<観劇レポート>Pityman「みどりの山」

#芝居,#Pityman

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 Pityman「みどりの山」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名Pityman
MITAKA ”NEXT"Selection 21st
みどりの山
脚本山下由
演出山下由
日時場所2020/10/02(金)~2020/10/11(日)
三鷹市芸術文化センター星のホール(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

よみかたは「ピティーマン」
山下由の脚本、演出作品を上演する団体

繊細な日常描写
ドライでありながらもさみしさを抱える青年たちを会話劇で描き
モザイク的に出来事や、やりとり、シーンなどを切り取り合わせ
小さな部屋の片隅の”なんでもなさ”から世界を照らしだそうとしている。

2018年から劇団内劇団と称して
PityChan(ピティーちゃん)を立ち上げ。
舞台上と観客席との演劇的関係を「破壊」し「再定義」する作品も創作している。

2011年に山下由が個人企画として旗揚げ
2013年劇団化
メンバーは山下由、藤田りんご、長野功、タナカサワキ

若手演出家コンクール2013『ハミング・イン・ウォーター』、2014『ぜんぶのあさとよるを』にて2年連続優秀賞受賞 

第8回せんがわ演劇コンクール『ぞうをみにくる』劇作家賞受賞 

門真国際映画祭2019舞台映像部門『ハミング・イン・ウォーター(再演)』優秀作品賞、最優秀編集賞受賞

Pityman

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

妊婦たちの暮らす山間の代理母父出産施設では、今日もレクリエーションの歌が聞こえる。
「あんなところに山なんてあったっけ?」
ある日、とつぜん裏手に山があらわれた
すすけた窓から見える山は日に日に大きくなる。山はそのうち何もかも飲み込んでしまいそうだ。
大きな山には木や葉が茂り、地面に触れると温かい。石を投げたらキューンと何かの鳴く声がした。

男も女もみんな妊婦で、男に妊娠してもらうほうが、料金がちょっと安い世界のお話。

観劇のきっかけ

知らなかった劇団ですが、MITAKA ”NEXT"Selectionだから観劇を決めました。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2020年10月2日
19時30分〜$$
上演時間110分(途中休憩なし)$$
価格2000円 全席自由

チケット購入方法

CoRichサイトで予約しました。
当日、現金で料金を支払いました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。様々な年齢層の方がいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・静か
・考えさせる
・SF

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(3/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは、事前の告知通り。
人里離れた代理母の集まる出産施設の、共用スペースが舞台。木目調で小奇麗な、ホテルのよう。でも、どこか病院の待合室を思わせるような、そんな場所。1人の看護婦・・・といっても普通の服を着て仕事している・・・の視点を中心に、代理母となった人々の葛藤や、悩みを切り取る。
この世界の舞台は、実は近未来。とはいえ、未来であることを想像出来る舞台セットは、全くない。2020年の今の日常に、とても似ている空間。割と旧式の電話機が置いてあったりする。出産施設には、いろいろな立場の人が集まっいて、その人間模様を描く。男女ともに代理母として妊娠出来るようで、男性も、大きなお腹を抱えて子供を宿している。母性を持つ男性がいたかと思えば、まったく母性のようなものが産まれていないように見える代理母(父)もいる。会話から察するに、地球の環境生態系は破壊されているらしい。ヒレがある子供が生まれる事がそれほど珍しくないような、何らかの環境変化が起こっている様子。一方、火星に移住している人もいるようだ。港ごと(地面が)沈んだなんていう事が発生していて、地殻変動のような会話も出てくる。AIロボットが自分で自分の子孫を作った、なんていうニュースに人々が喜んでいる。・・・こんな未来世界観が、会話だけから読み取れる物語。

物語は、共用スペースで交わされる、会話だけで進行する。とても自然でナチュラルなのに、緻密な会話劇。登場人物の断片的な会話しか聞けないのに、一人一人のキャラクターが会話からだけでもよく分かる。役者さんの存在感、リアリティが、とてつもなく重い。特に、二人で会話するシーンになると、駆け引きの度合いとか、立場の違いとかが、ちょっとした会話の端々から明らかになっていく感覚。シチュエーションを楽しむ会話劇としては、とても完成度が高いと感じる。

やり取りの中から、いくつか、テーマらしきものを読み取ったけれど、最も大きなものは「代理母にうまれる、子への母(父)性。」出産施設で以前代理出産をし、逢う事がかなわない産んだ子供の住所をを調べるために施設に舞い戻ってきた女性と、看護婦の女性の関係を通して、代理母の母性が描かれる。ともすると、倫理の説明になりそうなところを、緻密な会話から、感情を浮かび上がらせていく方法で描いているのは、男性の私にも共感出来て面白い。ただ、生命倫理や公共哲学では、最近は割とオーソドックスな話題として出てくる葛藤のように思うので、テーマとして、目新しさがある訳では、なかったかもしれない。

全編、近未来のSF的な設定が、随所に出てくる。これが、私にはどうにもしっくりこない。

例えば、男性が妊娠・出産できる世の中になっている。設定自体は面白いけれど、母性ではなく、父性の視点で、子供に抱く感情がどう違うのかが、物語からはあまり見えてこない。男性としては、その部分を詳しく見てみたかったように思うが、単に、男性が、代理母としての妊娠が可能なんだな、というのが見えるだけで、そこから展開が乏しい。

他の例だと、途中から大きな存在としてて出てくる、人間なのか魚なのかよく分からない子供。魚にどんな意味があるのか、直接提示されない外の地球の日常の様子と、どうつながっているのかが、最後まで読み取れなかった。もともと人間の祖先は魚だった、という話も出てくるので、地球環境の破壊の事を想像したりしてしまうのだけれど、想像は膨らむのに、他に提示される要素とあまり繋がってこなくて、客に想像するだけ想像して、放置されたように思ってしまう。
・・・他にも、SF要素がたくさん入っているものの、一本の芝居として全体を見た時に上手く読み取れないものが、多かったように思えた。登場人物が置かれている状況を、あえて詳しく説明していない事で、観る側に想像を促して世界観を構築する手法だと思うが、この物語では、あまり効果的ではないんじゃないか、と感じた。・・・まあ、私が鈍感なだけかもしれないけれども。

個々の濃厚な会話は楽しめたのに、SF的な部分の消化不良感が大きくて、物語全体を味わう感覚が希薄なまま終演してしまった。観劇直後の感覚は、大きいサイズの錠剤を飲んで、のどにつっかかってしまった感覚。少し時間が経って薬が体の中まで到達した時に、何か違った感覚が産まれてくるのかな、という思いもある。ただ、観終わった今の時点では、あまり感情に作用するような要素がない。少し様子見が必要な芝居の可能性もあるのかな、と思った。


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