【観劇レポート】ワンツーワークス「パラサイト・パラダイス」
【ネタバレ分離】 ワンツーワークス「パラサイト・パラダイス」の観劇メモです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | ワンツーワークス |
回 | ワンツーワークス#42シリーズ[家族を見つめる]④ |
題 | パラサイト・パラダイス |
脚本 | 古城十忍 |
演出 | 古城十忍 |
日時場所 | 2025/07/23(水)~2025/07/27(日) 新宿シアタートップス(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
『ワンツーワークス』は、古城十忍(こじょう・としのぶ)が主宰する劇団です。
過去の観劇
- 2024年11月14日ワンツーワークス「線引き~死者に囲まれる夜~」
- 2024年07月19日ワンツーワークス「神[GOTT]」
- 2023年11月05日ワンツーワークス「アメリカの怒れる父」
- 2023年06月18日ワンツーワークス 「R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム」(2023年)
- 2023年02月20日ワンツーワークス「アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
2階建ての一軒家に暮らす「高見家」は、サラリーマンの父、専業主婦の母、会社員の娘、大学生の息子の4人家族。一見どこにでもありそうなフツーの家族だが、最近、少し様子がおかしい。父も母も口を開けば喧嘩腰の愚痴ばかり。娘はいつも家を空け、息子はほとんど家から出ない。なのに、隣に住むオジサンが我が物顔でしょっちゅう出入りする。
そんなある日、母の母、父の父、それぞれが立て続けにトンデモナイことを一方的に宣言する。もともと連帯感があるのかないのか、あやふやな家族ではあったが、その宣言の結果、窮屈極まりない不穏なムードだけが家の中に充満していく。かくして家族の大黒柱を自認する父は一念発起、家庭の平穏を取り戻すべく、苦肉の策に打って出る……。好評シリーズ[家族を見つめる]の第4弾は、全5日間7ステージ限りです。ぜひ、お見逃しなく。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2025年07月25日 19時00分〜 |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
価格 | 5500円 全席指定 初日割 |
満足度
(3/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
娘・息子の子育ちの落ち着いた夫婦。娘は仕事を頑張りバリバリのキャリア目指して働いているが、彼氏と同棲すると言って実家に連れてきた。息子は気が付いたら大学を辞めて自宅に引きこもり、家族との会話は電話で済ませながら、毎日パソコン前に何か熱心に取り組んでいる。そんな中、夫婦の妻の母がアキレス腱をけがしたと言って家に転がり込んでくる。夫の父も「グリム童話が言ってるので」とよく分からない例え話を理由に同居することになった。気が付くと足の踏み場もないほどの家でぎゅうぎゅうで暮らす家族。お隣さんも交えた家族の在り様を描く群像劇的作品。
前半50分くらいはこの家族が同居することになった経緯が描かれて、後半は群像劇的にそれぞれの人々の生き様や問題をそれぞれの視点で提示していく。登場人物がガラケーを手にしているので時代設定に意図があるのかと思ったが、後々確認したらどうやら2003年の劇団一跡二跳時代作品の再演らしい。初演の設定をそのままに、という意図だろうと想像する。子供が巣立った後の夫婦の生きがいの問題、「労働すること」という価値観の問題、老いていく親の問題、女性のキャリアの問題、男女の多様性・・・などなど。提示されていく問題自体は、再演する2025年の今でも、その性質はさほど変わっていないように思う。
ただ、世相を切り取ろうとしたのか、どうにも問題の提示が全体的に散発的で散漫。演劇として観ると、ストーリーの根幹の要素が分散し過ぎている。個々のテーマには共感しつつも、なぜこの家に同居することになった家族を描いたのかの必然背をあまり感じない。舞台の設定が、社会問題を描くための方便になってしまっている。なので、気がつくと、物語というより教科書を読んているような感覚になって、イマイチ乗れない芝居だった。
この作品が取り上げる社会の問題自体は、2025年でも変化していないように思う。特に、自立しようとしている息子が、企業で働く、という方法以外の生活のすべを見つけようとしているのは、その後の社会の流れ、インターネットの普及などにより大幅に加速された。なので、ガラケーはスマホにして、2025年の物語として描いても良かったように思った。
劇中夫婦を演じる奥村洋治、関谷美香子が、夫婦げんかの口論をしている途中で、夫婦の男女入れ替わってしまうシーンが面白い。最後には、夫を演じる奥村洋治がスカートを履くか、みたいな話になる(息子が入ってきて中断するが)。夫婦喧嘩、どちらの言い分もどっちもどっち、というのを表している表現としてはとても面白いのだが。・・・やっぱりこの描写の背後にあるテーマだけでも一本演劇ができるのでは?と思ってしまうので、全体の中でも「何故ここだけこの描写?」という不自然さが残ってしまう。演劇的な表現方法としては面白いだけに、単発ネタ的に使われているのがちょっと残念だった。