【観劇レポート】KERA・MAP「修道女たち」
もくじ
初回投稿:2018年11月09日 7時00分
最終更新:2025年08月31日 16時29分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | キューブ |
回 | KERA・MAP #008 |
題 | 修道女たち |
脚本 | ケラリーノ・サンドロヴィッチ |
演出 | ケラリーノ・サンドロヴィッチ |
日時場所 | 2018/10/20(土)~2018/11/15(木) 本多劇場(東京都) |
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
宗教とは無縁な私が聖職者の物語を描きたいと欲するのは何故なのだろう。理由はいくつでも挙げられる。
第一に、禁欲的であらねばならぬというのが魅力的。奔放不覊な人間を描くよりずっと面白い。「やっちゃいけないことばかり」というシチュエーションは、コントにもシットコムにももってこいだ。
第二に、宗教的モチーフが、シュールレアリズムやマジックリアリズム、或いは不条理劇と非常に相性がよい。不思議なことがいくら起こっても、「なるほど、神様関係のお話だからな」と思ってもらえる。
時間が無くて二つしか思い浮かばなかったが、かつて神父を登場人物にした舞台をいくつか描いてきた私が、満を持して修道女の世界に挑む。しかも複数だ。修道女の群像劇である。どんなテイストのどんなお話になるかは神のみぞ知る。ご期待ください。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(チラシより)
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
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観劇日時 | 2018年11月08日 19時00分〜 |
上演時間 | 195分(途中休憩を含む 休憩 75-15休-105) |
価格 | 7400円 全席指定 |
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
信仰や信じることについて、考えさせられる。(ネタバレ、ほぼなし)
ストーリーは「国王」に迫害を受けた宗教の修道女たち。迫害の手が迫る中、聖地の村の館で起こる悲喜劇を描いたもの。
作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ・・・彼の作品は何度か観たことがあるが、彼の演出の舞台は、初めて観る。実際の舞台はどんななんだろう、と、他劇団、他演出の作品を観ていて夢想していたが、想像に違わず正統派なストレートプレイ、という印象を受けた。
作品は「信仰」あるいは「信じる」という事に対して、観る人に疑問を投げかけてくる。あるいは信じるが故に「許す」という行為。
信じるということのどこか「滑稽」な部分と、人間が根源的に持つ捨てることができない大切な部分。人間の、愛おしくも狂おしい性について語っている。「信じる」というありふれた人間の性を、「信仰」という中の物語で語っている。
話の主軸となる宗教は、キリスト教に似ていてキリスト教ではない。十字架ではなく、十字架の下にUの字のついた、船の錨のような形をしている。「アーメン」と言い、十字架を切るべきところは「ギッチョター」と言う。最初のうちは、修道女たちが「ギッチョダー」と唱えるたびに、クスクスと笑いが起きていたが、舞台終盤になればそのような感覚は薄らぐ。あたかも、そんな宗教が実在したかのような感覚。宗教という人間が作り出した救世主に対する、どこか救われない側面が、3時間の舞台の時間軸の中で深まっていく。
6人の修道女たちのキャラクターは個性豊かだ。
緒川たまき演じる、ニイニという名前の修道女。鈴木杏演じる、少し知恵の足りない村に住む少女、オーネジーとのやりとりが切ない。オーネジーは、修道女たちと村を出る事になるが、彼女の気持ちの流れが自然と表現されていた。
また、親子で修道女となったソラーニ(伊藤梨沙子)と、アニドーラ(松永玲子)の関係は、この架空の宗教が現実身を得るための過程とともに、丁寧に描かれていた。思い出の詰まったネックレスを暖炉にくめる娘と、火傷を顧みずにそれを取る母親。大火傷を追ったはずの母の顔が、娘の祈りで元に戻る。演劇らしい嘘だが、この流れに妙に納得してしまう。
冒頭、プロジェクションマッピングのような演出で、教会のステンドグラスが再現され、その流れで映画やドラマのように、役者の名前が紹介されたが・・・KERA・ MAPは必ずこのような手法を使うのだろうか。正直なところ、この演出は、かなり余分に思え、げんなりした。犬山イヌコは、誰もが知っている。それを冒頭で、「犬山イヌコ」と字幕を出されても、客は醒めるだけだ。役者は、カーテンコールが始まるまでは、役のままでいて欲しい。演じるって、そういうことのはず。実名を意識する瞬間など、微塵もなくて良いのではないか。そこに金をかけるなら、役者紹介のカラーのパンフレットを無料で配るくらいの方がよほど親切だと思う。
ケラリーノ・サンドロヴィッチの演出作品。初見ということもあり期待していたが、途中、客として、何度か集中力が途切れてしまう場面があった。舞台という「魔法」をもう少し駆使して、パンチの効いた仕掛けを作って欲しいなぁ、という思いがある。おそらくこれは、ミュージカルなどを好む私の「好み」の問題だとは思うのだが、これだけ支持を集めているのだから、私の意見が亜流なのかもしれない。他の劇評を読んでみたいと思う。
そういえば。18年ぶりくらいに本多劇場へ。下北沢も10年ぶりくらいか。賑わいは変わっていないけれど、電車の改札がよく分からない・・・。最近お世話になってる「観劇三昧」の前も通りました。開演まで時間がなく走ってたので・・・お店にはまたいずれ。