<観劇レポート>劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名 劇団チョコレートケーキ
第31回公演
治天ノ君
脚本 古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出 日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
日時場所 2019/10/03(木)~2019/10/14(月)
東京芸術劇場シアターイースト(東京都)

劇団紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2000年、駒澤大学OBを中心として結成。
劇団名の由来は「チョコレートケーキ嫌いな人っていないよね」というピュアな心意気。
その後、2008年までその名に恥じない緩やかなコメディを年1~3回のペースで上演。

2009年、劇団員古川健の劇作による「a day」を上演。

2010年、「サウイフモノニ…」から日澤雄介が演出を担当、現在の製作スタイルを確立。
あさま山荘事件の内側を独自の物語で切り込んだ「起て、飢えたる者よ」以降、大逆事件やナチスなど社会的な事象をモチーフにした作品を作り続けている。
緻密な調査に基づき描かれる古川健の劇作と、ハードな台詞表現の内に、人間味を凝縮させる日澤雄介の演出が加わり、ある種の極限状態にいる者たちの存在に肉迫していく。負荷に炙りだされる様にして生まれた俳優の衝動を純度の高い感情表現まで昇華させ、硬質ながらも生々しい人間ドラマを展開していく。

2014年、大正天皇の一代記を描いた『治天ノ君』で、第21回読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。
2015年には劇団としての実績が評価され第49回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞。

海外の芸術祭への招聘など、国内外から多大な注目が寄せられている。
現在、日澤雄介(演出/俳優)を代表に、古川健(劇作家/俳優)、岡本篤(俳優)、浅井伸治(俳優)、西尾友樹(俳優)、菅野佐知子(制作/俳優)の6名が所属している。

劇団チョコレートケーキ

事前に分かるストーリーは?

劇団ホームページには、こんな記載がありました。

激動の明治・昭和に挟まれた『大正時代』。
そこに君臨していた男の記憶は現代からは既に遠い。
暗君であったと語られる悲劇の帝王、大正天皇嘉仁。
しかし、その僅かな足跡は、
人間らしい苦悩と喜びの交じり合った生涯が確かにそこにあったことを物語る。
明治天皇の唯一の皇子でありながら、家族的な愛情に恵まれなかった少年時代。
父との軋轢を乗り越え、自我を確立した皇太子時代。
そして帝王としてあまりに寂しいその引退とその死。

今や語られることのない、忘れられた天皇のその人生、その愛とは?

観劇のきっかけ

チラシや評判を観ての観劇です。

ネタバレしない程度の情報

上演時間・チケット価格・満足度

観劇した日時 2019年10月3日
19時00分〜
価格 4000円 初日割・全席指定
(ネット予約)
上演時間 140分(途中休憩なし)
個人的な満足度
CoRichに投稿
★★★★★
(5/5点満点)

客席の様子

男女は半々くらい。アラフォーアップの方が多いように感じました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者の方でも、安心して観劇できる舞台です。

観た直後のtweet


ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。事前説明の通りだが。
あまり語られることのない、大正天皇の足跡を、主に3つの時間を、交錯して切り取りながら進む物語。1つは、皇室の威厳と尊厳を何よりも重んじた、明治天皇と共に過ごした時間。1つは、大正天皇が即位し、自らの治世の時間。そして、大正天皇の死後、昭和天皇が即位するまでの時間。最終的には、一本につながる時間。そんな中で大正天皇の為人と、親子の関係や、皇室とは何かという事を問いかけている物語。

この感想を書いている段階で、この物語がどの程度史実に基づいているか、分からずに書いている事をまずお断りしつつ。

大正天皇。歴史の授業で習ったときは、ちょっとバカにしていたような気がする。何もしなかった天皇、とかいうくらいに。実際、最終的に裕仁が摂政になったのを私は知らなかった。「大正ロマン」なんていう言葉はは習った気がするけれど、治世との関連まで思い至ってなかった。まずそのことに、純粋な驚きがあった。

自らが、「それほど能力が高くない」と謙虚に自覚する中、世襲で絶大な責任を背負わされた苦悩。しかし、それをなんとか果たそうとする大正の誠実さ。史実との整合性は分からないものの、その部分には純粋に感動し。
あるいは、父と子という関係。期待し、その期待に答えられず、その重圧にも耐えられず。あるいは、価値観の違いからか、すれ違う。その三代の親子関係の重さにも感じ入り。
あるいは夫婦とは何か、という事を、物語の語り部としても登場する皇后の視点を通して、感じ入ることもあり。

140分、殆ど笑いのシーンもなく、皇室独特の様式も演技に組み込んだ演劇だったけれど。ものすごく深く、多層なテーマを巧みに組み込んだ舞台を観れた、という感覚だった。

という、舞台としての普通の感想と同時に。

この作品は、2013年初演。2016年再演。なので、・・・物語の解釈、作者の意図として。正しいかどうかは分からないものの。私には、今の世の、上皇・・・平成の世の天皇、の姿が途中からダブって、重なって見えて仕方がなかった。上皇は、幸せな雰囲気で退位を果たしたけれども。この物語を観ると、上皇の足跡は、大正天皇が果たそうとして果たせなかった事を全てうまくやり遂げたようにも見える。国民に寄り添い、激動の世の中の「休み時間むのような平和な時間」を作り、夫婦仲睦まじく、天皇という職責を放棄せずに全うする事、全うするためには何が必要なのかを懸命に考える事をし、自らの衰えが致命的になる前に退位をする。それを思うとこの話は、大正というより、平成のうまくいかなかったバージョンなんじゃないか、とか、そんなよく分からない思考が出てきた。

観ているうちに、多層で濃厚な会話劇の味わいと共に現代にも重なる話、という思いが強くなって、なんだかよく分からない、「引き込まれる」感情が湧き上がってきた。そんな、不思議な時間だったが、ラストに向かうにつれて、上皇とのダブりだったり、いろいろな感情の重なり合いで、チロチロと涙が止まらなくなっていた。

このお話が上皇を重ねるならば。「令和」の世の中は、戦争の世の中にもなり得る、という事でもある。空恐ろしい想像を、劇中に、既にしてしまう。上皇は、無事退位した。令和の世も、平和な世の中であってほしい、と、そんな事まで、劇中に考えてしまった。少しナナメな捉え方かもしれないけれど、そんな事が頭から離れない時間だった。

役者さん。もう上手いなぁ。特に印象に残った方だけ。
西尾友樹、体調が良かったり、病に伏していたり、明治天皇を恐れていたり。そんな大正天皇嘉仁様が非常に魅力的。松本紀保、「久保と人間」で拝見して気になっていた女優さん。思えば女優さんお一人でしたが、気品のあるたたずまいと、語り部が印象的。青木柳葉魚、原さん、なんか憎めなくて好き。菊池豪、Peachboysで童貞がどうのとか言ってたり、あサルとピストルでブルマはいてたりするのとは全く違って(笑)、本当にカッコよくて。回想シーンで出てくるところがとても切なかったなぁ。谷仲恵輔、有栖川との対比もあって、ものすごく怖い明治天皇睦仁だった。大儀。

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