【観劇レポート】家で出来る演劇「インディゴは水に溶けない」
【ネタバレ分離】 家で出来る演劇「インディゴは水に溶けない」の観劇メモです。
もくじ
初回投稿:2025年10月11日 22時15分
最終更新:2025年10月11日 22時15分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 家で出来る演劇 |
回 | #家で出来る演劇 from 源氏物語 六條院 |
題 | インディゴは水に溶けない |
脚本 | 久保磨介 |
演出 | 久保磨介 |
日時場所 | 2025/10/09(木)~2025/10/13(月) スペースあや(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
家にいざるを得ない状況を逆手にとって、 #家で出来る演劇 を探してみる、そこから拡張した活動です。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
#家で出来る演劇 、5回目の公演です。
2020年春、コロナ禍での立ち上げ以降、オンライン・古民家・カフェを借景とするギャラリー・お寺、公園と、「家」(=劇場ではない、日常に紐づいた場所)での活動・公演を行ってきました。
5回目にして、ついに「家」での演劇上演に至りました。住居としての家。やっと字面通りの名前と、活動が一致しました。
ただ、今回は少しいつもと毛色が違います。今までは「その場所」が持っている日常や歴史など、その場所固有のものを取り扱ってきましたが、今回は先に取り扱いたい「家」がフィクションの中に決まっていました。
それが、「源氏物語」に登場する光源氏の大邸宅「六條院」。偶然手に取った本で改めて源氏物語をたどった時、この屋敷に住まう4人の女性たちのキャラクター、生き様、それぞれを象徴するエピソードにすっかり魅了されました。この女性たちを令和にお呼びしたら、どんなふうに生きるのだろう。それを見るために、今回「家」自体を舞台装置としてお借りすることにしました。
とはいえ、源氏物語をやるわけではありません。光源氏は出てこないし、十二単も着ません。あくまで「私たちの物語」として、平安の世界からエッセンスをいただいて、作品を上演する所存です。
ちなみに、今回が「#家で出来る演劇」の一旦の区切りとなります。次にいつ上演できるかはわかりません。私が作ってきた世界の集大成をお見せできるよう、尽力いたします。企画・ディレクター 日野あかり
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年10月10日 19時30分〜 |
上演時間 | 80分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席自由 |
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
家で出来る演劇「インディゴは水に溶けない」
画廊「光源」。オーナーの指示を受けつつ働くプロデューサーの咲、雑務担当の陽子、アーティストの紀子、同じくアーティストの明巳。アートコレクターで何かと世話役の信太朗。オーナーの気まぐれで四季の画廊展を開くことになった。画廊を巡る五人と、実際に登場をしないがいつも五人の中心にいる画廊オーナーの、四季をめぐる濃い人間模様のお話。
日本のラジオで何度か拝見した日野あかり主宰の団体。団体初見だが今公演で一旦活動に区切りをつけるとのこと。毎公演ごとに作品を選んでいるユニットのようで今回は以前大好きだった劇団「埋れ木」で脚本演出をしていた久保磨介の作品。源氏物語を下敷きにしている…らしいが、高校の授業で習った以上の知識がないのでその辺はおぼろげにしか分からないものの、濃厚な人間ドラマ、しかもそこにいない人の面影が強く投影されるドラマ。
公演場所は普段は劇場ではなく、住居の中で使われなくなった割と広めのスペース、とのこと。6畳×2=12~3畳ほど?の和室。客は和室全体を見渡す窓側の「広縁」のようなスペースで観劇するスタイル。舞台の奥に通路を挟んでダイニングスペース。ダイニングスペースは隙間からしか見えず、物語で登場する食べ物・飲み物を役者たちが演技の中で準備している。劇中、お団子やら紅茶やら羊羹やら人数分のカップラーメンやら。いろいろなものを食べながら展開する物語。
芸術系の若干ステレオタイプな、破天荒で色好きで、でも芸術を見る目はあるオーナー(…を連想はするが実際には一度も登場しない)。そのオーナーと物語に登場する五人…特に女性四人は、言葉になるようで、でも各々も言葉にするのがちょっと難しい感情を、オーナーに対して抱えている。
主役の紀子は、かつてはアーティストだったがオーナーの影響?でプロデューサーになって画廊に勤務。ふたりのアーティストたちに複雑な心境を持ちながら、でもその感情に気が付かずにいる。仕事っぷりをオーナーに褒められると舞い上がってしまうが、それ故に次の仕事が手につかなくなる。他の四人もオーナーに対する何らかの引っかかりみたいなものを中心に生きている様子(ちなみにたぶん男女の仲・・・とはちょっと違う・・・と思うが紀子だけは判断つきにくいところ)。オーナーは全く登場しないので、想像の中で展開するしかないものの、物語ば進めば進むほど、オーナーって何者?という比重が強くなる。物語の帰結は紀子がある種の呪縛?から少し離れる選択をする。他の四人も、それぞれの心の動きが、オーナーとの対比の中で何となく透けて見える。すごく繊細な感覚の心が描かれていた。
源氏物語だと、オーナーが光源氏なのだろうか…。私には全く知識がないので、その辺は突き詰めるのやめておく。
役者さん。明巳役の江花明里が印象に残った。劇中、自分のアート作品のコンセプトについて他の四人に説明するシーンがあるのだが、全くコミュニケーションが成り立たない芸術家の感性の表現がとても説得力があった。「水」って言われてもなんだか全く分からないのだが、まあこの人は常人には分からない何かを持っているんだろうなという、アーティストに対して感じる感覚が印象的。