<観劇レポート>ワンツーワークス「恐怖が始まる」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 ワンツーワークス「恐怖が始まる」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | ワンツーワークス |
回 | ワンツーワークス #34 |
題 | 恐怖が始まる |
脚本 | 古城十忍 |
演出 | 古城十忍 |
日時場所 | 2021/12/09(木)~2021/12/19(日) テアトルBONBON(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
『ワンツーワークス』は、古城十忍(こじょう・としのぶ)が主宰する劇団です。
過去の観劇
- 2024年07月19日【観劇メモ】ワンツーワークス「神[GOTT]」
- 2023年11月05日ワンツーワークス「アメリカの怒れる父」
- 2023年06月18日ワンツーワークス 「R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム」(2023年)
- 2023年02月20日ワンツーワークス「アプロプリエイト―ラファイエット家の父の残像―」
- 2022年10月08日ワンツーワークス「消滅寸前 (あるいは逃げ出すネズミ)」 ・・・つづき
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
ある原発作業員の四十九日に一人の女が訪ねてくる。出迎えた女と同様、訪ねてきた女の夫も原発作業員だ。死んでしまった夫と、近い将来死んでしまうかもしれない夫。
女たち二人の会話を通して、原発作業員の労働実態、二つの家族が抱えてしまった不安や亀裂が次第に浮き彫りになってくる……。「この人たち、全員亡くなったんですか?
亡くなったわね。うちのダンナなんて早かったわよ。」女は明日、夫の四十九日を迎える。夫は見るも無惨な、非業の死を遂げたのだ。
その女を、もう一人の女が訪ねてくる。こちらの夫はまだ生きているが、近いうちに死ぬとその女は確信している。夫たちはなぜ死に至り、なぜ死に直面しているのか。
女たちの話から断片的に事実が浮かび上がる。過去に恐ろしいことは確かにあった。
トンデモナイことが幾つもあった。
だが、本当の恐怖は今から始まる。ゆっくりと始まる……。
福島第1原発事故によってもたらされた恐怖がひたひたと忍び寄る日常を女たちの視点を通して描く、ブラックにしてユーモラスな家族劇。
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2021年12月10日 18時00分〜 |
上演時間 | 115分(途中休憩なし) |
価格 | 4800円 全席指定 |
チケット購入方法
カンフェティで購入・カード決済しました。
セブンイレブンで、指定席引換券を発券してもらいました。
当日受付で指定席券と交換してもらいました。(座席指定不可)
客層・客席の様子
男女比は4:6くらい。
40代upが多かったです。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
ワンツーワークス「恐怖が始まる」115分休無
再々演も作品初見。面白かった…なんて迂闊に言えないテーマだけど。原発の作業員の話。大事な事は常に話題にされてない。夫婦の間でさえも…てことか。Aイベント公開ダメ出し楽しすぎ。笑ったり、違和感あったセリフから物語を深く知れたり。超オススメ! pic.twitter.com/qLT3Od4dq2— てっくぱぱ (@from_techpapa) December 10, 2021
映像化の情報
情報はありません。
満足度
(5/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
原発で働く、下請け会社の社員。被ばく線量が年間「20」に収まっていればいいが、20を超えると働けなくなる。みんな20に収まっていたはずが、同僚が白血病になって死んでしまった。その遺族の妻と、同僚の妻と、遺族の妻の姉(息子が原発で働いている)の会話を通して明らかになっていく、原発の捉え方の違い。死んでしまった夫と、その妻は、原発で働くことについてどういう会話をしていたのか…という事を軸にに、夫が死ぬ前と、四十九日と、時間を行ったり来たりしながら、原発で働く事について紡いでいく物語。
作品は再々演との事。震災後、2年目、4年目、そして10年目の上演。
面白かった…という言葉が、とても不謹慎に思えてしまうくらい、色んなことを考えた。原発の現実。そこで働く人の労働条件。自分の街に戻りたいという使命感。…良くも悪くも、いろいろな現実や感情が、短い時間の物語に織り込まれていた。同じ舞台上で展開する会話の時間がコロコロと移り変わっていく事で、夫が死んでしまった現在と、生きていたころの過去を行き来しながら語られるのが効果的。死んでしまった今はこう言う話題になっているが…生きていたころ夫はどう語っていたのか、どう考えていたのかという事が、対比されて描かれる。
「十分な保護がない状況で、原発で働くことは、危ない。」という、とてもシンプルな事実は、傍から観ている側には誰にでもよく分かるのだけれど。これまでもたくさんの物語で描かれてきたように、いわば「大人の事情」「忖度」「立場」が邪魔をして、真実は常に語られない。常に最も大切な核心については、何も語られずに事態が進行していく怖さは、これまでの原発を扱った作品にもあった怖さで。
更にこの物語では踏み込んで、主人公の夫婦のコミュニケーションを問題にしていて。この夫婦は、結局最後まで危険性について会話しない。割と古風な夫婦で、夫について従う良き妻、という二人だという事もあるものの…最も近い人間関係の夫婦なら、もう少し危険性についてちゃんと会話できるはずなのに、それですら難しい。そういう暴力的な性質を、原発の問題は孕んでいるのだ…というのが、何とも恐ろしい。 「恐怖が始まる」タイトルの通り、恐怖なのは放射能ではなく、「大人の事情」でもなく、最も身近な人とさえ、この事の核心について語る事が難しい…という事なのかもしれない。緻密なドラマの中に、その恐怖が、ただただ、影を落としていて、どこかコメディタッチな部分も混ざっている作品なのに、とにかく重い後味を残してくる作品だった。
前回楽しかったので、今回もアフターイベントに「公開ダメだし」がある回を選んだ。終演後、演出の古城十忍が、台本を持った役者たちに本日の公演のダメだしをするイベント。セリフのトチリを指摘されて笑いが起きたと思えば、細かい台詞のニュアンスの指摘が物語の理解を助けてくれる効果もあるのは、とても興味深い。面白いのは、ニュアンスの指摘をする箇所は、私にとっても若干の違和感があったので(細かい台詞は記憶していないまでも)脳裏に残っていたセリフだった事。1つの会話、1つのセリフに込められるほんのちょっとしたニュアンスで、物語ってこうまで変わるんだなぁ…という演劇創りの裏側が、ちょっとだけ垣間見れるのが面白かった。