観劇

【観劇レポ】怪奇月蝕キヲテラエ「遺体はまだ発見されておらず、」

【ネタバレ分離】 怪奇月蝕キヲテラエ「遺体はまだ発見されておらず、」の観劇メモです。

初回投稿:2026年09月23日 7時59分
最終更新:2026年09月23日 8時03分

公演前情報

公演・観劇データ

項目 データ
団体名 怪奇月蝕キヲテラエ
回 短編集
題 遺体はまだ発見されておらず、
脚本 三浦仁(怪奇月蝕キヲテラエ)
演出 三浦仁
日時場所 2026/09/19(土)~2026/09/22(火)
新宿眼科画廊(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

怪奇月蝕キヲテラエとは

専修大学演劇研究会『劇団畝傍座』引退を機に,主宰・三浦仁が2016年2月22日に旗揚げした劇団。

現在、劇団員は
・三浦 仁(主宰/脚本/演出)
・藤真 廉(役者/衣装小道具)
・木山 りお(役者/制作)

怪奇月蝕キヲテラエ

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

『きょう未明、東京都内で同時多発的に発生した複数の行方不明事件の捜索が終了しました』

『依然行方が分からなくなっている人物や、何かしらの事件に巻き込まれた疑いのあるもの、
死亡として認定されたあとに目撃情報が寄せられている人物など、経緯や背景は異なりますが、
いずれも失踪宣告を持って既に認定死亡となっているとのことです』

『捜査関係者によりますと、「事件・事故の両面での捜査を継続したが、事実解明には至らなかった」としており、警視庁は「現時点でそれぞれの事件に関連性は確認されていない」としたうえで、
目撃情報の提供は引き続き求めていくとしています』

「これらの事案についてはいずれも、遺体はまだ発見されておらず――」

【上演作品一覧】
①『檻秘め』(おりひめ)

母が行方不明になって7年が経った。

私はすっかり大人になって――いや、ならざるを得なくて。

幸いにも親戚が面倒を見てくれたので、無事に高校は出られたけど。

本題に戻そう。

母の生死はわからない。

新宿の占い師の店を出たのを最後に、足跡は消えている。

だけど、いい加減にはっきりさせたいのだ。

「失踪宣告」をすれば、母は法的に死んだことになる。

さすれば私は晴れて「遺族」だ。

やっと整理がつけられる。

せめて遺書でも残っていれば、こんな悩みはしなかったのに。

出演(役名 - キャスト名)

椎名植 - 宮崎葵
有頭辰武 - 羽田敬之
尺卯瑠奈 - 橋本結衣
仙川詐空 - 木山りお
番井倉尼 - 成田愛美

②『地糊』(ちのり)

近頃、大学内にて小判の落し物が多いらしい。

らしい、というのは伝聞であり、私以外の人間が口にしているのを耳にしたのだ。

そもそも私は学外の仕事が多いので、明日も海外への調査なのだが。

本題に戻そう。

小判なんて普通は持ち歩かない。

しかし、ここは芸大だ。

彫刻、絵画、工芸、建築、あらゆる芸術を学ぶ場所。

小判が数枚落ちてたところで、稀によくある珍事だろう。

しかし、落し物は累計20枚。

発見されているだけで、届けられているだけで20枚。

そろそろ、誰かが面白半分でネットオークションにでも出す頃合いだ。

これも一種のアートだろう。

作り手の意図を、理解する者はいるのだろうか。

出演(役名 - キャスト名)

砧いんく - 仮名ヱ薫
槌谷真礼 - 寺園七海
三角殴輔 - 能見千秋
鈎刃舞 - 藤真廉

③『黒白』(こくはく)

最近、後輩が自信をつけている。

NPO法人の相談窓口なんて仕事だと、ストレスを溜めないことが一人前の条件である。

相談内容も重いモノばかりなのだから、せめて真正面から食らわないことだ。

本題に戻そう。

後輩が自信をつけている。

もっと言えば、自分の意見を持つようになっている。

柳のように聞き流すでもなく、あえて曖昧にして余計な対応を避けるでもなく。

真摯に、真正面から、遺族や相談者に向き合っている。

人間として素晴らしい。

先輩として誇らしい。

ちょっと前に言い争って以来、私と目を合わせないこと以外は。

出演(役名 - キャスト名)

尺卯瑠奈 - 橋本結衣
仙川詐空 - 木山りお
番井倉尼 - 成田愛美

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目 データ
観劇日時 2026年09月22日
17時30分〜
上演時間 90分(途中休憩なし)
価格 3000円 全席自由

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。

感想(ネタバレあり)

遺体はまだ発見されておらず、

物語は団体の紹介の通り。30分ほどの短編3本。1本目『檻秘め』と3本目『黒白』は設定に関連がある…というか、『檻秘め』の後日談を物語の視点を変えて描いたもの。団体は2度目だけれど前回はプロデュース公演だったので、単独の作風として観るのは初めて。基本は濃密な会話劇。論理的に展開し過ぎる会話とでも言うのか、独特の堅苦しさと深刻さをまとっている雰囲気はあるものの、一言たりとも聞き逃すまいと自然と集中力を高めて聴いて、物語に没頭している自分に気が付く。濃密な時間でとても楽しい。この作風が、劇団のいつもの作風なのかは分からず。もう何作か観てみる必要がありそう。

各短編のメモ

『檻秘め』
失踪した母について、占い師を通して謎を解いていく話。どこかで聞いた事があるような物語ではある。ただ3本目の『黒白』についても言えるのだけれど、どこか「そもそも他人の事なんて、どんなに想像しても分かりっこない」っていう、ある種とても醒めた視点が、物語全体の通奏低音として流れているように感じる。6通(だったかな、うろ覚え)の手紙を最後に、途絶えてしまった母からの連絡。手紙を読めば、その途絶えた理由を推測できるのかもしれないし…出来ないのかもしれない。突然、病死して途絶えたのかもしれないし、突然、別の誰かと家庭を持つことになって手紙を書くのが億劫になったのかもしれない。想像することはできる。でもその想像が結ぶ虚像は、どんなによく出来ていても「想像」でしかない。ラスト、カットアウトの暗転の中で、それでも母の事を想像することを止める事が出来ない…想像力の中にいる人間の性みたいなものを突き付けられたような気がした。

『地糊』
贋作を作れてしまうマシン(名前忘れてしまった)…というのが物語の中では現実的に語られている一方で、実際は結構荒唐無稽な設定に思えるがゆえに、具体的な話をしているのにお話全体が何か別のもののメタファーなんじゃないか…みたいなことに途中で思い当たる。昨今流行りの「AI」を当てはめるとピタリと来るのだが、「実はAIのお話」みたいな、安直な対応関係で説明するのもどうもピンと来ない。でも、他人の「創作の意図」を借りて、小金儲けしている人って今の世の中いっぱいいそうな気もする。日常生活で、ふとこのお話の事を思い出してしまいそうな…後々もの尾を引いてきそうな癖の強いお話だった。美術鑑定士に鑑定を依頼することで始まる独特の雰囲気感が面白い。

『黒白』
失踪してしまった従妹。その失踪の理由を想像し「意味づけ」をしてしまえばしてしまうほど、「意味」と「現実」がもし異なっていたら、その従妹の尊厳を傷つけることになる。だから私は事実を客観的に受け入れて、それ以上追求しない…。1本目の感想にも書いた「他人なんて理解出来ない」という通奏低音を、別の視点で軽やかに浮き彫りにしてくる。ただ面白いのは、言うまでもなく「物語」の起点は人間の想像力で。事実と異なるものを、それと知りながら想像してしまうのもまた人間で。劇中に登場するNPOの職員のような仕事だと「想像」は苦痛なのかもしれない。でもその苦痛…ストレスって、結局「物語欲」によるものだったりもするよなぁ…なんていう、根源的な人間の性のことを、またしても考えながら観ていた。

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