【観劇レポート】劇団三日月座「出発の号砲、穴の向こう」
【ネタバレ分離】 劇団三日月座「出発の号砲、穴の向こう」の観劇メモです。

もくじ
初回投稿:2025年11月21日 10時25分
最終更新:2025年11月21日 10時31分
公演前情報
公演・観劇データ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 団体名 | 劇団三日月座 |
| 回 | 劇団三日月座2025年度秋公演 |
| 題 | 出発の号砲、穴の向こう |
| 脚本 | 小椙優真 |
| 演出 | 小椙優真 |
| 日時場所 | 2025/11/15(土)~2025/11/22(土) 横浜国立大学 第一食堂下 共用室3(神奈川県) |
団体の紹介
横浜国立大学の演劇研究会です。
劇団ツイッターにはこんな紹介があります。
横国唯一の公認演劇サークル
過去の観劇
- 2024年11月23日 劇団三日月座「略式:ハワイ」
- 2023年11月22日 劇団三日月座「発光体」
- 2022年10月23日 劇団三日月座「あの部屋が燃えろ」
- 2021年11月21日 劇団三日月座「天邪鬼」
事前に分かるストーリーは?
ストーリー記載は見つかりませんでした。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
| 項目 | データ |
|---|---|
| 観劇日時 | 2025年11月20日 19時00分〜 |
| 上演時間 | 100分(途中休憩なし) |
| キャスト | Aキャスト |
| 価格 | カンパ制 全席自由 |
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
劇団三日月座「出発の号砲、穴の向こう」
ありきたりな日常を送っているようで、どこか引っかかる行動がある結婚した夫婦二人。行きつけのカフェを営んでいるマスター。その彼女は妻の幼馴染で。ゆっくりと展開する日常。でも、展開するゆったりとした会話の中のいたるところに、ほころびそうな部分が見て取れる中。夫婦の妻が傷害事件を起こす。それは過去、母親をなくした時のトラウマに起因した行動だった。二人の夫婦の、語られない氷山の下の部分を、静かな会話からあぶりだすような会話劇。
ここ数年の三日月座の秋公演は既存の良作脚本に取り組んでいたが、今回は初めて創作に当たる。未知数なので心配もあったが杞憂。静かな会話劇。作品の世界に観入った観劇だった。
「静かな演劇」とは少し異なるものの会話の展開がものすごくナチュラル。発せられる言葉の選び方も鋭どく、少ない語数の言葉での場面描写が的確になされているのが演劇として心地よい。ちょっとした一言が、その人物の背後の歴史まで感じさせるような語感のある脚本。途中、ヨガ教室でヨガをしながら、幼馴染同士が会話するシーンなども中々に面白い。作品全体のテーマももちろんだけれど、それより先に場面描写や役者の演技力に観入る。とても緻密に練り上げられた作品。
静かに語られるのはどこか「過去の何か」を隠した夫婦。おそらく夫は自殺願望を持っていた過去があり、妻は母の死のきっかけとなった人に似た人相の人物をみかけると発作的に殴りかかるように病んでいる。お互いがお互いを知っていくことで、今後どう生きていくのか、のようなことが問われる。「ドーナツの穴だけ残して食べるにはどうすればいいのか?」という「穴」を、過去から引きずっている心の傷にダブらせて描く。
ラストの展開。会話劇から離れてテーマらしきものを叫ぶ場面は、どこか大和ハウスのCM「かぞくの群像#2」のようだなぁ、ちょっと臭いかなぁと思う。二人が結局離婚するのか、そのまま痛みを抱えて生きていくのか判然としなかったものの(たぶん後者な気がするが)、ドストレートに悩み語りをしても上手く描けない、正に決してとらえることができない「ドーナツの穴」のようなものを、静かな会話劇という反射光を使って強く照らし出したような演劇だった。
自然な夫婦の会話をしていた、野仲優那と櫻井喬仁が好演で印象に残る。







































