<観劇レポート>劇団チャリT企画 「うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた」

#芝居,#チャリT企画

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 劇団チャリT企画「うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名劇団チャリT企画
座・高円寺 春の劇場03 日本劇作家協会プログラム 劇団チャリT企画 #33
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた
脚本楢原 拓(chari-T)
演出楢原 拓(chari-T)
日時場所2021/05/16(日)~2021/05/23(日)
座・高円寺1(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

チャリT企画は1997年、早稲田大学演劇研究会(第三舞台、山の手事情社、双数姉妹、東京オレンジ等を輩出) に在籍していた楢原拓(chari-T)を中心に結成され、翌1998年、同研究会のアンサンブル(内部劇団)として旗揚げされました。
早大大隈講堂裏アトリエを拠点に12回の本公演を重ね、2004年末に同研究会から独立。以後は社会人劇団として、都内を拠点に年2~3回の本公演を中心とした活動を行っています。
旗揚げ初期はフリーエチュード(即興)からシーンの断片を起ち上げる「構成演劇」の手法が用いられていましたが、近年は主宰・楢原が書き下ろす群像喜劇の上演が中心となっています。
手法を変えつつも、結成当初から一貫しているのは、鋭い人間観察とシニカルな社会批評の視線であり、時事ネタや社会問題などのシリアスな題材を、独特なセンスで軽妙に笑い飛ばす風刺と批評性に富んだその希有なスタイルは「ふざけた社会派」として小劇場の中でもひときわ異彩を放っています。

劇団チャリT企画

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

祖母が起こしてしまった交通死亡事故
それにより「加害者家族」となってしまった一家
彼らの身に降りかかるふんだりけったりの顛末と、まったく関係ない人をも巻き込んで起こる大騒動。
ふざけた社会派・チャリT企画がお送りする最新茶番コメディ!

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年5月20日
14時00分〜
上演時間95分(途中休憩なし)
価格3800円 全席自由

チケット購入方法

劇団ホームページからのリンクで、Webで予約しました。
当日、現金でお金を支払い、整理番号付き自由席券をもらいました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
平日マチネという事もあり、かなりシニアな層が目立つ客席でした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・コメディ
・考えさせる
・社会派

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(4/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

「アクセルとブレーキ踏み間違えた」とだけ言って、おばあちゃんからの電話が切れた。情報を得るために、Twitterに「そんな事故ありませんか?」と問いかける。すると、Tweetが拡散に拡散を重ね、むしろ妄想ともいえる解釈がはびこっていく。気が付くとおばあちゃんは、レンタル彼氏を助手席に乗せ、子供をひき殺して、車にのせて誘拐した事になっていた。おばあちゃんの息子に間違えられたYouTuberはとばっちりを食らい、誘拐された子供の親は家に押しかけ、レンタル彼氏の彼氏と彼女は鉢合わせ。そして、おばあちゃんの安否を気遣う家族は翻弄され続ける。そんなお話。

ゲラゲラ笑うタイプのコメディではなかったけれど、ニヤニヤしてしまう感じで、面白かった。結局、何一つ確かな情報を掴んでいる訳では無いのに、話を進めていくうちに、気が付くとそれまでの「推測」や「誤解」が、前提事項になってしまう。SNSの拡散力の怖さは、別に目新しいテーマではなくて、早い段階で何となく結末まで話は読めてしまうのだけれど、目の前にあらためて「怖さの実像」みたいなものを提示されると、怖さの実態をに掴んだようで不気味な感触が実体化した。殆どが、SNSを中心に展開する話だけれど、子供を誘拐された親にかかってくる電話は、実はSNSとは関係ない、よく知っているママ友がかけている事が最後に分かって、それはそれで空恐ろしかったりもする。

ラスト、おばあちゃんは実はケロッと何もなく登場する(帰宅する)のではないか?と予想していた。実際のSNSでは「火がなくたって煙が立つ」のだから、おばあちゃんはピンピンして帰宅するのがスジかな、と。(私は「ゲームセンターのカーレースでハッスルしている時に電話したら、充電が切れた」というのを想像していた)。結末は、実際に崖から落ちていてびっくり。結果的に「火のないところに煙は立たない」になった訳で、SNSとは少し違うな、とも思う。

チャリT企画、劇団は、前回の「それは秘密です。」以来の二度目の観劇。社会派と言われるし、この類の社会的なテーマを扱っている劇団なのだと想像。作品自体は、SNSの善・悪には触れず、単にそういう「怖さがある」という、あえて意図的に問題の提示だけに留めている感覚がある。問題に踏み込んで、善悪を取り上げると、その意見に対する賛否で芝居を観るようになってしまうからなのかな、と思う。

ただ、「社会問題の提示」だけだと、役の中の登場人物の個性が、あまり際立たってこない気がするのが、気になる。ベース路線がコメディであるから、個性的なキャラクターがいても良さそうだけれども、見えてこない。一足踏み外すと、交通安全啓蒙のために警察署がやるような、当たり障りのない演劇、にも見えてしまう。今回のセット、家の中の居間が、吉本新喜劇のような絵で描かれた書割だったのが、その印象に拍車をかけて、ちょっと頂けない。この作風、どうにも「のっぺりした演劇」、なんかひと味、スパイスに欠けている感覚に、どうしてもなってしまうんじゃないかなぁ、という漠然とした予想がある。何度か観るうちに、裏切ってくれる演目に出会えるとよいのだけれど…という思いもあったり。

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