<観劇レポート>劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 劇団四季 |
題 | ロボット・イン・ザ・ガーデン |
脚本 | 長田育恵 |
演出 | 小山ゆうな |
日時場所 | 2020/10/03(土)~2021/03/21(日) 自由劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページに、四季について説明があります。
言わずと知れた、日本最大の劇団かと思います。
過去の観劇
- 2024年09月20日【観劇メモ】劇団四季 「ゴースト&レディ」(2024東京)(随時更新)
- 2024年09月06日【観劇メモ】劇団四季「ウィキッド」(2024年大阪公演)(随時更新)
- 2024年07月26日【観劇メモ】劇団四季「ふたりのロッテ」
- 2024年06月27日【観劇メモ】劇団四季 「美女と野獣」
- 2024年06月22日【観劇メモ】劇団四季 「ライオンキング」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
アンドロイドが人間に代わって家事や仕事を行う、今からそう遠くない未来。
イギリスの田舎町に住むベンは両親を事故で失って以来、無気力な日々を過ごしていた。
妻・エイミーとの夫婦仲もうまくいかない。
そんなある日、庭に壊れかけのロボットが現れる。
「きみの名前は?」「…タング」
ロボットに不思議な魅力を感じ、ベンはあれこれと世話を焼く。
そんなベンに愛想を尽かし、ついに家を出て行くエイミー。
ショックを受けるベンだが、タングを修理するため旅に出ることを決意する。
アメリカ、そして日本へ。やがて、ある事実が明らかになる……。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年2月20日 13時00分〜 |
上演時間 | 185分(90分-20分休憩-75分) |
価格 | S席9900円 全席指定 四季の会会員価格 |
チケット購入方法
shikiオンラインで予約、クレジットカード決済しました。
送られてきたQRコードを当日受付で提示しました。
客層・客席の様子
女性95%、男性5%くらい。女性は、30代upが多かった気がします。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・ミュージカル
観た直後のtweet
劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」185分休20含
ロボットはいい。他は軽薄で全く合わず。1幕、何故その行動なのか動機が全く見えない。場転やセットの軽薄さキャラのステレオタイプさがひどい。2幕やはりなテーマ見えるも、強制的に泣かしてる感覚。曲も印象に残らず。何故評論家は絶賛する? pic.twitter.com/DVzamOmU6x— てっくぱぱ (@from_techpapa) February 20, 2021
満足度
(2/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
昨年から、観劇の機会をうかがっていたのだけれど、なかなかスケジュールがあわずに観れていなかった。評論家が選ぶ2020年の観劇ベストに、この作品を挙げる人が何人かいた。おそらく再演されるだろうけれど、千秋楽を迎える前に初演を是非観なくては、と思い観劇。元々は、イギリスの小説だが、そちらの方は全く読んでいないけど。きっと、めちゃ感動して感想書きたくなるんだろうな、と思っていたのですが。
…いやはや、大ハズレ、なミュージカルだった。評論家がどうしてこれを「ベスト」だと挙げているのか全く理解に苦しむ。1幕で帰りたくなった。評論家、何観たの?
特に1幕が酷い。
どうしてベンが、カリフォルニアに旅立つのか、その動機が薄すぎる。嫁さんに離婚を突き付けられた直後だよね。庭に入ってきたロボットがいくら可愛くても、それを修理しに旅経つのが、全く理解できない。ミュージカルだから、物語に全ての話のつじつまを合わせろ、とは思わないけれど。全編を貫く物語の第一歩、「何故旅を始めたのか」が説明できないと、さすがにかなり辛い。その時点で、?マークが頭の中を占めて止まらない。
タングを何とか治したいなら、アンドロイドが発達している時代なんだから、まずはメールなりテレビ電話なりで、問い合わせするもんだろうよ。しかもファーストクラス(スーバーなんとかクラス?)の金、100万ポンド(一億円くらい?)払えるなら、 旅する必要ある?…どうやら原作では、父母の遺産を相続して金には困っていない、という設定がある様子。確かに、豪華な家は両親から相続した、っていうセリフがあったけれど…。しかも、タングが、どうして壊れそうなのか、どのくらい持つのか、この時点では説明が雑過ぎてよく分からない。
要は、主人公が何に困って旅しているのか、最後まで観ても分からない。ラストになってくると「あー、2人の成長のための旅だったんだな」ってのは分かるけれど、それはあくまで、物語への意味付けであって、本来の目的ではないし。しかも感動っぽい歌で煽ってくるので、取ってつけた感大。
この時点でイライラが募ってくる。イライラしてくると、何見てもダメなのだろうか。いろいろと粗が見える。
空港のシーンは、どこの安いコスプレですか、という感じ。転換が荒いというか、見ていてシンドイし。コーリーが「ディープラーニング」について話すけれど。それとアンドロイドは特に関係ないよね、という冷静なツッコミをしたくなるし。リジーは、どういう訳か最初からベンにラブラブモードで不自然全開だし。カトウは、10年くらい前に流行ってたアメリカのカートゥーン系アニメですか?というくらいに「欧米視点で観た日本人」だし。あと、度々登場する「アンドロイド」は、タケモトピアノのCMか、ストレッチマンですか、というイケてなさだし。「ホテル・カリフォルニア」って、何かの冗談ですか?という気も。あのホテルは夢なのか、ゴロが良かったから名付けたのか。アキハバラでオタ芸ダンス・・・ダンス自体は良かったけれど、それ、日本人に言っても余に現実離れしているよね・・・という感覚で観ていて寒気がする。
要は、出てくるもの出てくるもの、なんじゃこりゃ、という感想しか出てこなかった。
ロボットやアンドロイドを扱った演劇作品は、沢山ある。要は、それなりに知恵が出されて、「アンドロイドとは何か」を、人々は物語を通して考えてきた分野だ。その中にあって、今回のアンドロイドは、物語の中でどう位置づけるのかも、見えてこなかった。ボリンジャー博士は、要は「アンドロイドに、殺人をディープラーニングさせれば、兵器になる」という事を言いたかったのだろうけれど。では、この世界ではロボット三原則はどう扱われているのかが気になってくる。さすがに常識のはずだし、そこを話題にして欲しいのだけれど、全く出てこない。そのなかで「殺人を記憶させろ」って言われても、そもそもどう考えてたの?チミたち、と説教したくなる。殺人を記憶したチップを、タングに埋め込んだみたいだけれど、結局タングがどういう位置づけだったのかも、説明が雑過ぎて、意味が読み取れない。
ロボットの物語。ファンタジー性の強いキャラメルボックスの作品でさえ、そういった「巨人の背中に立つ考察」の基本線は、決して外していなかったのに。ここには、それらしきものが全くない。
あー、書いてて辛くなってきたので、このくらいにしておく(汗)。とにかく見ててシンドイ。
全編を貫くテーマを見直すと。タングは「こども」のメタファーだ。突如授かったこどもを守るために、ベンが成長する物語。そして、こどもであるタング自身が成長する物語。
父にとって、こどもは中々理解しがたい。自らの腹に子を宿す母とは違って、父が子供の誕生を理解するのは、実はとても大変な作業だ。私自身、自分の経験からも、実感を持ってそう思っている。そこには、確かに、人間的な成長、覚悟が必要になる。その点は共感できるのだけれど。…そもそもベンは、成長が必要な人だったのか?という気もする(だって、両親の死に落ち込んでいる事は、こどもとは関係ないし)。もし成長の過程を見せるのであれば、もう少し工夫がないと辛い。例えば戯画的に、…ミュージカル「ビッグ・フィッシュ」のように、まるで絵本の出来事のように描けば、様子は全く違っていたのかもしれない。でも、アンドロイドの世界観含めて、中途半端にガチに描かれてしまうと、メタファーの効果が弱まる。単にツメの甘い物語になってしまう。むしろ、タングを「こども」のメタファーにしたからこそ、時代背景として描く「アンドロイド」の描き方が、雑過ぎて、物語全体をうっとおしく覆っている、という見方もできるのかな、と思ってしまう。
加えて、一幕の途中で出てくる、娼婦アンドロイドのシーン。劇団四季としては、大分冒険したな、とは思ったけれど(近くに小6くらいの女の子が観ていたので、ちょっとヒヤヒヤした)。やるなら、ファンデーションは着ないでやらないと…。蛍光塗料が光って奇麗けれど、シーンの意味から考えると、生身の肉体を晒さないと、片手落ちだよな、とも思った。
ここまでくると芝居に集中できず。ミュージカルで大切な曲も、全く頭に旋律が残らなかった。カトウとベンが歌い上げる曲はなかなか良かったのと、アキハバラのオタ芸ダンスは、ダンスだけで観たらなかなか迫力あったけれど。それ以外、全く残らなかった。
と、ここまでマイナスポイントばかり書いてきたけれど。唯一救われたのは、タングの動きの巧みさ。人形浄瑠璃のように二人の男女が操るタングは、とても可愛い。特に目の動きがとてもいい。眼球の素材がきらきら光っていて。何だかいつもウルウルと泣いて空を見ているようなタング。しかも人形を操作する二人が、タングの声を出し、歌を歌う。こんな手があったか、と素直に感心せずにはいられなかった。これが無かったら、悲惨すぎて最後まで観れなかったと思う。