【観劇レポート】雀組ホエールズ「享保の暗闘~吉宗と宗春」
【ネタバレ分離】 雀組ホエールズ「享保の暗闘~吉宗と宗春」の観劇メモです。
もくじ
初回投稿:2018年11月15日 7時00分
最終更新:2025年08月31日 17時06分
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 雀組ホエールズ |
回 | 雀組ホエールズ第14回公演 |
題 | 享保の暗闘~吉宗と宗春 |
脚本 | 佐藤 雀 |
演出 | 佐藤 雀 |
日時場所 | 2018/11/14(水)~2018/11/25(日) シアターグリーンBOXinBOXTHEATER(東京都) |
過去の観劇
- 2022年02月19日 雀組ホエールズ 「凪のように穏やかに」
- 2019年12月04日 雀組ホエールズ「ピラミッドの作りかた」
- 2019年06月05日 雀組ホエールズ『ひまわりの見た夢「ワスレナグサ」』
- 2019年05月30日 雀組ホエールズ『ひまわりの見た夢「re:act」』
- 2018年11月05日 絵川杏奈が幽霊に!「ひまわりの見た夢」は秀作。今後の雀組ホエールズに期待大です。 ・・・「#雀組ホエールズ」のつづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
江戸時代中期、八代将軍吉宗の治世
享保の改革で質素倹約令を推し進めた幕府に、真っ向から反対し、
民に文化的な生き方を奨励、生きる意味と喜びを与えた藩主がいた。
「尾張七代藩主・徳川宗春」
幕府と宗春、相容れない二つの立場に繰り広げられた
「暗躍」「策略」「忖度」「暗闘」
平和な時代と言われた江戸中期の裏で、熾烈な戦いが幕を開ける
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2018年11月14日 19時00分〜 |
上演時間 | 130分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 $$全席自由/指定$$ |
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ネタバレほぼなし。衣装と役者の熱がスゴイ! コメディタッチの、本格時代劇!
歴史の教科書にも出てくる「享保の改革」。質素倹約をよしとした、徳川吉宗。それに異なった意見を
持ち、尾張の藩主として独自の開放政策を取った宗春。「民のための統治とは何か」を、宗春と、時の瓦版(新聞記者)の視点から描いた作品だ。
衣装と役者のパワーがすごい
まず何がすごいって、衣装がすばらしい。
特に時代劇の衣装は、小劇場の主催者にとっては、予算も手数も、頭を悩ませるが、舞台として役者たちを飾る、すばらしい衣装だった。役者にとって、慣れない和服だと演技がぎこちなくなる事が多いが、しっかりと着こなしていた。この衣装をまとった、元気のいい役者たちが、舞台をところ狭しと駆けずり回る。気がつけば、時代劇と和服が大の苦手な私も、この時代の世界にすんなりと入っていけた。
そう、話は「吉宗」と、「宗春」の、つまり、江戸時代の物語だ。
本日の初日の舞台の写真をちょっとだけ
ほんとにちょっとだけ掲載しちゃいます
華やかな雰囲気とそこにおこる人間ドラマが
まだ迷っている方に届けばと思います!! pic.twitter.com/amu64vgrlW— 雀組ホエールズ (@suzume_gumi) 2018年11月14日
それぞれの「正義」の物語
信じるものが異なる二人の政策が違うのは、当然だ。お互い幼馴染だという事もあり、君主と家臣とはいえ、どこか親しげな二人。その二人が、お互いを大切にしつつも、道を異にしていかねばならない。
誰もが、自分を悪者だと思ってはいない。誰だって、自分は、イイモノ、つまり「正義」だと思っている。でも、「正義」は時に主観的でもある。劇中のセリフを借りるならば、『「正義」と「正義」がぶつかれば、救いようのない争いになる。』だろう。
そんな中でも、「人は楽しく生きるために生まれた」と説く宗春の言葉は、鈍く心にしみる。誰にとっても、かけがいのない人生。そんな中、愛する人に死なれた宗春が、「みんなを愛する」と言い放つ様は、鈍い感動を呼び起こす。まるで、1960年代のラブ・アンド・ピース、あるいはイエス・キリストのアガペーのようだ。感動で泣くようなことでもない。むしろ、今の世の中では、当たり前になりつつある価値観かもしれない。その意味で、この時代に生きるものとしての確認をしつつ、このテーマを「鈍く」受け止める。「人は楽しく生きるために生まれてきた」という言葉は、実は今の時代にには、鈍いけれど強烈なメッセージなのかもしれない。
雀組らしさは、少なめ?
今回の作品は「社会派」と言われるこれまでの雀組の作品とは、一線を画しているかもしれない。見終わった直後は、エンターテイメントとしては楽しめたが、テーマ性を疑問視してしまったのが、正直な感想でもあった。「正義が正義とぶつかる」、という話は、もっと掘り下げが可能なテーマでもあるし、実は特にここ10年くらい、あちこちで取り上げられてきたテーマだ。これまでの作品に比して、掘り下げが足りない。別の方向性の雀組、もあったんじゃないかな、と、テーマに対する消化不良は感じてしまった。
と、個人的には消化不良も抱えつつも、役者の演技と世界観に引き込まれて、退屈する間もなかったのが正直な感想だ。
役者たち、すばらしい
阪本浩之の宗春役は、文句なし。男が見てもカッコイイ。ただ、初日の今日は、声は本調子ではなかったのかな・・・。まだ2週間くらいあるので、後々が心配。雀組は初観劇だが、客入れのときにお出迎えしてくれるのもうれしい。シアターグリーンのBOX in BOXは、エレベーターで5階に上がる構造なのだが、1階で挨拶をしてくれた。ツーショット写真、お願いすればよかったかなぁ。
吉宗役の夏井貴浩が渋い。器が大きいのか小さいのか、自問自答しつつある吉宗の演技がとても、愛おしかった。最後の立ち姿を見て、惚れてしまいそう。今回の公演から、雀組の劇団員になるとの事。次回の舞台では、彼の活躍も要注目。
松井悠、神木優 仁科克基・・・など、男優陣が、基本かっこいいので、書き出すと止まらないが・・・。
悪役を引き受けていた、村尾俊明が好きだった。カーテンコールまで、渋い面を崩さなかったけれど・・・もともとそういう顔の人なのかな。ただ、どこか「善悪」で物を捕らえたがる人間の性、という側面を、彼が全て引き受けていたような気がする。松尾は、劇団5454所属。5454と書いてランドリーだそうで。読めないよ。笑
和服の女優陣、遊郭の女性、という事もあるが、春日井を演じていた、鈴木ゆかは、息を呑むように美しかった。。。・・・もう、魅力的で、男としてはたまらない。観劇三昧で観た、2015年の「イヌジニ」とは大きく違っている。ただ、遊女の着物はあまりにハマり過ぎてて、某映画の杉本彩を思い出してしまったけれど・・・。
曜子、沢崎麻衣 安谷屋祐子の、遊郭の女三人が、この芝居に華を添えていた。遊女に恋する喜八の気持ち、よく分かる。俺も水揚げしたい。特に、曜子の演じる小さんが綺麗だったなぁ。「近松」と「六本木」の掛け合いも面白かった。
公演前の宣伝のYouTubeの動画は何本かあるものの、和服の時の役者は、全く感じが異なる。ぜひ劇場にいって観ることをオススメしたい。
極上の小劇場エンターテインメントを
初日ということもあり、身内の客が多い気もしたが、開演前の「ドンドン・パー」の仕掛けも含めて、劇場での一体感を楽しめた。客席の客層は、シニアから若い層まで様々。それでも、皆、楽しめる。初心者から、観慣れた人まで、小劇場の楽しさを楽しむにはもってこいなのは、雀組の特徴だろう。
過去の作品は「観劇三昧」で
雀組ホエールズを知ったのは、この観劇三昧で作品を観たのがきっかけ。雀組ホエールズの作品は、本日時点、会員登録で無料で観れます。
「観劇三昧」で過去の公演をチェックして、
好みに合うかどうかを調べてから行くと、
お気に入りの劇団にあたる可能性が上がるかも。