<観劇レポート>ゆうめい「姿」
#芝居,#ゆうめい,#MITAKA “Next” Selection
観た芝居の感想です。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
団体名 | ゆうめい |
回 | MITAKA “Next” Selection 20th 参加 |
題 | 姿 |
脚本 | 池田 亮 |
演出 | 池田 亮 |
日時場所 | 2019/10/04(金)~2019/10/14(月) 三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都) |
劇団紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
どこでも見かけそうな生々しい人々による
「なさそうだけどあったこと」がテーマです。ゆうめいの由来は
「夕と明」「幽明」人生の暗くなることから明るくなるまでのこと、
「幽冥」死後どうなってしまうのかということから。「有名になりたいからゆうめいなの?」と普段思われがちの名前から、由来のように
「物事には別の本意が存在するかも」というポリシーで、
とらわれた観念や環境から多様に変化できる可能性を描いてます。NHK Eテレ・TOKYO MX等にて美術制作・出演・映像ディレクション・TVアニメ脚本
外部への舞台出演・演出助手・美術など、活動は大きく展開中。
事前に分かるストーリーは?
劇団ホームページには、こんな記載がありました。
出世したバリキャリの母。
慕ってきた定年後の父。
別れる。女と男、妻と夫の今までとこれからのお話。
今のあたりまえ、から、次のあたりまえ。
実話を基に子が脚本を書いて演出し、実父も出演する三鷹でのお芝居。
観劇のきっかけ
Twitterでの評判がよかったから、の観劇です。
ネタバレしない程度の情報
上演時間・チケット価格・満足度
観劇した日時 | 2019年10月8日 19時30分〜 |
価格 | 2500円 全席自由 (事前にネット予約) |
上演時間 | 120分(途中休憩なし) |
個人的な満足度 CoRichに投稿 | ★★★★★ (5/5点満点) |
客席の様子
女性が6〜7割くらいかな。男女とも、年齢層はバラバラ。いろんな年代の方がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観ることができる芝居です。
観た直後のtweet
ゆうめい「姿」観劇。120分休無。
基本会話劇。
なんだか言葉にならない。ものすごいものを観てしまったような気がする。すごく泣いたとか、すごく笑ったとか、そういう訳じゃないんだけれど。強烈な空間に居た。
舞台空間の使い方、時間の使い方、会話の自然さ。そして曲♂が忘れられず。超オススメ! pic.twitter.com/Cg620HofiY— てっくぱぱ (@from_techpapa) October 8, 2019
注意してください。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは、事前のあらすじの通りだが。父と母が熟年離婚する。
父、母、祖父、祖母、自殺した友達、他。祖母の1964年の東京オリンピックの時代から、2020年のオリンピックまで、時間を行ったり来たりしながら、息子の視点で探っていく。そして息子が母に、初めて反抗するまでの、物語。
多分、この物語の解釈には、少し時間がかかる。それぐらい、ズシンと重く来た作品だった。ひとまず、今感じている事を、とにかく書き出してみる事にする。
モー娘。の曲には、うっすら泣いた。でもそれ以外は、深い深い感情の空間にいるのに、不思議と涙は出てこなかった。静寂の中にいる感覚。不思議な感覚。多分、いろんな要素がある作品だから、観る人によって解釈がいろいろ産まれるだろうとは思う。また、あらすじなんかを読んでいると。どうやら実話も織り混ざっているようで。父役は、作者の本当の父が出演しているようだし、現実との交錯の部分もあると思う。
泣きも笑いもしなかったから「面白かった」と評するのも、なんか違う気がする。でも「詰まらなかった」とは真逆だ。何かいい表現がないか、言葉を探してtwitterをウロウロとしていたら「切実過ぎた」という表現にぶつかった。そうだ。切実。その言葉が一番当てはまる気がする。
物語に対して、自分の解釈を少し書いてみると。私には、物語全体が、母を理解するためのプロセスに見えた。そして同時に、母に対する、優しくも、しかし決別の、物語に思えた。…ラスト、母子の言い争いがクライマックスだったし、「決別」という言葉は少し重すぎるかもしれないものの、母との分かりあえなさ、という理解は、割とオーソドックスな、物語の解釈だとは思う。
帰路に当日パンフレットを読みながら。劇中登場した小ネタ。MXテレビとか、馬のアニメとか、実際の事なのか、と知って驚く。客出しのアナウンスは母が担当。実際、作者=息子の父母は、離婚はしていない、との事だけれど。とにかく劇の周辺に、現実との接点になる情報がたくさんある。その事を思えば思う程、この物語が、母との決別に思えてくる。
物語全般は、1964年の東京オリンピック…祖母の時代から、2019年(あるいは少し未来も)までを、行き来する。その行き来が、ともすると、母に対する理解、丁寧に丁寧に、母に対する理解を積み重ねたように感じ。そうして理解しても尚、相手の立ち位置を尊重しても尚、そこに越えられない壁がある、という事を、そっと伝えたかったんじゃないかのか。そう思えて仕方がなかった。私自身の母との関係の境遇と、劇中の息子の境遇と。かなり異なっていたのが、幸いだった。もし、私自身と似ていたら、重くて重すぎて、終演後、帰りに席から立ち上がれなかったんじゃないか、とさえ思った。何しろ、母との決別なのだから。
しかし、単に決別するのではなく。その説明の過程が丁寧過ぎて。それが、演劇そのものの魅力になっていて。舞台美術と空間の使い方が秀逸で。冒頭登場するVRの装置しかり。2つに引き裂かれているような空間が、繋がったり割れたりして。舞台セット以外の周りの空間の使い方も面白く。その中で展開される会話が、とにかく自然すぎて。ひょっとしたら役者さん、セリフ間違えたんじゃないか、と思うも、その間違いがなければ成立しない会話なども、何度も登場し、だったので。計算され尽くした、自然な会話なのだろうと思う。これだと、本当に役者さんがセリフをトチっても、全く気がつかないと思う。
そうやって、丁寧に説明された、決別。「面白い」ではない。ただ、そこに、ずっしり、とした空間と人の思いがあるのみ。正に演劇的な、空間と空気と、想いの共有の時間だった。
・・・多分、この後ジワジワくる作品。また何か感じることが増えたら、呟いたり、してみようと思う。
気になった役者さん・・・強烈な世界観なので、気になったとか、そういうレベルでもない気もするのだけれど。高野ゆらこ、あの母の嫌な迫力がないと成立しない芝居だろうと思う。若い頃、まだ父の理解のこちら側にいた頃の演技が眩しく。児玉磨利、なんかサバサバした感じが大好き。中村亮太、何だろう、演技が印象に残っていないのに、存在が強く残っている。感情移入し過ぎたかなぁ。五島ケンノ介、父。間に挟まれて震えているの、ものすごい共感だった。黒澤多生、若かりし父のあのふにゃふにゃした感じが、不自然じゃなく不自然で(笑)印象に残った。
仮チラシ
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