【ネタバレ分離】 ワンツーワークス「報道指針」の観劇メモです。


もくじ
初回投稿:2026年10月23日 21時48分
最終更新:2026年10月23日 21時49分
公演前情報
公演・観劇データ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 団体名 | ワンツーワークス |
| 回 | シリーズ[時代を見つめる]② |
| 題 | 報道指針 |
| 脚本 | オ・セヒョク(韓国「ネバーエンディングプレイ」代表) |
| 翻訳 | みょんふぁ(SORIFA) |
| 演出 | 古城十忍 |
| 日時場所 | 2026/10/16(金)~2026/10/25(日) シアター風姿花伝(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
『ワンツーワークス』は、古城十忍(こじょう・としのぶ)が主宰する劇団です。
過去の観劇
- 2025年12月01日 ワンツーワークス「仙人草の凱歌イン・ヨーロッパ」
- 2025年07月25日 ワンツーワークス「パラサイト・パラダイス」
- 2024年11月14日 ワンツーワークス「線引き~死者に囲まれる夜~」
- 2024年07月19日 ワンツーワークス「神[GOTT]」
- 2023年11月05日 ワンツーワークス「アメリカの怒れる父」 ・・・「#ワンツーワークス」のつづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
本作は、1980年代の大韓民国で実際に起こった軍事政権による言論弾圧の実話「報道指針事件」をベースにした裁判劇。国家権力の前に、個人が真実を話すためにどれほどの「対価」を支払わなければならないのかを鮮烈に描き出します。
その目的は、単純に過去の「歴史的事件」を再現することではありません。
作者のオ・セヒョク氏はこう語っています。
「時代を超えて存在する『指針』に向き合い、真実の重みとマスコミの使命を振り返ることによって、今日の私たちに必要な勇気とは何なのかを改めて考えたい」
どうぞ、この裁判の行方を見守って考えてください。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
| 項目 | データ |
|---|---|
| 観劇日時 | 2026年10月23日 14時00分〜 |
| 上演時間 | 140分(途中休憩なし) |
| 価格 | 5500円 全席指定 |
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
報道指針
軍事政権下の韓国。「報道指針」と呼ばれるマスコミ各社に届くFAX。そこには、「どの記事を大きく取り上げろ」「取り上げるな」などの指示がある。その指示を告発した新聞記者と小さな雑誌の編集者は、国家機密の漏洩の法廷に立たされていた。ふたりは元々は大学の演劇サークルの同期として知り合った。サークルを創部した先輩は、今や法学部の学科長にまでなってたまに部室を訪れる。酒を酌み交わし、人の心の叫び…「独白」を語る、演劇にも社会にも理想に燃えている人々だったのだが。検閲された作品を上演して、警察に捕らえられたこともあった。「報道指針」の実際にあった事件と、演劇をはじめとした若い頃の理想を貫く事を重ねて描いた作品。
2016年の作品。たまたま、アフタートークに作者のオ・セヒョクが出演する回を観た。背景の情報をいろいろと聞けたのだが、韓国では月に一回くらいはどこかで上演されているくらいの有名戯曲らしい。また、韓国の演劇大学の入学試験では受験者が選んだ課題で「独白」する試験が必ずあるらしいのだが、この作品のラストがあまりにも題材として選ばれるので「選んではいけないリスト」に挙がっているくらいの有名作。その有名作をみょんふぁが日本語に翻訳して、古城十忍が演出するスタイル。
結果的には凄い作品を観たなぁという感覚。腐敗する人間の性の根とでもいうのか。人間の暗部で嫌な部分なのだけれど、でもどうにもならない事…を見せつけられる。それと並行してその状況に反抗して、理想に燃える若い人もいるのだ…という事もまた描いてくれる。でもそれはひょっとすると単に「若さ」故かもしれない。演劇が社会を変える…みたいな感覚は、80年代を最後に日本からは消えてしまったように思うけれど、ちょっと懐かしい、アツい記憶を呼び起こしてくれる作品でもあった。
冒頭から裁判劇かと思いきや、同時に重ねられる「大学の演劇サークル」の話。日本だとよくある…劇作家の経験を基にした「演劇部の演劇」にちょっと「大丈夫か?」な感覚を持つのだけれど。「演劇というものチカラ」と同時に「若い頃の理想に燃えてたチカラ」を描いているように、徐々に展開していくのが良い。
1980年代の実際の事件という事だけれど、終演後に配られた古城十忍の「御礼」という封書にある、韓国の常識的な認識の補足によると、実際には裁判は行われていないので、要は虚構の物語らしい。オ・セヒョクの空想の中で、過去の演劇を学ぶ学生と同時に、架空の裁判風景を再現した演劇、という事だろう。ただ、それが事実かどうかは、物語本質とはあまり関係が無く、むしろ大胆に虚構を導入して良かったように思う。
とは思うものの。軍事政権下であるとはいえ「韓国怖いなぁ」みたいな感覚も、純粋な感情としてに持つ。上意下達な文化のあるように見える韓国社会。軍事政権下で諸々の統制がなされていくと、例え民主主義で憲法上の表現の自由があったとしても、こんな変な仕組みがはびこっていくのかなぁ…。大学の演劇部の「酒を飲めばなんとかなる」的な描写は、2016年の戯曲とはいえ、2026年の日本だと(その時代の描写としては)賛否両論を産みそうな気はする。物語として描いている事はおそらく「報道指針」事件そのものというより、理想を持っていてもそれが実現できない状況はどんな人にも訪れる。その最も明るい面と位暗い面を、同時に描いている作品。とても卑近な例だけれど…日本だと「踊る大捜査線」の、青島と室井さんの関係…的な話なのかもなぁ…なーんてな、と思ったり(いや、物語の意味づけは全然違うんだけれど。あくまで物語の構造として、ね。)
学生が、ブレヒトの「ガリレイの生涯」を演じる際に、ワンツーよーくすならではの"ムービング"が入る。アフタートークでは、(ワンツーワークスの"ムービング"の事を知るはずもない)オ・セヒョクも「驚いた」と話していたが、その驚きに対して古城十忍が「海外戯曲でムービング入れるの初めてかも」と言っていたけれど…いやいやあなた、「アプロプリエイト」の乱闘シーンでムービング入れとったやん、とツッコミたくなった(笑)。気が付けば「アプロプリエイト」も、その後トニー賞のリバイバルを取ったりして世界的には有名戯曲だけれど、「報道指針」もそうなるのだろうか。
アフタートークで印象的な言葉。上演時間135分は長いが、最初に書かれた戯曲を忠実に再現しようと諸々の場面を復活させたが故の135分だったらしい(実際は140分)。韓国での上演の際にはカットした場面が復活している事に、オ・セヒョクが感銘を受けている場面アリ。
今回日本語に翻訳されたので、あちこちで上演がなされてほしい作品でもある。ただ、今回の上んに沿って演るなら140分は覚悟。


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