日常生活のほんのちょっとした出来事を不条理劇の展開に持っていって、そこに存在するとっても小さな感情を鮮明に浮き上がらせるような感覚。とても自然な言葉の選び、言葉運びの中、奇妙な設定展開の物語なのに、妙に切なくて甘酸っぱい記憶が蘇る感覚がとても好き。
以下各作品のメモ。
「job」
就職の面接で面接を受ける女性が…面接官の自分のぶっ飛んだ職歴を語るコメディ一人芝居。基本コメディだと思ったので、すごく意味深な話という訳ではなかったけれど面白い。他の二作にも出演している劇団員の吉沢菜央の魅力全開。
「ちょっとケーキ」
彼氏がくれたお祝いのケーキを食べ忘れた女。冷蔵庫で腐らせたら、怒ったのか彼氏が出て行った。戻ってきたと思ったら彼氏じゃなくて(擬人化した)ケーキ。そしてなぜか季節外れのサンタクロースも。ケーキを食べようと思っても、とにかく気持ち悪くなって何故か食べれない。サンタクロースは袋の中から「女がそれまでの人生で、受け入れたくても上手く受け入れられなかったもの」を取り出す。サンタクロース自身も、幼いころケーキの上に乗っていて、妹と取り合った砂糖でできたサンタクロースだった。期せずして、過去の痛い思い出と対峙することになった女の話。
3人芝居。感覚的にとてもよく理解できる「痛さ」を、上手いこと物語にすくい上げたなぁという事に面食らう。基本はコミカルな物語なのだが、なんかものすごく痛いものをさらりと目の前で広げられた感覚がして、観ている方はむしろ清々しささえある展開だった。多分この作品、高校生が演じる高校演劇の作品としても最適だと思う。
「ダックスフンド」
吹奏楽部の友達が練習に来ない。どうやら飼っていたダックスフンドが死んだらしい。そのお葬式を執り行う二人。どんな葬式がふさわしいのかを考えていくうちに、自分自身の「死」に向き合う二人のお話。
2人芝居。設定は中学生かはたまた高校生か、明確に語られていた場所は無かった気がするがどちらの解釈でもよい気がする。犬の葬式、何をしたらよいのかを考えていくと、どうしてもコミカルな展開に。人間じゃないけど身近なものの、あるいは友達のそれの「死」を通して自分の死に気が付く瞬間の感情の変化みたいなものを舞台にすくい取った感覚。…って書くと小難しい芝居のように聞こえてしまうかもしれないけれど、ミラーLEDも回し寿司も食いながら、自分が死んだときの葬式を夢想するまだ学生で幼い二人。あー死を表現するとき、こんな方法もあるよなぁと、こちらも脚本の上手さに感心。川合凜と吉沢菜央の演技が対照的なのがまたまた良い。多分この作品も、高校演劇の題材としてもとても良いと思う。