<観劇レポート>劇団俳優座「雉はじめて鳴く」

#芝居,#iaku,#俳優座

【ネタバレ分離】


観た芝居の感想です。

公演前情報

公演・観劇データ

団体名劇団俳優座
劇団俳優座第340回公演
雉はじめて鳴く
脚本横山拓也(iaku)
演出眞鍋卓嗣
日時場所2020/01/10(金)~2020/01/19(日)
俳優座劇場(東京都)

団体の紹介

劇団ホームページには紹介がありますが、長いので割愛します。
多くの俳優さんが所属し、テレビ等の出演も多い劇団です。
劇団俳優座

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

『例えば彼女が教師じゃなかったら、あの恋愛はスタートしていたのだろうか』
『もしも彼が大人だったら、あの恋は成就していたのだろうか』
小さい囲いの中で形成される数百人のコミュニティ。
彼らの眼に映る世界の先に、実社会はつながっているのだろうか…。

観劇のきっかけ

iakuの横山拓也さん、今注目している脚本家の方の公演です。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

観劇日時2020年1月14日
14時00分〜
上演時間125分(途中休憩なし)
価格5500円 全席指定

チケット購入方法

カンフェティのサイトで、座席を指定して購入しましたが、決済はしませんでした。
セブンイレブンでの引き換え可能な番号をもらいました。
セブンイレブンの店頭に行って、カードで決済をしてチケットを発券してもらいました。

客層・客席の様子

俳優座の劇場に初めて行きましたが、マチネの公演ということもあってか、60代以上のグループでの観劇が目立ちました。男女は半々くらい。その中に、若い人が一人観劇でポツンポツンと混ざっている感じでした。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・シリアス
・考えさせる
・親子と先生

観た直後のtweet

映像化の情報

情報はありません。

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

ストーリーは。
公立高校。赴任してきた新しいスクールカウンセーラ藤堂は、すぐに女教師の浦川と仲良くなる。浦川は、自分のクラスの生徒・・・健の生活面での相談に乗っているが、サッカー部のキャプテンを務めるにも関わらず、精神的に不安定なのか、時折ハグを求められたりする。どうやら健は、浦川に恋心を抱いている様子にも見えるも。実は浦川は、サッカー部の顧問の戸倉と不倫関係にあったりもする。スクールカウンセーラとの会話を通して、健に対して、このままウラカワがカウンセリングを続けるのは良くないと、健にカウンセラーとのカウンセリングを迫る。しかし、その事に激昂した健は学校を飛び出し行方不明に。翌朝来た健の母親は、どうやら精神的に病んでるように見える。健の母親は、健が中学時代に家を出てしまった。どうやら静岡に住んでいるらしいが、たまたま母が父親に手紙を書いているのを見た時に知っている、住所しか知らない。健は父親に会いに行くが、そこには父親はいなかった。翌日学校に戻ってきた健。家に連れて帰ろうとする母親に抵抗して、児童保護施設に行くと宣言。その行動を、「私が責任をもって守る」「いつでも君の避難場所になる」という浦川・・・。そして、その出来事を、30年後、母の死をきっかけに先生に30年ぶりに「避難」しにきた先生と回想する物語・・・と、強引にストーリーだけまとめるとこんな話。

すごく、すごく、静かな舞台だった。奇をてらわない、とはこういう事を言うのかな。回転舞台はうまく使いつつも、静かに静かに進んでいく物語。俳優座劇場の間口だと、若干の迫力の物足りなさはあるものの。横山拓也ならではの、淡々とはしているが深い人間の物語。ああ、やはりすごいなぁ、という事を感じた。

主に、二つの物語の流れが織り込まれていた。

1つは、物語の大筋。親と子、そして教師を含めた他者との関係。
親がモンスターペアレントだったり、精神的に破綻していたりして、子供の生活が成り立たないとき。子供はどうしたらいいのか。そして教師は、何をしてあげられるのか。浦川の、最初は担任だからというごく自然の感覚から始めた、健の相談に乗る事。スクールカウンセラーが学校に導入されて、いわゆる「プロ」の目線も横目で見つつも、結局は健は、浦川に頼ってくる。身近にいる他人が、他人に何が出来るのか。そして、どんな限界があるのか。そんな事を思わず考えてしまう。ラスト、浦川が「私が責任を持って守る」といい健を守ろうとする。血のつながりももちろん、あがなえない大切なきづながあるものの。きっと、人間の関係ってそれだけじゃない。カウンセラー、親しい友達、という、健と浦川にとっては「脇役」的な要素を周りに上手く配置しつつ、他人に出来る事、という優しさを表現しているのが非常に秀逸。

もう1つは、ストレートに、恋の話。
健が浦川を頼るのは、担任で話しやすかったというのはもちろんなんだろうけれど、浦川に対する恋心に裏付けされていて。ただ、これは浦川の視点からすると、若い生徒からの恋心で、受け取るには少し大げさな感情。浦川にとっては、教師と生徒、という関係でしかなくて。しかも、浦川自身は、戸倉と不倫関係にあり、しかも結婚願望もあるからその関係を正に清算しようとしているところだったり。健の友人のサッカー部マネージャの早織も、健に対する恋心で動いていて。全体的に、誰かが誰かに淡く恋している状況ではあって、でも立場というか、立ち位置が大きく違う2人の恋であって。その「恋する事と、慰められる」ってどういう関係なんだろうか、みたいなことが頭の隅をよぎった。不倫関係で寂しさを紛らわす事と、20も歳の離れた教師に精神的な安定を求めつつする恋と、何だかどこか、似ているような気もするし。・・・あれ、恋するって何なんだっけ?。そんなに寂しい事なんだっけ?。対等な関係じゃないと、恋しないんだっけ?とか。そんな、結論の出ない事を、思わず考え出してしまった。

1つ。引っかけられたなぁ、と思ったことがあって。学校でのやり取りの合間に時折、舞台後方だけで展開する、50代くらいの男と、更に年上の車椅子の女の話。どうやら、港で海を見ながら話をしていて。私の誤解かもしれないが・・・話の流れから、これは健の父なんじゃないか、と思うように物語が作られていたように思う。(父は、祖母の面倒を見るために静岡へ・・・とか、手紙を受け取っても開封していない・・・とか、そう誤解させるようなやり取りがあった)。実際のこの二人は、50代の健と、70代の浦川。この物語自体が、一種の回想だったり、2人の「あれから30年後」のように、話が作られているものの、最後のシーンまでその事は明確には明かされず、あえて観る側にミスリードさせるように作られていた。お互い婚期も逃がしてしまい、50歳と70歳で独身の健と浦川。「私に避難する?」と両腕を広げる浦川の手に収まる健だけれども。ああ、ここでは恋し恋されるの関係だけれど、少し立場が異なっていて。感動的なラストではあるものの、この二人の恋はどうなるのか。果たして上手くいくのか、という事を、どうしても考えずにはいられず。そういう「かけ違いの恋」「段差のある恋」みたいなのを、とことん描くんだなぁ、と思いながら観ていた。

気になった役者さん。若井なおみ、少し遠い席だったので顔まで正確に判別できる席ではなかったのだけれど。不器用だけれど、大胆で。生徒に対しては誠実な、先生がとても魅力的だった。健が浦川に惚れる、というのが客も同じ感情を持たないと、最初の所で掛け違ってしまいそうな話だったけれど、平たく言うと「惚れてまうがな」な魅力全開の女性だった。保亜美、アイドルって言われているけれど、客側は浦川の方が魅力的に見えたんじゃないかな。その凹凸の加減の出し方具合もよかったのと、場の回し方がとても好き。山下裕子、率直に、こういう校長先生がいたらホント頼もしいよなぁ、の魅力。反面、河内浩の、ダメな先生具合も面白い。私には、河内浩は、頼りないけれど突っ走る時の、斉木しげるに非常に似て見えた。清水直子、精神的にも、もうどうにもならない母、というのが、ものすごくリアリティがあって。ちょっと怖かったけれど、健が逃げ出したくなる、という状況がリアルに見えた。

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