<観劇レポート>ラビット番長「虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜」

#芝居,#ラビット番長

【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ラビット番長「虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜」の観劇レポートです。

公演前情報

公演・観劇データ

項目データ
団体名ラビット番長
第33回 池袋演劇祭 参加作品 /ラビット番長 第53回公演
虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜
脚本井保三兎
演出井保三兎
日時場所2021/09/30(木)~2021/10/04(月)
シアターグリーンBASETHEATER(東京都)

CoRich 公演URL

団体の紹介

劇団ホームページにはこんな紹介があります。

■主宰の井保三兎によるオリジナル作品を 舞台上演する事を目的としたプロデュース団体。 現在、東京を拠点に演劇活動を展開中。 地方公演も積極的に行っています。

ラビット番長

過去の観劇

事前に分かるストーリーは?

こんな記載を見つけました

「虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜」は、虹の観測による地震予知を考えた、大正・昭和期の地震研究家、椋平広吉をモデルにした物語です。

※池袋演劇祭のフライヤーにて上演作品を「コマギレ」と事前告知しておりましたが、感染症対策などの諸事情により、急遽、演目を変更いたしまして「虹の人〜アスアサ四ジ イヅ ジシンアル〜」という作品を上演することとなりました。ご了承いただけたら幸いです。

ネタバレしない程度の情報

観劇日時・上演時間・価格

項目データ
観劇日時2021年10月2日
18時00分〜
上演時間(実測)105分(途中休憩なし)
価格4000円 全席自由

チケット購入方法

劇団ホームページからのリンクで予約しました。
当日、受付でお金を払いました。

客層・客席の様子

男女比は5:5くらい。
様々な年代の人がいました。

観劇初心者の方へ

観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。

芝居を表すキーワード
・会話劇
・静か
・考えさせる

観た直後のtweet

満足度

★★★★★
★★★★★

(5/5点満点)

CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
ここから先はネタバレあり。
注意してください。

感想(ネタバレあり)

いつもの通り、事前には何も見ずに観劇したので、途中、史実かどうかというのに戸惑ってしまった。観劇後調べたら、実在の人、椋平広吉(むくひら ひろきち)をモデルにした作品。椋平広吉については、同じタイトル「虹の人」で、新田次郎、という人によって小説家もされているらしいが、その作品との関連は不明。

本人にしか見ることができない虹で、地震の予知をする虹の人、椋平と、ひょんなことから出会った京都大学教授の石野との交流を通し描く作品。椋平が世間に取り上げられ、もてはやされ、そしてペテン師として後ろ指刺される。その過程を描く。作品自体は、淡々と淡々と、あまり抑揚をつけずに進む物語。

どこまで史実に忠実なのか。少し調べた限りでは、明確な線引きが分からなかった。京都帝大理学部長の石野又吉は実在の人物らしいが、この事をきっかけに職を追われるまでになった事は見つけられなかった。椋平広吉が後々「インチキ」として後ろ指刺されるのは確からしいが、電報ではなく手紙を送った事実も分からない。・・・想像するに、あくまで、椋平広吉をモデルにしただけで、細かな事実は脚色ではないかと思う。

考え過ぎかもしれないとは思うものの。作品を観ながら、途中から全然別の事を考えてしまった。椋平には見えて、他の誰にも見えない虹。要は「見えないものをどう信じるか」。このお話は、その事に対する壮大な寓話なんじゃないか、という事。将棋の指し手まで細かく魅せるラビット番長。でも、歴史劇の観点では少し描き方が雑過ぎている、という気もしたからかもしれない。

見えない物を見る。それが例えば「芸術」だとすると。椋平は芸術家で、石野は芸術から離れた市民の生活に対応するのかもしれない。石野が見たのは、椋平の中にある、「芸術」のような価値の分からない何か、だったんじゃないだろうか。ある側面からみると無価値なものが、別の側面からみると価値を持つ事は、世の中にたくさんある。芸術は、その最たるものだと思う。干物と笹の葉の茶…要は普通はそれ程高値では買わないモノ…を、椋平から高額で買い取り続ける石野。終始穏やかな表情で穏やかな物言いの石野だけれど、干物の値段が高すぎる、と指摘されると、明確に「価値は私が決める」と言い切る石野を見て、そんな事を思う。

単に椋平の歴史的な事実をデフォルメして描きたかった訳ではないのではないか…と思ったので、そんな、物語とは別の事を想像しながら見ていた。折しもコロナ禍の中、芸術は「不要不急」と指差されることが多かったここ2年程。椋平と石野の交流の中に、見えないものヘの欠くべからざる敬意のようなものを、コロナに毒された中での勝手な解釈かもしれないと思いながらも、感じ取った。

物語全編、白黒。衣装はすべて喪服のようで。唇は黒く塗られている。その光景、私は何かに対する「喪」の表現ではないか、と途中までは思っていたのだけれど。ラストで、椋平の見ていた、色のない世界である事が明かされる。最後に色づく世界。演出として効果的。純粋に度肝を抜かれた感覚だった。ふと映画「ベルリン 天使の詩」を思い出す。

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