<観劇レポート>劇団チョコレートケーキ「一九一一年」

#芝居,#劇団チョコレートケーキ

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 劇団チョコレートケーキ「一九一一年」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名劇団チョコレートケーキ
第34回公演
一九一一年
脚本古川健(劇団チョコレートケーキ)
演出日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
日時場所2021/07/10(土)~2021/07/18(日)
シアタートラム(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

2000年、駒澤大学OBを中心として結成。
劇団名の由来は「チョコレートケーキ嫌いな人っていないよね」というピュアな心意気。
その後、2008年までその名に恥じない緩やかなコメディを年1~3回のペースで上演。

2009年、劇団員古川健の劇作による「a day」を上演。

2010年、「サウイフモノニ…」から日澤雄介が演出を担当、現在の製作スタイルを確立。
あさま山荘事件の内側を独自の物語で切り込んだ「起て、飢えたる者よ」以降、大逆事件や>ナチスなど社会的な事象をモチーフにした作品を作り続けている。
緻密な調査に基づき描かれる古川健の劇作と、ハードな台詞表現の内に、人間味を凝縮させる日澤雄介の演出が加わり、ある種の極限状態にいる者たちの存在に肉迫していく。負荷に炙りだされる様にして生まれた俳優の衝動を純度の高い感情表現まで昇華させ、硬質ながらも生々しい人間ドラマを展開していく。

2014年、大正天皇の一代記を描いた『治天ノ君』で、第21回読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞。

2015年には劇団としての実績が評価され第49回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞。

海外の芸術祭への招聘など、国内外から多大な注目が寄せられている。

現在、日澤雄介(演出/俳優)を代表に、古川健(劇作家/俳優)、岡本篤(俳優)、浅井伸治(俳優)、西尾友樹(俳優)、菅野佐知子(制作/俳優)の6名が所属している。

劇団チョコレートケーキ

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

「一九一一年一月、私は人を殺した。」
一月二十四日から二十五日にかけて、
十二人の男女が得体の知れない力によって処刑された。
日本近代史にどす黒い影を落とす陰謀がそこにあった。
何が十二人を縊り殺したのか?


1911年1月24日、25日。12名の社会主義者の死刑が執行された。いわゆる[大逆事件]。

2011年、
「あえてこの手垢のついた[大逆事件]という素材に取り組み、新しい視点でもう一度この事件を掘り起こすような作品を上演したい。」という企画意図のもと王子小劇場にて上演。
彼等を葬り去った大日本帝国という大きな権力装置の内部の人間にスポットライトを当てた『一九一一年』は
その年の佐藤佐吉賞2011で優秀脚本賞(古川健)、優秀主演女優賞(堀 奈津美)を受賞した。

劇団チョコレートケーキのターニングポイントとなった作品、10年ぶりの再演。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年7月15日
19時00分〜
上演時間140分(途中休憩なし)
価格4300円 全席指定

チケット購入方法

カンフェティで購入・クレジットカード決済をしました。
セブンイレブンでチケットを引き換えました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
年齢層は40代upが多めですが、様々な方がしました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・シリアス
・歴史
・会話劇
・静か
・考えさせる
・シンプル

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

2011年の作品の再演との事。劇団チョコレートケーキはすごいなぁ。やっと3作観れたけれど、毎回ドス重い歴史劇。しかも、現代に通じる、考えさせる歴史劇。ぐるんぐるん頭の中で回って、終演後、少し距離を置いてから考えたいな、と思うようになった。ずっしりと重かった。

この文を書いている時点では、自分なりに、史実と虚構との区別を調べる点が、まだできていない点をお断りしつつ。

幸徳事件、恥ずかしながら歴史のテストでの暗記項目としてくらいしか、知らなかった。こんな冤罪が、近代日本で行われていたこと自体が驚きだった。

前作「帰還不能点」もそうだったけれども、チョコレートケーキが描く物語は、権力と個人、組織、という問題を浮き彫りにする。権力は、「国家」という無個性な主体で、人々の運命を変え、死に追いやり、幸せを奪う。でも、権力を構成しているのは結局は役人を中心とした「個人」である。その個人が、権力をつかさどる「組織」の論理で動いたとき、権力は暴走する。その時、個人の良心なんて、ひとたまりもない。国家が冤罪をでっちあげて、無政府主義者を排除しようとすれば、そんな事簡単に出来てしまう。明治時代の出来事。でも、最近の例でも森友問題なんかを考えると、今の時代でも十分に起こりうる問題のように思う。

劇中、田原が尋問するシーンで語られる、幸徳秋水、管野須賀子が主張していた、無政府主義。個人的には、いわゆるアナーキストって、とても過激な人々だと思っていたけれど、管野須賀子が語る無政府主義は、今の世の中の「自由主義」・・・というか、一般的な「自由」に他ならないように思う。実際に幸徳秋水や管野須賀子の原典に当たったわけではないから、劇中のセリフをそのまま管野須賀子の主張と受け取っていいか少し躊躇があるし、一般的な無政府主義がこの主張と同じかもよく分からないけれど、劇中のやりとりを観ている限り、田原が感じたように、無政府主義という主張が、ただ単に「自由と幸せ」を願っているだけの、身近な主張のように思えてくる。歴史で習った時は「無政府主義」というと、何だかそれだけで知りもせずに忌避していたように思うけれど、そういう自分の無知を振り返って恥じたりもした。

実際の世の中で起きているニュースを観る度に、この作品のことを思い出しそうな作品になった。

役者さん。特に印象的だったのは、西尾友樹。あの、終始辛そうな表情が、どんどんと曇っていくのが忘れられない。冒頭とラスト登場する、老いた田原が同じ人とは思えなかった。島田雅之、検察の怖さと人間臭さみたいなものが、雰囲気から匂い立ってる。Peachboysで拝見した時とは全く違うカッコよさ。堀奈津美、どんな場面でも、姿がとにかく美しい。管野須賀子という人物の強さと誇りを、その美しさに垣間見たような気がした。