<観劇レポート>露と枕「帰忘」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 露と枕「帰忘」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 露と枕 |
回 | 露と枕 Vol.7 |
題 | 帰忘 |
脚本 | 井上瑠菜 |
演出 | 井上瑠菜 |
日時場所 | 2022/06/01(水)~2022/06/05(日) 「劇」小劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
早稲田大学演劇研究会を⺟体とし、井上瑠菜を主宰として2018年 4 月に旗揚げ。現在7名で活動中。
「弱いからこそ愛おしい、変わらないから愛おしい」をコンセプトに、優しい悲劇を紡いでいく。
過去の観劇
- 2021年09月16日露と枕「鼬を噛んでくれ」
- 2020年11月19日露と枕 「ビトウィーン・ザ・シーツ」
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ある春のこと。名前のない山の中腹で、交通事故が起きた。
五人の女性が亡くなった。結婚を控えた婚約者がいたということ以外に、彼女らに共通点はない。
そして、彼女らが何故同じ車に乗っていたのか、どこを目指して走っていたのか、知る者はいなかった。
意識不明で救出された、運転手の女を除いて。一年が経ち、五人の婚約者は事故現場に集まる。季節外れの金木犀が咲いていた。
五人は懐古することもなくくだらない会話に花を咲かせていたが、快復した運転手がやってきたことで、事態は一変する。
彼女は事故までの数年間を忘れていた。そして、彼女たちが何故死んだのか、知りたいと言った。季節は春になった。金木犀は思い出したように咲き、散り始めている。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年6月2日 19時00分〜 |
上演時間 | 100分(途中休憩なし) |
価格 | 3500円 全席指定 |
チケット購入方法
劇団のページからのリンクで予約しました。
客層・客席の様子
男女比は5:5くらい。様々な客層がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
露と枕「帰忘」100分休無
スロースタートで80分目くらいまでは何を言いたいのかよく分からず、正直かなりイライラしたものの。最後で突如ストーン落とされた感じ。車椅子の彼女に感情移入出来ないけど、そのバリアが、人と人がどこまでも分かり合えなさの象徴なのかな、と思い。オススメ。 pic.twitter.com/58caRLugRq— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) June 2, 2022
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
私なりの強引なストーリまとめ
6人の女性が相乗りしていた車が、事故を起こした。助かったのは、運転していた1人だけ。6人とも婚約していた。その1年後、事故現場に集まる婚約者の男たちと、生き残った女と、事故現場の近くでカフェを営む女性。徐々に明らかになる女たちの過去。どうやら6人の女は、若い頃にネットの自殺サイトの掲示板で出会った。集団自殺をするはずが、何度も未遂に終わっていた過去を持つ。その日、ドライブに出かけた6人が、自殺を図ろうとしたのかは分からない。男たちは、いろいろ想像しても、自殺も、詐欺も、どうにもしっくりこない。しかし、生き残った車椅子の女の視点でのみ語られる、他の5人の女たちの過去。亡くなってしまった想いと、生き残った者の想いが交錯する物語。
感じた事
スロースタートだった。自然な会話ベースで語られる物語で会話だけで紡いでいくので、ストーリーのような複雑な状況が見えてくるまでにだいぶ時間がかかった。その後、それぞれの結婚詐欺疑惑の話の時間も長く、80分目くらいまでは、ちょっと辛いなぁと思いながら観ていた。ラストの20分。集団自殺サイトの話と、一人だけ生き残った女が語る亡くなった女の像が出てきて、やっとストーンと落とし込まれた感覚。なるほどなぁ、そういうお話なのね。とはいえ、やっぱり全体のバランスはあまり良くないかなぁ、という後味は強い。
いろいろな解釈が成り立ちそうな物語。女6人。自殺サイトで知り合ったものの、6人それぞれが幸せを摑んで、幸せな状況でのドライブ中の事故…だったのかもしない。生き残った女が記憶喪失になって、時が過去に戻った故に、婚約していた彼女たちの人生が、過去の悲劇的な境遇と重なって見えるのかもしれないけれど。
生き残ってしまった女だけが、事故を起こす時点で過去を振り切れなかったのかもなぁ…という解釈も成り立つな、と思う。6人の事を語る女は、ものすごく強くて、断定的で。一方、婚約者の男から語られる女たちは、確かにどこか歪んだり、(美容整形に2000万くらいかけたりと)ビックリするような状況ではあるものの、何かの幸せを摑んでいるように見えて。ひょっとしたら、事故を引き起こしたのは彼女自身なんじゃないか、それ故の事故ではないか…とも思ってしまう。過去の記憶を基に、死んでしまった女たちを断定的に語るのが、どうにも好きになれず、感情移入できなくて、彼女に対する嫌悪感から、そういう物語に捉えれのかもしれない。
いずれにしても、誰が語る「死んでしまった婚約者」も、決して正しい像を結びそうになくて。それは、自殺サイトに出入りしていた過去を、婚約者たちが殆ど知らなかったことに対応しているようにも思えて。車いすに座って、攻撃的に男たちをなじる女が、人と人が理解する事の難しさの象徴のように思えてきたのが、印象的だった。
気になった役者さん。川上献心、何度も拝見している役者さんだけれど、ラストの涙は印象的。福井しゅんや、脚本家としてここ何作か拝見している方なので、へーこんな方なのねー、という感覚で面白かった。