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【観劇レポート】ガガ「ゾンビ(ともだち)」

#芝居,#ガガ

【ネタバレ分離】 ガガ「ゾンビ(ともだち)」の観劇メモです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名ガガ
大ガガ#3
ゾンビ(ともだち)
脚本神山慎太郎
演出神山慎太郎
日時場所2025/08/22(金)~2025/08/25(月)
早稲田小劇場どらま館(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

演劇ユニット 神山慎太郎・広井龍太郎・武田紗保の3人ユニット

❔ガガについて❔
早稲田大学出身の俳優らによって2019年に結成。 現在の構成員は神山慎太郎と広井龍太郎と武田紗保。
思わず体が熱くなるような劇的すぎる瞬間を愛おしむことによって、お手上げ状態の現実を少しでも好きになりたい。
そんな神山がお話を作り、侍みたいな心持ちで広井が演じている。
西部劇や時代劇など笑ってしまうほど大きく力強いフィクションを扱う大ガガと、ワンルームに収まるような小さく細やかなフィクションを扱う小ガガの2つの公演スタイルを持つ二刀流劇団。

ガガ

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

あらすじ

カムパネルラが噛まれた。
もう20年近く乗っている銀河鉄道、きれいなところはだいたい通り過ぎて、ちょっと生々しいものを焼いたような匂いが漂う銀河の最果てで、カムパネルラがゾンビに噛まれた。ジョバンニとカヲル子はどんどん自我を失っていくカムパネルラを、必死に留めようとする。「ほんとうのしあわせ」を見つけるために、ずっと一緒に行くはずだったのに。
迫りくるゾンビハンター、切符を狙う博士たち、銀河鉄道にそれぞれの明るさがせめぎあう!
「カムパネルラって呼んだら、返事はしなくてもいい、こっちを向いて。そうしたらきみはカムパネルラなんだから。」
さよならをしなきゃいけない時のための、ゾンビ冒険物語。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2025年08月22日
19時30分〜
上演時間100分(途中休憩なし)
価格3800円 全席自由

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

「銀河鉄道の夜」。カンパネルラとジョバンニはどうやら別れなかったようで、カオル子という女の子も一緒に何年も銀河鉄道で旅をしている。ゾンビがいる星の駅に停車中に、カオル子の不注意でカンパネルラがゾンビに噛まれた。このままじゃカンパネルラがゾンビになっちゃう。ゾンビハンターが現れてカムパネルラを殺しにかかるなか、カムパネルラはどんどんゾンビになっている。だがカンパネルラ、人を噛みたくなると難解な詩を朗読し出してよく分からない。一方、ジョバンニの母親はジョバンニが一向に昏睡状態から目覚めなくて困っている。カムパネルラとの旅が終わらないから昏睡から冷めないのだ。博士と一緒に二人の夢の世界に潜り込んでジョバンニを連れ戻そうとする。カムパネルラはもはやゾンビに。でも、ゾンビになってカオル子とジョバンニを「噛まない」ように最後まで抵抗を続けていた・・・という、ちょっとこの記載だけだと、分かるようで分からないお話。

団体初見。チラシのあらすじが気になって観劇。いやもうこのあらすじ、面白い!、しか考えられないでしょうと何度も読み直してしまったが、予想は大当たりだった。神山慎太郎は役者としては何度も拝見しているが、脚本を書いた作品を観るのは初めて(だと思う)。銀河鉄道の夜を下敷きにしているとはいえものすごい脚本書をく人だ。

全編「コントか!」という位に笑いが絶えない。ゾンビハンターとのやり取りや、カムパネルラとカオル子との恋をジョバンニが知る話や、ジョバンニの母の話とか、ザネリの話とか。もう笑い過ぎてお腹が痛くて、前かがみになったり後ろにのけぞったりしているのに。ラスト、本当にとんでもないところに連れていかれる。細かい伏線の数がものすごく多い作品だけれど、自分で自分をカムパネルラが噛もうとするとは…。「本当の幸いなんてないかもしれない」でも、カムパネルラにとっての本当の幸いは、やっぱり「他人の幸を願う心」で。ジョバンニとカオル子がゾンビカンパネルラをおびき寄せ合戦する様は、笑い転げ腹筋が痛いのに、でも同時に涙が止まらなくなって。…笑ってるのに泣いているという、私的に演劇に求めている最高の場所に連れていかれた。

観終わって冷静に考えてみると結局は「銀河鉄道の夜」をものすごく精密に、解像度を上げ追体験させている物語と言えるかもしれない。細かいモチーフ、例えば母親と牛乳(配達)の話とか、細部に至るまでに「銀河鉄道の夜」を取り上げていて、笑いに昇華している部分も多々あるが、それは同時に原作の理解の解像度が高いということで。最後の最後、ジョバンニが自らを噛むことも、実はザネリを助けたカムパネルラと同じ構造で、やはり原作の解像度を上げていると取れるのだけれど。…ちょっと幻想的な物語である「銀河鉄道の夜」を身も蓋もなく説明したら流石に興ざめだから、かなり笑いのエスプリを入れながら、それでもやっぱり宇宙とカムパネルラとジョバンニ(とカオル子との)の別れを描き切ってみたように思える。

加えて、昨今のゾンビものの作品…私の感覚だと海外ドラマの「ウォーキング・デッド」だが他にも複数作品あるはず…要は「愛する人がゾンビになったら」というどうしようもない絶望的な状況の感覚を、カンパネルラとジョバンニの別れの構造にはめ込んでいるのが凄い。「ウォーキング・デッド」の葛藤は評価されたけれど、あの感覚を「銀河鉄道の夜」に持ち込むなんてよくそんな事が考えつくな…と感心。銀河鉄道の夜を知っていればかなり深く、知らなくてもおそらく何かを感じ取れる作品。私的には、原作をどこか心地よく「魔改造」された感覚。そんな鋭すぎる刃物のような作品だった。

役者さん。もう一人一人のキャラが濃すぎて全員良かったのだが、一人挙げるならオーバーオールを着たカオル子役の武田紗保の無邪気さとラストの涙が忘れられず。

今年ベスト10に入りそうな作品。

舞台#芝居,#ガガ