<初日レポート>雀組ホエールズ「享保の暗闘~吉宗と宗春~」コメディタッチの本格時代劇!役者達にメロメロな一夜。

#雀組ホエールズ

ネタバレほぼなし。衣装と役者の熱がスゴイ! コメディタッチの、本格時代劇!

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観劇データ

場所シアターグリーン BOX in Box
日時2018年11月14日 19時開演
料金4000円(前日にネット予約)
上演時間約2時間10分。休憩なし

ストーリーは・・・

歴史の教科書にも出てくる「享保の改革」。質素倹約をよしとした、徳川吉宗。それに異なった意見を
持ち、尾張の藩主として独自の開放政策を取った宗春。「民のための統治とは何か」を、宗春と、時の瓦版(新聞記者)の視点から描いた作品だ。

衣装と役者のパワーがすごい

まず何がすごいって、衣装がすばらしい。
特に時代劇の衣装は、小劇場の主催者にとっては、予算も手数も、頭を悩ませるが、舞台として役者たちを飾る、すばらしい衣装だった。役者にとって、慣れない和服だと演技がぎこちなくなる事が多いが、しっかりと着こなしていた。この衣装をまとった、元気のいい役者たちが、舞台をところ狭しと駆けずり回る。気がつけば、時代劇と和服が大の苦手な私も、この時代の世界にすんなりと入っていけた。

そう、話は「吉宗」と、「宗春」の、つまり、江戸時代の物語だ。

それぞれの「正義」の物語

信じるものが異なる二人の政策が違うのは、当然だ。お互い幼馴染だという事もあり、君主と家臣とはいえ、どこか親しげな二人。その二人が、お互いを大切にしつつも、道を異にしていかねばならない。
誰もが、自分を悪者だと思ってはいない。誰だって、自分は、"イイモノ"、つまり「正義」だと思っている。でも、「正義」は時に主観的でもある。劇中のセリフを借りるならば、『「正義」と「正義」がぶつかれば、救いようのない争いになる。』だろう。

そんな中でも、「人は楽しく生きるために生まれた」と説く宗春の言葉は、"鈍く"心にしみる。誰にとっても、かけがいのない人生。そんな中、愛する人に死なれた宗春が、「みんなを愛する」と言い放つ様は、"鈍い"感動を呼び起こす。まるで、1960年代のラブ・アンド・ピース、あるいはイエス・キリストのアガペーのようだ。感動で泣くようなことでもない。むしろ、今の世の中では、当たり前になりつつある価値観かもしれない。その意味で、この時代に生きるものとしての確認をしつつ、このテーマを「鈍く」受け止める。「人は楽しく生きるために生まれてきた」という言葉は、実は今の時代にには、鈍いけれど強烈なメッセージなのかもしれない。

雀組らしさは、少なめ?

今回の作品は「社会派」と言われるこれまでの雀組の作品とは、一線を画しているかもしれない。見終わった直後は、エンターテイメントとしては楽しめたが、テーマ性を疑問視してしまったのが、正直な感想でもあった。「正義が正義とぶつかる」、という話は、もっと掘り下げが可能なテーマでもあるし、実は特にここ10年くらい、あちこちで取り上げられてきたテーマだ。これまでの作品に比して、掘り下げが足りない。別の方向性の雀組、もあったんじゃないかな、と、テーマに対する消化不良は感じてしまった。

と、個人的には消化不良も抱えつつも、役者の演技と世界観に引き込まれて、退屈する間もなかったのが正直な感想だ。

役者たち、すばらしい

阪本浩之の宗春役は、文句なし。男が見てもカッコイイ。ただ、初日の今日は、声は本調子ではなかったのかな・・・。まだ2週間くらいあるので、後々が心配。雀組は初観劇だが、客入れのときにお出迎えしてくれるのもうれしい。シアターグリーンのBOX in BOXは、エレベーターで5階に上がる構造なのだが、1階で挨拶をしてくれた。ツーショット写真、お願いすればよかったかなぁ。

吉宗役の夏井貴浩が渋い。器が大きいのか小さいのか、自問自答しつつある吉宗の演技がとても、愛おしかった。最後の立ち姿を見て、惚れてしまいそう。今回の公演から、雀組の劇団員になるとの事。次回の舞台では、彼の活躍も要注目。

松井悠、神木優 仁科克基・・・など、男優陣が、基本かっこいいので、書き出すと止まらないが・・・。
悪役を引き受けていた、村尾俊明が好きだった。カーテンコールまで、渋い面を崩さなかったけれど・・・もともとそういう顔の人なのかな。ただ、どこか「善悪」で物を捕らえたがる人間の性、という側面を、彼が全て引き受けていたような気がする。松尾は、劇団5454所属。5454と書いてランドリーだそうで。読めないよ。笑

和服の女優陣、遊郭の女性、という事もあるが、春日井を演じていた、鈴木ゆかは、息を呑むように美しかった。。。・・・もう、魅力的で、男としてはたまらない。観劇三昧で観た、2015年の「イヌジニ」とは大きく違っている。ただ、遊女の着物はあまりにハマり過ぎてて、某映画の杉本彩を思い出してしまったけれど・・・。

第14回公演 享保の暗闘 出演者紹介5/雀組ホエールズ

曜子、沢崎麻衣 安谷屋祐子の、遊郭の女三人が、この芝居に華を添えていた。遊女に恋する喜八の気持ち、よく分かる。俺も水揚げしたい。特に、曜子の演じる小さんが綺麗だったなぁ。「近松」と「六本木」の掛け合いも面白かった。

第14回公演 享保の暗闘 出演者紹介1/雀組ホエールズ

公演前の宣伝のYouTubeの動画は何本かあるものの、和服の時の役者は、全く感じが異なる。ぜひ劇場にいって観ることをオススメしたい。

極上の小劇場エンターテインメントを

初日ということもあり、身内の客が多い気もしたが、開演前の「ドンドン・パー」の仕掛けも含めて、劇場での一体感を楽しめた。客席の客層は、シニアから若い層まで様々。それでも、皆、楽しめる。初心者から、観慣れた人まで、小劇場の楽しさを楽しむにはもってこいなのは、雀組の特徴だろう。

過去の作品は「観劇三昧」で

雀組ホエールズを知ったのは、この観劇三昧で作品を観たのがきっかけ。雀組ホエールズの作品は、本日時点、会員登録で無料で観れます。
ありふれた愛ありふれた世界
イヌジニ
ひまわりの見た夢
稚拙で猥雑な戦争劇場

観劇三昧」で過去の公演をチェックして、
好みに合うかどうかを調べてから行くと、
お気に入りの劇団にあたる可能性が上がるかも。