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【観劇レポート】東京にこにこちゃん「ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス」

#芝居,#東京にこにこちゃん

【ネタバレ分離】 東京にこにこちゃん「ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス」の観劇メモです。

初回投稿:2025年10月05日 13時09分
最終更新:2025年10月05日 13時12分

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名東京にこにこちゃん
MITAKA“Next”Selection 26th 東京にこにこちゃん新作公演
ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス
脚本萩田頌豊与(東京にこにこちゃん)
演出萩田頌豊与(東京にこにこちゃん)
日時場所2025/10/03(金)~2025/10/13(月)
三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

フランス・パリ生まれ東京・練馬育ちの192cm、萩田頌豊与(はぎたつぐとよ)が主宰・作・演出をつとめる劇団。大きい声で言わなくていいことを言ったり、突然どこに居るのかわからなくなってしまうような人たちが出てくるのに、何故か最後は泣いてしまう人が続出。どんな困難があっても最後は必ずハッピーエンドになる、新感覚ラブコメディ。

東京にこにこちゃん

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

85分ほど、大きい声で言わなくていいことを言ったり思いついたことをそのまま喋ったり、突然どこに居るのかわからなくなってしまうような人たちが次々と出てきて煙に巻くのに、何故か最後の10分で泣いている人があなたの隣にいる、そんなお芝居を上演しています。
どんな困難があっても最後は必ずハッピーエンドになる、新感覚ラブコメディ。

脚本・演出・構成力に優れ、今後の飛躍が期待される劇団を集めて贈る、MITAKA"Next"Selectionが26回目を迎えました。
今年の2劇団も、いずれ劣らぬ舞台を創り上げている劇団ばかりです。
星のホールで、新たな才能が開花する姿を、ぜひご覧ください。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2025年10月04日
14時00分〜
上演時間110分(途中休憩なし)
価格2700円 全席自由

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

東京にこにこちゃん「ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス」

1968年。まだテレビでアニメ放送がそれ程一般的でなく、声優の社会的な地位も低い時代。始まったアニメ「ぼーっとぼう子」と、その声優たち。同アニメは国民的長寿アニメとなるが、声優たちはそれぞれの理由で入れ替わっていく。最終的には20xx年に声優たちが生成AIにとって代わられるかも…という時代までの半世紀の物語。

観続けている東京にこにこちゃん。正直「MITAKA Next」は(いずれ必ず選ばれるにしても)まだちょっと早いんじゃないか、なんて思っていたし、それ故に心配でもあったが。今回も東京にこにこちゃんらしい作品で一安心。笑って笑って少し泣く。いつものにこにこちゃんだった。

作品を観ている途中で気が付く。この作品「声優の歴史/生き様」の話を展開しているのに、どうにも真意というか意図としてはそうは思えないよなぁ・・・というズレているような不思議な違和感。むしろ「声優の話」なんてしていなくて、「アニメを見ている側の感覚」をずっと描いている作品なんだな、ということに気が付くのに少し時間がかかった。テレビの特集なんかで目にする、普段は顔を晒さない声優たちの素の断片の情報。それを「アニメを見る側の情報として」集めたものがこの演劇なんじゃないかなぁ、という感覚。その違和感を隠す手段としてなのか、東京にこにこちゃんらしい細かいギャグの連発の描写がむしろピタリとはまっている。

「見ている側の物語」だからだろうか。物語の中に没頭しつつも、途中から声優が変わってしまって悲しかった私自分の思い出がいくつも蘇る。一番はクレヨンしんちゃんの藤原啓治の降板(と死去)だろうか。野原ひろしはやっぱりこの人の声じゃなきゃ…と思った事とか。あるいは、「サザエさん」の最近変わった花沢さんの声優さんがとにかくイメージ違くて困るよな…とか。あるいは、ドラえもんの新旧声優の交代は上手くいって、旧声優の人々は仲良くてみんなで温泉旅行に行くドキュメンタリーが放送されたり・・・なんかも思い出す。

たぶんこの感覚って多くの人が持っている「ちょっと悲しい」けど「割と見過ごされちゃう悲しさ」なんだろうな。そういう「些細な悲しみ」を増幅させて増幅させて、それで舞台に乗せてしまうのがまさに「東京にこにこちゃん」の作風で。この劇団らしい物語だよな・・・といろいろ考えながら納得。

これまでの同劇団作品だと、ラストに向かってテンポの良い曲で駆け抜けていく爽快感みたいなのがあったし、どこか求めている自分もいるのだけれど。今回は音響・音楽は極力排して、しっかり演劇のやり取りとして描いているのが良い。ラストの生成AIをやっつけるのは、どこか「どッきん☆どッきん☆メモリアルパレード」のラストを思い出させるけれど、流れる曲が"My Heart Will Go On"(タイタニックのテーマ曲)でスローテンポ。じっくり描く演出も出来るんだなぁというのが意外な嬉しさでもあった。

ストーリーの中にアニメに対するオマージュやパロディがたくさん詰め込まれていて、全部挙げるのが難しい。「ぼーっとぼう子」は、(色んな意味で)ドラえもんとサザエさんとを足してブラックさを加えた感じで。でも後方スクリーンで上演されるアニメは、どこか最近のディズニーチャンネルのアニメっぽい。サエモンの誕生はどこかリロ・アンド・スティッチのスティッチの誕生のようで。生成AIに乗っ取られるプロデューサー?は「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」っぽい。…全部覚えきれていないくらい色んな事に気が付いたし、おそらく客自身がみているアニメによって気が付くことは違うだろうな。要は作者の萩田頌豊与の「好きなもの」なんだとは思うけれど。でもいろいろ見え隠れするオマージュやパロディに、作者の絶大なアニメ作品に対する愛を感じずにはいられない作品だった。

同劇団お馴染みの出演者が多く役者も変わらず印象的だったが、主役の西出結のか細いけれど力強い演技が特に印象的。

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