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【観劇レポート】ミュージカル「コーラスライン」日本特別公演

#芝居

【ネタバレ分離】 ミュージカル「コーラスライン」日本特別公演の観劇メモです。

初回投稿:2025年09月08日 23時51分
最終更新:2025年09月08日 23時53分

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名ミュージカル
「コーラスライン」日本特別公演
脚本マイケル・ベネット(原案)
ジェームズ・カークウッド(台本)、ニコラス・ダンテ(台本)
演出ニコライ・フォスター
日時場所2025/09/08(月)~2025/09/22(月)
東京建物BrilliaHALL(東京都)

CoRich 公演URL

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

今、あらたな伝説がはじまる! 
新『コーラスライン』、50年の時を経て日本特別来日公演決定!

ニューヨーク市。1975年。
観客のいないブロードウェイの舞台で、17人のパフォーマーが新しいブロードウェイミュージカルの最終オーディションに挑む。
合格するのはたった8人。
『コーラスライン』は、ブロードウェイを革命的に変えたミュージカルの傑作です。マイケル・ベネットは、ダンサーたちとの深夜の録音セッションから得た実際の証言を基に作品を創作。
劇場の知られざる英雄たちの生涯を称え、情熱、打ち砕かれた希望、夢を追うために本当に必要なものを描いた、心に響く物語。

■マイケル・ベネットへの最大のリスペクトを持って創作された新バージョン
この新プロダクションは2021年12月イギリス レスターにあるCurve劇場で初演されました。
ニコライ・フォスターが新演出を手がけ、アダム・クーパーがザック役を演じ、絶賛されました。
エネルギッシュな振付、心に響く「私」の「あなた」の物語。
舞台上のダンサーたちの“人生”が私たちに熱く熱く響くまさに“最強バージョン”!

17の物語 8つのチャンス 唯一無二の感動
SEVENTEEN STORIES. EIGHT CHANCES. ONE SINGULAR SENSATION
これが観たかったんだ!!!

■STORY
物語は、ニューヨーク。舞台の新作ミュージカルのオーディション会場。ステージ上には、1本の白い線が書かれている。その線の前に、最終オーディションに残ったメンバーは17名。最後の課題を渡される。『自分自身について語ってほしい』と。そして、課題を渡すのが、新作ミュージカルの演出家・ザックである。最終オーディションの面々は、多様な人生を歩んできており、誰一人として同じ回答をする者はいない。自分の人生のシェアをするとき、人は最高の主役であり、輝く瞬間を見るのであった。そんなメンバーの中に、過去にザックと恋人関係にあったキャシーも、再び舞台に戻るためにオーディションに挑んでいた。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2025年09月08日
18時30分〜
上演時間125分(途中休憩なし) プレビュー公演
価格S席15500円 全席指定

満足度

★★★★★
★★★★★

(3/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

1975年のミュージカル「コーラスライン」の新演出版。日本では劇団四季がオリジナル演出を何度も公演していて、私自身四季版を4度ほど観ている(最後に観たのは2015年で10年開いている)。マイケル・ダグラス主演で映画化もされていて、こちらは(オリジナルから微妙に変わっているので)不満はあるものの何度も見ている作品。

今回アダム・クーパー主演で、ザック役が舞台に基本登場するらしい、というのを宣伝文句で見かける。…いやいやザック役、舞台に上がっちゃイカンだろ。でも「上がることで表現出来ることがある」とかいう宣伝文句がとにかく気になってしまって…恐る恐る観た。結果、やっぱりザック舞台に上がると変なことになってしまっていた。いやはや。

物語は、ブロードウエイのミュージカルの脇役のダンサーのオーディション風景。演出家ザックはダンサーを選ぶ。…はずなのに「自分の事を語って欲しい」とダンサーたちに要求する。何もない殺風景な舞台。舞台面に引かれた一本の線。そこに横一列並べられたダンサーたちが、何故自分たちは踊るのか、ブロードウエイで成功を夢見るのか、どんな子供時代で、どうしてダンスをはじめ、両親とどんな関係だったのか。それらを赤裸々に語る物語。オリジナル演出では、客席の最後列に机とマイクが設置された席があり、ダンサーを選ぶ演出家役のザックはそこに座り役者たちとやり取りする。2015年に四季版を観た際は、ザックの演出家席のとても近くで観た。客席に演者がいて「舞台そのものが舞台セットになっている」ということがとても印象に残っているのだが。

今回の新演出は、舞台上上手側にザックの机と席が用意されていてかなり長い時間舞台にいる。客席をうろついたり客席に座ってマイクを握って話していることもあるのだが。上下の座席に移動するものだからダンサーたちが客席に語りかける視線が安定しなくてどうにも不自然。特に舞台上の机の席にいる時は、ダンサーたちがみな上手側を向いて演技をする。下手後方にひな壇がり空間を斜めに見ている…的な舞台構成にはなっているけれど、基作品にある「演出家=客席=世界」に向かって自分の事を話すという構図が薄れ、誰に向かって話しているのかが曖昧に見えてしまう事と。

劇団四季のオリジナル版より30分くらい短縮しているが、物語上省いた個所は無かったように思う。なのでセリフのテンポがとても早い。確かに四季のオリジナル版は2時間30分でちょっと間延び感があり、短縮したくなる気持ちは分かる(2015年に観た時は、終演後トイレに駆け込んだ…自由劇場は男性トイレは二階で危うく事故りそうになったことを覚えているが…)。でも舞台の尺を30分縮ませると、どうやったってダンサーたちの「表現することへの苦悩」という感情表現が「薄く」「あっさり」してしまう。特にキャシーのダンス。四季版だともう本当に、生きる事への必死さの伝わるダンスなのだが、どうにも「軽いなぁ」という感覚を否めなかった事と。

照明はじめ様々な演出効果を巧みに加えつつ、前述の通りオリジナル版の間延びしている部分を埋めて、とにかく退屈させないような展開にしているが。やはりダンサーたちが、素に近い舞台に立つことがこの作品のテーマと密接に絡んでいて、各所で展開される照明効果や舞台転換がどうにも基の作品の世界観を削いでいるように感じる。「コーラスライン」にそういうエンタメ感覚は求めていないんだよなぁ…という自分に気が付く。

久々に「One」を聴けて良かったし、家路につくときは「One」を口ずさんでしまうのだけれど。でもやっぱり新演出版はちょっとキツイなぁ…という、事前の予想通りの感想を持つ観劇だった。

舞台#芝居