<観劇レポート>劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-」

#芝居,#劇団チョコレートケーキ

【ネタバレ分離】 劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名劇団チョコレートケーキ
ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-
脚本古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
日時場所2023/06/29(木)~2023/07/16(日)
シアタートラム(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

劇団チョコレートケーキとは
2000年、駒澤大学OBを中心として結成。
劇団名の由来は「チョコレートケーキ嫌いな人っていないよね」というピュアな心意気。
その後、2008年までその名に恥じない緩やかなコメディを年1~3回のペースで上演。

2009年、劇団員古川健の劇作による「a day」を上演。

2010年、「サウイフモノニ…」から日澤雄介が演出を担当、現在の製作スタイルを確立。
あさま山荘事件の内側を独自の物語で切り込んだ「起て、飢えたる者よ」以降、大逆事件やナチスなど社会的な事象をモチーフにした作品を作り続けている。
緻密な調査に基づき描かれる古川健の劇作と、ハードな台詞表現の内に、人間味を凝縮させる日澤雄介の演出が加わり、ある種の極限状態にいる者たちの存在に肉迫していく。負荷に炙りだされる様にして生まれた俳優の衝動を純度の高い感情表現まで昇華させ、硬質ながらも生々しい人間ドラマを展開していく。

2014年、大正天皇の一代記を描いた『治天ノ君』で、第21回読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。

2015年には劇団としての実績が評価され第49回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞。

2022年、古川脚本・日澤演出の過去上演作品の中から≪日本の戦争≫に焦点を当てた5作品と新作を加えた6作品の連作[生き残った子孫たちへ 戦争六篇]を東京芸術劇場シアターイースト/ウエストにて上演。

海外の芸術祭への招聘など、国内外から多大な注目が寄せられている。

現在、日澤雄介(演出/俳優)を代表に、古川健(劇作家/俳優)、岡本篤(俳優)、浅井伸治(俳優)、西尾友樹(俳優)、菅野佐知子(制作/俳優)の6名が所属している。

劇団チョコレートケーキ

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

1990年、バブル景気に沸く日本。
特撮ヒーローものを制作する会社の企画室。20代30代の若手クリエイター中心に番組の脚本会議が行われている。
少年時代に特撮巨大ヒーローのシリーズに熱中した経験のある彼らは、自分たちの仕事が所詮は過去の名作の焼き直しに過ぎないことに忸怩たるもの感じながらも、半ば先行の名作の後追いになるのは仕方ないとあきらめている。
そこには、本来は大人向けの番組を作りたいという屈折した思いもある。

そんな覇気のない会議の中で、一人の脚本家があるシリーズで放送された異色エピソードを話題にする…

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2023年06月30日
19時00分〜
上演時間130分(途中休憩なし)
価格4500円(前半割) 全席指定

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

※メンタル的に調子が悪く、しっかり書き上げる余裕が取れないため、当面は感想のメモだけ残しています。こぼれ落すより、何かしら残しておきたい。後々振り返って、もう少しちゃんとした文章に仕立てあげるかもしれません。

円谷プロのような、特撮怪獣もの撮影現場。今も子供向け連続シリーズ「ワンダーマン」を撮影中だが、予算を切り詰めるために「怪獣の登場しない」エピソードを作ることになる。監督の松村の大学時代の後輩、井川が脚本を書くことになるが、それが過去の名作「ユーバーマン」で怪獣の登場しないエピソードをオマージュしたものに。差別はどうして生じるのか・・・といった事を考えさせる内容になっていく。低予算、怪獣が登場しない回ながらも、出演者たちの作品作りの士気が上がっていくものの、テレビ局の「事なかれ」主義で、脚本の変更を要求される。松村は、テレビ局の反対を押し切ってそのエピソードを放送してしまう・・・というお話。

これまでのチョコレートケーキに比べると、割と淡々としたお話だなぁ、という印象。劇中登場する「ユーバーマン」の「老人と少年」りの更に元ネタは、「怪奇大作戦」か「ウルトラQ」あたりのオマージュかと思ったら、いろいろと情報収集していくと帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」がモデルらしい。劇作としては淡々としているので多分賛否両論割れそうだなぁと観ながら思うものの、一方とても静かに静かに、でもグイグイと確実に押してくる話。

差別について劇中で会話するので、少し「説明」っぽさが、授業というかお説教っぽさが含まれてしまう点はある。一方、その説明とは別に、登場人物それぞれが差別を受けている、という事をひた隠しに生きている、というのが、途中途中の会話の中で浮かび上がってくる構造になっているのが良い。女優の森田が、何に悩んでいるのかは結局分からなかったけれど、松村は同性愛者で、その事を隠して男と生活している事が最後に明かされる。知らず知らずのうちに差別をしてしまう・・・っていう事をドラマチックに描くのではなく、そういう状況をサラリと見せる。それが、テレビ局みたいな大きな力で、どうとでも捻じ曲げられて伝わってしまう。そんな現実が、象徴的な物語として、展開される物語としても、劇中劇の形となる特撮モノの物語の中でも、多層に描かれているのがよかった。

印象に残った役者さん。橋本マナミの、何かを抱えているけれど表に出さない、でも凛とした女性、凛とした女優像が好感なのと。その相手役の足立英(あだちすぐる)が、差別に無知なところからスタートして、この特撮物エピソードを見た子供のように徐々に理解を深めていくのが、象徴的ではあるものの、とても効果的な魅せ方で印象に残った。

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