<観劇レポート>theater 045 syndicate 「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」

#芝居,#theater 045 syndicate

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 theater 045 syndicate「ヨコハマ・ヤタロウ」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名theater 045 syndicate
TAK in KAAT  theater 045 syndicate 第3回劇場本公演
ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~
脚本佃典彦(劇団B級遊撃隊)
演出中山朋文(theater 045 syndicate)
日時場所2021/09/30(木)~2021/10/03(日)
神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)

CoRich 公演URL

団体の紹介

CoRichにはこんな紹介があります。

2009年、主宰の中山朋文が、地元である横浜からの発信のため設立。
2012年、劇王Ⅹ天下統一大会神奈川予選にて優勝、初代神奈川劇王となる。
2014年、今はなき相鉄本多劇場にて第1回本公演「12匹」を上演。
また、ネオゼネレイター・プロジェクトの大西一郎氏と共に、「横浜ベイサイドスタジオ」を運営。地元の演劇シーンの活性化に寄与する。
劇場のみならず、中華街のレストランやバーでのライブ、ダンスイベントなども手掛ける。

theater 045 syndicate

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

2018年1月、横浜の古びた雑居ビルで上演され、翌19年には下北沢にてリニューアル上演。「掘りだしモノ!」「絶滅危惧種!」と大好評だった痛快作が、横浜に帰ってくる!

砂嵐吹きすさぶどこかの街で、今日もアイツは走ってる。
「ハマの空気もシケちまった・・・こんな時代に、こんな時代だからこそ、アイツみてえに暑っ苦しい奴が見てえのさ・・・そろそろアイツに暴れてもらおうじゃねえか!」
アイツは、いまどの空の下に?

佃典彦書き下ろし、啖呵と銃弾の飛び交う“世紀末人情活劇”ヨコハマ・ヤタロウ、地元凱旋!

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年9月30日
19時00分〜
上演時間115分(途中休憩なし)
価格5000円 全席指定

チケット購入方法

チケットかながわ(Kame)で、座席指定・決済をしました。
セブンイレブンで予約番号バーコードを見せて、チケットを受け取りました。

客層・客席の様子

男女比は6:4くらい。様々な年齢層の人がいました。

芝居を表すキーワード
・コメディ
・シリアス
・にぎやか
・アクション
・ハードボイルド

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

そして。ヤタロウである。

生涯忘れ得ぬ舞台、というものがあるもので。2019年に下北沢で観た「ヨコハマ・ヤタロウ」は、その一本。当時、観た感想をここに書きなぐっている。以降、theater 045 syndicateとしての単独公演は一度もなく、主演の今井勝法の出演作を追いかける日々。昨年一度、ヤタロウの続編のチラシが舞い込んだ噂を聞いたが、コロナで立ち消えてしまった。。。それが満を持してのKAAT公演。

期待しないワケがない。でも正直、期待と同時に不安がある。2019年のヤタロウは、小劇場B1。手を伸ばせば、ふんどし姿のヤタロウの裸体に触れれる近さ。B1の入り口近くの島の、最前列に座ったのを鮮明に覚えている。この芝居の良さは、小さい芝居小屋での緻密な創り込まれ方、だと思っていた。それが、KAAT大スタジオ…。ヤタロウの世界観にはデカすぎるんじゃないか。そう心配したのだけれとも。…完全に失礼で、杞憂な心配だった。目の前に現れたのは、KAAT大スタジオを存分に使って暴れ回るヤタロウと、展開されるヤタロウの世界観。荒唐無稽なハードボイルド。酔いしれた。小屋の大きさなんて関係なかった。2019年のチラシとよくよく見比べてみると、スタッフ陣、照明は阿部康子、音響は岩野直人、美術は袴田長武、舞台監督は村上洋康、演出は中山朋文で、今回も変わっていない。

ストーリーは、相変わらず荒唐無稽。20xx年の荒廃し砂嵐が舞い、ウォーリャーズか行き交う日本。ヤタロウは今日も逃げていた。前作同様、相手を殺す前に「人生でやり残したこと」を聞き、それを引き受けるヤタロウ。しかし、今や生き延びるために殺し過ぎて、むしろ、ヤタロウに人生を引き受けてもらうために殺されたい人まで出る始末。相手の人生を引き受けられなくなっていて・・・、託された読破出来てない小説を片手に、けん玉を練習して、ボックスステップ?の練習をするヤタロウ。そしてやはり、誰かに託された少女を連れている。横浜は悪徳なヨコハマ市長によって牛耳られ、砂嵐を避けるために壁を建設。ヤタロウの愛する妻の墓はなくなっていた。復讐を誓うヤタロウ。だが、実はヨコハマ市長は、ヤタロウに果たしても果たし得ぬ恨みがあった・・・と、自分で書いてても何のことやら(笑)、なお話。三人の占い師など、どこかマクベスを思わせるストーリー。そしておそく、私も知らないB級?西部劇が下敷きになっているように思うお話。脚本は、佃典彦の書下ろし。

荒唐無稽なストーリーだけれど。ヤタロウの生きる世界、荒廃したヨコハマが、実際にあるんじゃないか、と思わせる錯覚を作り出す。照明・音響・舞台美術の鮮烈さ、カッコよさ。随所にアクションを盛り込み、銃で撃ちあい、ナイフで斬りつけあう。ただただ、痛快。楽しい。錯覚中の錯覚。これ以上の演劇が演劇である理由があるのだろうか、とさえ思ってくる。

主演の今井勝法、今回はほぼ全編、素っ裸。時にバスタオルを腰に巻きながら、あるいはケロリンのバケツを股間に当てながら、銃をさばき、殺陣をする。カッコ悪いけれど、カッコイイ。服を着てたのは、回想シーンくらいなもので、回想シーンが終われば「回想シーンが終わったから」トボトボと脱ぎだす。間の抜けた面白さ。そういえば、前作「ヨコハマ・ヤタロウ」に比べると、コメディテイストというか、笑いの部分がかなり増し増しになっていたように思う(前回の観劇がかなり美化されてはいる)。それと、ヨコハマ市長役の寺十吾が、カッコよくて不気味。前半、マイクで「はい、その通りです」と同じことしか喋らないのが、政治家らしくて効果的で。今まで観ている演技とは、また別方向で面白い。市長の秘書、佐藤みつよが奇麗で迫力強し。どこかで見た雰囲気だな、と思ったのだけれど、ふと、USJ「ターミネーター 2:3-D」の綾小路麗華を思い出す。

KAAT大スタジオではいろんな芝居を観たけれど、ここまで迫力の強かったものは初めてかもしれない。ラスト、ヤタロウはお笑いグランプリの漫才ネタを練習しながら死んでしまったけれど、身勝手ながら、続編を望んでしまう。きっとまた戻ってきてくれる。そう信じたい。

2021年10月02日0:37追記
と、ここまで書いて。記事を公開して、その後、一日置いて読み返して。はじめて当日パンフを読んだら…。「ヤタロウは七部作です」と、かぬかしやがる。死んでねえのか、ヤタロウ!!!