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【観劇レポ】第78回 千葉県高等学校演劇研究中央発表会(高校演劇 千葉県 県大会 2025年)

#高校演劇

第78回 千葉県高等学校演劇研究中央発表会の感想です。

初回投稿:2025年12月01日 10時25分
最終更新:2025年12月01日 10時25分

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
名称第78回 千葉県高等学校演劇研究中央発表会
日程2025年11月28日(金)29日(土)30日(日)
会場千葉県教育会館 大ホール
(千葉県)

上演演目(観劇したもの)

上演順学校名タイトル日時
1県立国府台高等学校わが星作:柴 幸男、脚色:鴻陵劇団11/28 12:30-
2県立佐原高等学校ケチャップ・オブ・ザ・デッド作:飛塚周逗子開成高校演劇部11/28 13:50-
3木更津総合高等学校エール!!作:木更津総合高校演劇部 〇11/28 15:10-
4県立船橋高等学校異議あり!作:真坂 麻紀子 〇11/28 16:30-
5千葉経済大学附属高等学校待ちの風景作:山崎公博11/29 12:00-
6県立松戸高等学校Happy Days作:阿部 順 〇11/29 13:20-
7専修大学松戸高等学校げぬ作:なみかわ ばんり 〇11/29 14:40-
8県立東葛飾高等学校は。はりつけ、笑。作:竹内 耀哉 〇11/29 16:00-
9麗澤高等学校分岐堂 〜人生の答え合わせ〜作:大島集11/29 17:20-
10県立千葉東高等学校教室の怪人作:白石 准也/シェレン イシザカ 〇11/30 12:00-
11県立長生高等学校君とともに作:長生高校演劇部 〇11/30 13:20-
12八千代松陰高等学校少年開拓団作:石渡 由馬 〇11/30 14:40-
13市川高等学校団地くん作:山田 一彰 〇11/30 16:00-

〇 創作

満足度の記載について

私自身の満足度を、個々の演目ごとに記載します。 「CoRich観てきた」に投稿している個人的な満足度と同じ尺度で表現しますが、大会なので順位が付くため、1点きざみの5点満点では表現できないので、小数点まで細かく書いてます。いつもの尺度との関係は四捨五入を意識しています。

感想(ネタバレあり)

上演順1.県立国府台高等学校「わが星」

作:柴 幸男、脚色:鴻陵劇団

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

この作品は、地球の一生と人の人生を重ねて、 日常の中にある小さな奇跡を感じてもらいたいと思って上演します。 また、リズムのある会話の中で、限られた時間をどう生きるか、そして人と人との繋がりを表現します。

感想

実は作品初見。「ままごと」の柴幸男の作品で、とても評判の良い作品なのは知っていて…これまで映像見る機会は何度もあったのだけれど、いつか実演に当たるだろうと思って意図的に見ないできた。今回ついに当たる…満を持しての観劇だったけれど。

…んー困った。物語が全然頭に入ってこない。スピーカーに近い席に座ったのが悪かったのか、全編通して流れている時報の音…正時を示す4秒前からの「ピッ・ピッ・ピッ・ポー」…が大きすぎる。時報の音が気になって気になって気になって、その音に頭を委ねていたら頭が疲労しきってしまった。話が頭に入ってこなかった。

終演後知り合いに聞いたところによると、ままごとの本家バージョンでも時報の音は常に鳴ってるらしい…のと、今ちょっとだけ映像版を確認してみたころ背後に時報の音がしている。要は上演は作者の意図通りなの創りなのだけれど…。セリフ音量や声の通りも含めた音のバランスの問題だったのかなぁ。「ピッ・ピッ・ピッ・ポー」時報がとにかく頭の中ループしていて、セリフもそのテンポに合わせて話すものだから、感情とか全然掴めずに、辛い時間だった。

やっと映像の「わが星」見れる。比較の意味でも、ついにちゃんと見てみようと思う。

満足度

(3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順2.県立佐原高等学校「ケチャップ・オブ・ザ・デッド」

作:飛塚周 逗子開成高校演劇部

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

廃墟でホラー映画を撮影していた3人の大学生の前に、本物のゾンビが現れる。 恐怖と興奮の中で撮影を続ける。 しかし 「演出」と「現実」の境界が次第に崩れ、やがて一線を越える。 血の正体はケチャップか、それとも・・・。
狂気と創作が交錯する、命懸けのフィルム・ホラー。

感想

残念ながら上演中止とのこと。久々の「ケチャップ・オブ・ザ・デッド」楽しみにしていたのだが…無念。

上演順3.木更津総合高等学校「エール!!」

作:木更津総合高校演劇部 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

汗も、涙も、全部“がんばれ”に変えて。
限界の先に響く、 私たちのエール!!

感想

上級生が引退して一人になってしまった応援部と、吹奏楽部と、野球部でベンチ入りできなかった丸坊主の選手とエースのピッチャー。彼らが心を合わせて、野球部の応援をするまでを描いた作品。どこか高校演劇の名作「アルプススタンドのはしの方」だったり、2023年の大分豊府高等学校「エールの時間」を連想する。「応援する」ことをテーマにした青春もの。

「一人になった応援部」とか、パネルを上下走らす事で転換とか、笛とか楽器とか、とてもいい要素が物語に織り込まれているけれど…でも物語がやっぱり短絡的だよなぁ。人はそんなに簡単に反省したりしないし、簡単に謝ったりしない。出来ないことをすることに葛藤があるのだけれど、葛藤が見せかけになってしまっていた。丸坊主の野球部の子がとてもいい演技、いい味出していた。終演後のインタビューで、役作りのためにあえて丸刈りにしたらしい。すごい。

満足度

(3.6/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順4.県立船橋高等学校「異議あり!」

作:真坂 麻紀子 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

船高新聞部の村瀬良太は、隣家の島津さんから100万円を騙し取り、さらに島津家に放火した罪で裁判にかけられた。 弁護士・ 不破蓮司と検察官・ 雨宮薫は法廷で舌鋒鋭く対決する。 果たして村瀬は無罪か有罪か。 判決を下すのは、 裁判長、 あなたです!

感想

事前ストーリーの通りの裁判モノ。客席側を裁判長に見立てて、裁判の様子を展開する作品。荒削りでトツトツとしてる面も多いけど、とても面白かった。

最後に観客に投票させる演劇は、小劇場含めここ5年くらい流行ってる感覚。私も何作か観たことがあるが(例えばこれこれ)、高校演劇であたるのは初めて。しかも大会でやる…そう来たかという感覚。QRコードを表示してGoogle Formで投票。なかなかにスムーズで面白い。

裁判劇の内容自体は、ゲームの「逆転裁判」とかを思ったり。それ故にテーマ性みたいなものはあまり感じなかったけれど、こ難しい事より楽しめる演劇として創られているのがとても好感。

「スマホの電源入れてヨシ」はもう少し明確に観客に伝えた方がいいかも。かつ、スマホが起動するまで少し待つのは必要(この上演ではしっかり会話で繋いで待っていた)。投票結果もプロジェクター投影して欲しいなぁ。投票数とその割合を知って納得した上で、エンディングの演技を観たかった(他の投票をする演劇では結果発表があった)。…実は観客に投票はさせていても、結果に関わらず「無罪」として必ず演技を進める段取りだったりして(それでも全然問題ないけれど)。劇の内容的に投票結果は「無罪」に振れる気がするしね。

ラスト、高校演劇の大会でカーテンコールいい。…それでも尚も時間余ってたので、もう一方のエンディングがあるなら「もし有罪ならぁあ?」的なシーンをサービスして上演しても良かったかも。バルスは全世代笑える鉄板ネタだよな(審査員もね)。検事役の子のアルマーニのスーツ(なの?)の立ち姿がとても綺麗で印象的。

満足度

(4.3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順5.千葉経済大学附属高等学校「待ちの風景」

作:山崎公博

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

サミュエルベケットの「ゴドーを待ちながら」の世界で、 ただ二人が来ることを待ち続ける幼い姉弟。 ただ待つという永遠にも感じる切なさを、淡々と描き舞台を創りました。
美しくも悲しい待ちの風景の先に、二人への救いがありますように。 ご観劇くださったみなさまに、 幸せの祈りを込めてー。

感想

ベケット「ゴドーを待ちながら」を下敷きに、結果的には既に何らかの理由で両親を失った二人が、来るはずもない両親を待つ話。

既成本。冒頭「ゴドーを待ちながら」からの引用があるが、物語は哲学的な要素のある不条理劇という訳ではなく、純粋に両親のいない二人の会話劇。途中「ままごと」として劇中劇らしきものが挟まれて、母を演じたり娘を演じたりする。この二人にとっての「想像の難しさ」みたいなものも描かれる。いつ頃書かれた脚本だろう…というのが途中から気になる。確かな情報を調べきれなかったけれど、1997年の上演記録は見つかるので割と古めな脚本。へえこんな脚本あるんだなぁ、というのがまず感想としてあるのと。

テンポが遅いのは意図した演出だろうけど、ちょっと遅すぎる感覚。終演後の幕間インタビューで、演じ分けが大変だって言ってたけど、もっとドラスティックに緩急の差つけて大会とは言いえど尺は思い切って縮めても良い気がする。演出が変わると大きく印象が変わる脚本かなぁ。元々大会想定の脚本じゃなくて、30分くらいの脚本かも、とか思った。舞台セットがとてもいい。特にベンチ後ろの木が素晴らしい。

満足度

(4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順6.県立松戸高等学校「Happy Days」

作:阿部 順 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

私たちは、戦争が終わると、 平和になると信じていました。 だから...
•本作品は2021年度上演 「私のシェイクスピア」より一部引用しています。
・演劇部室兼稽古場のパネルは旧東金高等女学校西洋作法室をイメージしています。

感想

祖母が残した太平洋戦争時代を書いた日記「Happy Days」を読んでいたら、タイムスリップして高校時代の祖母に成り代わって生きることになった彩香。真珠湾攻撃(らしい)奇襲の直前。奇襲を前に日本政府は日々の生活を少し緩めた。その時期に、高校時代の祖母は演劇部でシェイクスピアを上演しようとしていた。その時代の苦悩と、100年後の演劇部でその軌跡を、戦前の悲壮感というよりむしろ明るいテイストで描き振り返る話。

千葉県随一の強豪校で、演技や演劇の作り方という点では巧みだなぁと思う。ただ、ここのところ毎年上演を観ていて思う事なのだけれど、阿部順の書く物語にどうにも感情移入が出来ない。…今年も同じで、とても上手い演劇だと思うけれど、特段感情が生まれてこない。理由をいろいろと考えてみるも…祖母の存在の現実味がとても薄いなぁ…という感覚、というのが絞り出せる唯一の言葉。あるいはパロディやらなにやら、いろいろな要素を盛り込み過ぎていているからかなぁと思ったり。

上演直前、客席に人が入りきらず空席を詰めるように指示があったくらい客が集まっていたし、観客席は特に高校生が結構湧いていたのだけれど、どうにも取り残された感が強い作品だった。高校生には刺さるのかなぁ。

満足度

(3.8/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順7.専修大学松戸高等学校「げぬ」

作:なみかわ ばんり 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

月も、山も、 蛙も、 河童をただ見るだけ。 返事はしてくれません。 それでも河童は、彼らを 「トモダチ」 と呼びます。
私の「トモダチ」 は、 本当に私の 「友達」 か。 それでも、周りとは仲良くしたい。 だってその方が、 都合が良いでしょう。
人生初の創作脚本。 仲間と一致団結して0から作り上げた 「げぬ」。 お楽しみください。

感想

物語を書き下すのが難しい。高校生の前に「げぬ」としか言わない突然現れたカッパについて行ったら、鏡の中の世界のようなところに迷い込んでしまって。その中でクラスの友達も先生も、みんなが「げぬ」としか言わない、それをきっかけに、仲違いしたボードゲーム部との仲を修復しようとする話…だろうか。

生徒創作。スパッと割り切れて物語を理解できた訳ではないけれど、表現したいことはなんとな~く理解出来た感覚。ほんわかと雰囲気で理解できたものの、やっぱり分かりにくいなぁとは思う。分かりにくさが良さな気もするので、あけっぴろげに説明するとそれはそれで興覚めなんだろうけれど、とはいえ説明が少なすぎるかもなぁ。鏡写しで考えると「げぬ」は「ぬげ」という事らしい。作り出した雰囲気間はとても良いのだけれど、今一つ理解まではできないなぁとおもった。

演技のレベルがとても高い。その中でカッパの存在感が際立つ。面白い台だなぁと思っていたら、椅子になったりオセロになったりが良い。教室の向きが、鏡写しの世界では逆向きになるのが地味に好き。

満足度

(4.1/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順8.県立東葛飾高等学校「は。はりつけ、笑。」

作:竹内 耀哉 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

恥の多い十七年でした。
ジコチューで、 汚くて、 臭くて、 ウジウジして、それをずっと煮込み続けて残ったものを見せる劇です。 どうか、こんなことで悩む人がいることを知っていただきたいです。

感想

クラスに馴染めない男子と、文化祭に展示する自らの絵が気に入らない転校生。ふたりの悩みの内面語りに焦点をあてつつ、学校生活を描いた作品。

等身大の、そしておそらく現実の、その場にある悩みを表現しているんだろうなぁというのは途中で分かっては来たのだけれど、でもその痛みがヒリヒリし過ぎて、観ている側も痛みを感じる。終演後の幕間討論で主人公・作者がそのようなことを話していたので、観てきた感覚が正しかったか…と答え合わせしてもらったものの。表現を受け取るイチ観客としては、あまり気持ちの良いものではなかった。神奈川県大会でも同じような感想を持った作品があったのだけれど、悩んでいる事を"物語"として"表現"しようとするとき、「私悩んでます」と語り上げてしまうことは最悪手だと思っていて、この物語も同じだなぁという感覚。ウンベルト・エコーの「理論化できないことは物語らなければならない。」じゃないけれど、「物語る」事で見えてくるパワーみたいなものをもう少し信じて欲しいなぁなんて事を思う。

満足度

(3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順9.麗澤高等学校「分岐堂 〜人生の答え合わせ〜」

作:大島集

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

「もし、あの時違う選択をしていたら。」人生にはそう思ってしまう局面が誰にでも存在し、その誰しもが人生の答えを追い求め続けている。
この劇を観た人が、 選んだ人生も選ばなかった人生も幸せだったと思えるように、この作品を作りました。

感想

レトロな喫茶店みたいな場所「分岐堂」。そこに来ることができると、自分の人生一年分と引き換えに、過去で選択しなかった人生がどのようなものか見ることができる。そこを訪れた二人…若いのにハゲているのに悩む男と、自分がモラハラ男だと気が付いていない男…と、店員一人の過去の分岐を見る物語。

生徒創作。とても面白かった。物語としてはウエルメイドというか比較的ありがちな設定を3つ繋げた感覚はあるものの、全体の構成がしっかりしているのと各処に張り巡らせた伏線的なものが地味にしっかりと回収されていて気持ちいい。いいもの観たな~という感覚が強かった。小説がヒットして映画化・舞台化された「コーヒーが冷めないうちに」に着想を得てるかもしれないと感じる。

以下雑多なメモ。選択できない人生をみてみたいってのは、こうやって演劇として「物語を観たい」と感じる根源的な欲求なので共感点が大きいのかなと思ったり。しっとりした分岐堂のシーンと対照的に、カラオケボックスでミラーボールが回ったりもして緩急のバランスよくいろんな要素出てきて舞台として楽しい。「自分の人生一年分と引き換えに」という事は、引き換えたらその場で死んでしまう人がいそうだけれどな…という当初から思った疑問も、3人目のお母さんの話である程度説明されてるのも良し。3人目の店員さん「あれ、この子はサインしないんだー。あの部分省略しちゃうのか」とか思ったのが、気持ちよく伏線回収される。店長、男か女かどっち設定なのか気になってたのも、ラストでしっかりツッコミ入れてて嬉し。シンプルだけれど舞台セットのセンスが良く、全てを描いていないのに分岐堂がどんな店か想像できる。赤い布で椅子を覆うのが決め手かな。

満足度

(4.4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順10.県立千葉東高等学校「教室の怪人」

作:白石 准也/シェレン イシザカ 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

かつてその教室には怪人がいた。

感想

オペラ(座)の怪人」を文化祭のクラス演劇でやる。各配役の人々の想いや悩みと…ファントム役をする子の隠している事…をベースに語る物語。

意欲的な挑戦作だと思った。アンドルー・ロイド・ウエーバー(以下、ALW)作曲のミュージカル"The Phantom of the Opera "(「オペラ(座)の怪人」)のミュージカルの曲を、高校演劇で歌い語るのは中々に凄い。…「オペラ(座)の怪人を大会の舞台でやってみたい!」って誰かが言ったのを、そのまま突っ走って舞台に乗っけた感覚…に見える(勝手な想像だけど)。かなり粗削りな部分は目立つけれど、なかなか思い切った楽しいことするな、という感覚で観ていた。「オペラの怪人」…"座"が無いタイトルは、ガストン・ルールー原作の最初の映画版を指してますよ…という事なのかな。いろいろ大人の事情がありそうなので触れないでおくがw、ALWの歌の歌詞は全編英語にしていたのは良かった。(劇団四季版の日本語の歌詞も選択肢として取りえたかもしれない…とは思うが…ゴニョゴニョw)

ファントム役の子の悩み。同性愛指向であることを隠すことが、ファントムが仮面で隠すものにすり替わっている…というテーマが見え隠れする。説明を意図的に極力省いているので解釈にあまり自信がなかったけれど、終演後に知り合い二人ともが同じ結論に落ち着いていたので正しいかな。…「オペラ座の怪人」を引用してテーマを語る意味…というガチンコなメタファー勝負で解釈すると、正直かなり無理があるなぁと思う。しかもALW版の曲を使っているのでこの版をベースに観ると、ALWはその後に「ラブ・ネバー・ダイ」っていう余計な作品も作ってるのでwwなかなか解釈に苦しむところ。ファントムは未練たらたらにクリスティーヌに迫るのがALWの結論だしなぁ(笑)。

まあでも、"Angel of Music"を高校演劇の舞台で歌ってみたいわ、的なのはよく分かる。気持ち良い作品だった。幕間討論で、オペラ座の怪人 25周年記念公演 in ロンドンの話をしていてびっくり。やっぱり映像化して稼ぐって大事だよなぁみたいな変な事を思ったり。

満足度

(4/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順11.県立長生高等学校「君とともに」

作:長生高校演劇部 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

己の決めた道を信じて突き進む、 「信ずる心」をテーマにした作品です。それぞれにとっての「君」とは――その存在を想像しながら、物語に込められた思いをぜひ感じてください。

感想

正直なところ、作品の内容がよく分からなかった。何かの史実とか、あるいは古典的な伝説話に根差しているのかなぁ…とも思ったけれど、知識がないのでよく分からなかったのかもしれない。

幕間討論、準備時間が取れず大変だったようだけれど。「高校演劇は普通の演劇とは違うと思う」との事。一部意見に賛同するものの、じゃあ「高校演劇は、普通の演劇とどう違うのか?」という事を突っ込んで考えられていないように思う。高校生の青春。思う存分好きなことをやればいいと思う。でも観客…特に県大会のような舞台には様々な観客がいる。その視点に立った時、高校演劇と普通の演劇とは何が同じで何が違うのか。もう少し細かく細分化して解像度を上げて考えてもらえると嬉しいなぁ、と思い。

満足度

(3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順12.八千代松陰高等学校「少年開拓団」

作:石渡 由馬 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

「満洲に骨を埋めよう!」 満開拓青少年義勇軍として広い土地を手に入れるはずだった少年たちは、戦争が終わって行くべき場所を失い、四街道の陸軍学校跡地へ来た。 国に青春を捧げた少年少女、「これは正しい戦争だ」と教えた教師。 信じたものに裏切られ、進むべき道を見失った中で、何と出会い何を見つけられるだろうか?

感想

生徒創作。不思議な演劇だった。玉音放送から物語が始まるので1945年の敗戦直後の物語だというのは分かる。でも「少年開拓団」がどういうものなのか、この演劇を観終わってもよく分からない。劇中に殆んど説明がない。なのでストーリーを書くのが難しい。戦後すぐにそういうものがあったのだろう…というかなり浅い理解くらいしか、作品だけを観ていても分からない。

その中で描かれているのは、大人へ不満と、芝居を作る事への情熱。…どちらも、「少年開拓団」の設定をあまり必要としないでも語ることができる。なので、設定と語っている事のちぐはぐさを感じるものの。一方で「少年開拓団」というものをかなり掘り下げて調べたうえで舞台に乗せているのも感じ取れる。むしろ演劇として作品を作り上げることでその当時の人々の生活とか考え方を理解する、ロールプレイのような演劇に見えてくる。史実として、実際にお祭りで舞台作品を上演した記録があるのかな…なんてことを観ながら考えてしまう。

終演後の幕間討論。部員全員で「少年開拓団」を調べて理解したというコメントがあって、作中で感じたことは割と的を射ていたのかと納得。感じたリアリティの源泉はそこにあった。一方、どの程度調べてどの程度再現したのか、作品だけを観ていると分からないので、その点が表現としてはちょっと残念に思う。

満足度

(4.3/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

上演順13.市川高等学校「団地くん」

作:山田 一彰 〇

あらすじ(パンフレット記載の上演意図を引用)

小さい頃に見えていたお友達が、 今は見えなくなりました。 見えなくなって久しく経って、 見えないことも気にしなくなって。 私たちは、随分とたくさんの忘却をしながら暮らしているのかもしれません。 そんな忘却たちに抗うお話。市川学園が送る、「ハイパーノスタルジックエンターテイメント!!!」 いざ!開演!!

感想

駅前の好立地の団地を取り壊す。住んでいる"クソババア"と住民や近隣の学校の生徒たちが反対運動。しかも取り壊してタワマン化を進めているのはクソババアの娘だった。子どもにだけ見える団地の妖精…と言っても団地の壁に埋め込まれている壁の変な男だけれど…と会話しながら、何とか団地の取り壊しを止めようとする人々…を、ギャグ漫画的というのかなんというのか、もうスーパーアホにデフォルメた登場人物を通して描く物語。

昨年関東大会で観た「はれ★ぎゃる」が最高で、今年はどうなるんだろう…と思ったが、そのハードルの高さを超えてきた。バチクソに面白かったし、作品に織り込まれているテーマの巧みさに泣いた。これが高校演劇か。最高に最高で最高だった。

もうあの団地の住民と犬との愛らしさというかが堪らない。漫画…何かに似ていると思ったのだけれど、漫画「浦安鉄筋家族」に似てる気がするのは私だけ?(異論は認める)。デフォルメにデフォルメを重ねているので、要はステレオタイプな人が沢山出てくるのだけれど、それぞれのキャラクター掴んでいるのもあってドハマりしていて面白すぎる。

一方、団地が取り壊されてしまう…という、消えてしまうものへの郷愁みたいなのもしっかりと織り込まれているのが良い。中盤まで観て、このままおバカなギャグで押しつぶすのかな…と思ったところで、市長が母親に向かって叫ぶ。あの叫びはギャグでも何でもなくて、ちょっとずつテーマ的なものが侵食してくる…このちょっとずつ、というのが良い。

特に後半の会話の中で「くそばばあ」という言葉が何度も連呼される。くそばばあという人はとてもいい人だけれど、やっぱり古いものだけを守っているどこか保守的なものを示す意味での(悪い意味での)「くそばばあ」に聞こえてくる瞬間があって。デフォルメし切ったからこそ見える風景みたいなのが、くそばばあ、という言葉一つとっても見えてくるのが何とも尊かった。

ラスト、団地くんの哀愁漂う影をホリゾンとに観ながら。やっぱり変わるものは変わってしまうし、でも変えたくないものもある。観客に「ダメー!(あれだけ叫んだのにうろ覚え)」と迫ってくる割には、取り壊すことが悪い事…みたいな短絡的な結論ではなく、もう少し広い視点を迫ってくるのがよい。団地くんはタワマンくんになれるのかなぁ。あるいは別の人がタワマンくんとしてやってくるのかなぁ。芝居の結論は後者よりだったけれど、想像の中で団地くんの未来を考えずにはいられなかった。

満足度

(4.9/5.0点満点)

★★★★★
★★★★★

審査結果

最優秀賞 市川「団地くん」
優秀賞 県立松戸「Happy Days」
以上二校関東大会へ
優秀賞 
八千代松陰「少年開拓団」 サマーフェスへ
專大松戸「げぬ」
県立船橋「異議あり!」

舞台美術賞 八千代松陰
創作脚本賞 專大松戸

情報源はこちら

観劇(実演)#高校演劇