<観劇レポート>劇団印象-indian elephant-「ジョージ・オーウェル〜沈黙の声〜」
【ネタバレ分離】昨日観た芝居、 劇団印象-indian elephant-「ジョージ・オーウェル〜沈黙の声〜」の観劇レポートです。
もくじ
公演前情報
公演・観劇データ
項目 | データ |
---|---|
団体名 | 劇団印象-indian elephant- |
回 | 劇団印象-indian elephant-第28回公演 |
題 | ジョージ・オーウェル〜沈黙の声〜 |
脚本 | 鈴木アツト |
演出 | 鈴木アツト |
日時場所 | 2022/06/08(水)~2022/06/12(日) 駅前劇場(東京都) |
団体の紹介
劇団ホームページにはこんな紹介があります。
劇団印象-indian elephant-とは?
“印象”と書いて“いんぞう”と読む、劇団印象-indian elephant-は、劇作家・演出家の鈴木アツトを中心に2003年に設立。
2014年に法人化(特定非営利活動法人)。「遊びは国境を越える」という信念の元、“遊び”から生まれるイマジネーションによって、言葉や文化の壁を越えて楽しめる作品を創作し、観劇後、劇場を出た観客の生活や目に映る日常の景色の印象を変える舞台芸術の発信を目指している。
2010年より韓国演劇人との国際共同制作を開始。2012年、『匂衣(におい)』が、密陽夏公演芸術祝祭、居昌国際演劇祭に、『青鬼』がD.Festa(大学路小劇場祝祭)に招聘され、韓国で上演。
また、タイの演劇人との交流も始まり、2014年、『匂衣(におい)』がBangkok Theatre Festivalに招聘され、バンコクで上演。近年は、1.大人向けの新作の書き下ろし戯曲(鈴木アツト作・演出)と、2.既成戯曲や小説を原作に脚色した作品(鈴木アツト演出)、3.子ども向け作品、の三つのスタイルで、年に2~3本の作品を上演している。また、子ども向け作品の内、『子ゾウのポボンとお月さま』(初演2017年)は、レパートリーとして、毎年、再演を重ねている。
事前に分かるストーリーは?
こんな記載を見つけました
『動物農場』、『1984』で知られる小説家ジョージ・オーウェルが、インドで生まれたこと、第二次世界大戦下でBBC(英国放協会)のラジオ局で働いていたこと、その放送による情報戦の主な敵が日本だったこと、を知ってこの物語を書きたいと思った。 当時の大英帝国の植民地インドでは、独立を求めるインド人たちの声を、イギリスが力で押さえ込んでいる状況だった。そこに、第二次世界大戦が起こる。インドを独立させたくはない、しかし、戦争協力は欲しい。そう考えた英政府は、BBC内にインド課を新設した。インドの将来のリーダーたちを味方につけるべく、ラジオで“文学”を使ったプロパガンダ放送を始めたのだ。38歳のオーウェルは、その責任者として抜擢された。そして、真珠湾攻撃の後は、“大東亜共栄圏” を掲げ、植民地開放を謳う日本が、直接の敵となっていく。
イギリスを信じるか、日本を信じるか、で分断されるインド人たち。彼らに囲まれながら、英政府の意向を受けたBBCで働くオーウェル。ファシズムとの戦いのためなら、自由の抑圧は許されるのか。そこには、理念が現実に引き裂かれる苦しみがあったはずだ。分断の時代だからこそ、世界が割れてゆくことに抗いたい。その思いを込めて、この物語を届けようと思う
ネタバレしない程度の情報
観劇日時・上演時間・価格
項目 | データ |
---|---|
観劇日時 | 2022年6月9日 14時00分〜 |
上演時間 | 135分(途中休憩なし) |
価格 | 4000円 全席自由 |
チケット購入方法
劇団ホームページからのリンクで予約しました。
当日受付で、現金でお金を支払いました。
客層・客席の様子
男女比は6:4くらい。様々な年代層の客がいました。
観劇初心者の方へ
観劇初心者でも、安心して観る事が出来る芝居です。
・歴史劇
・シリアス
・会話劇
・考えさせる
観た直後のtweet
劇団印象「ジョージ・オーウェル~沈黙の声~」135分休無
オーウェルの第二次大戦~戦後を描いた伝記的な芝居。面白かった。いろんな要素が織り込まれてるけど、抑圧する側とされる側の、両方に立つ苦悩を、物語として描くのがよい。毎度気になるけど、どの程度事実なか調べたくなる。オススメ。 pic.twitter.com/vdb7UZozn7— てっくぱぱ@観劇垢 (@from_techpapa) June 9, 2022
満足度
(4/5点満点)
CoRich「観てきた」に投稿している個人的な満足度。公演登録がない場合も、同じ尺度で満足度を表現しています。
感想(ネタバレあり)
ストーリーは、事前記載の通り。ジョージ・オーウェルが1941年から勤めた、BBCでの仕事を舞台に、インド政策に存在する二面性を、自身の葛藤と交えて描く。ウィキペディアのジョージ・オーウェルの項を読むと、割と晩年の出来事のようで、1950年には亡くなっている。いつぞやの授業で習った「動物農場」と「1984年」は、この頃に相次いで書かれた作品らしい。
BBCの放送自体は、事実上はインドへのプロパガンダ。ナチスや帝国主義の日本がが台頭してきている時代において、少しでもイギリス寄りの思想を植え付けるのが目的。ナチスに屈するのは最悪な選択肢だとしても、インドをイギリスの隷属国家として抑えておくのは、本当に良いのか。長年イギリスに隷属していたインドとの板挟みの状況や、「鉤十字の夜」を書いたキャサリン・バーデキンとの交流を描きながら、抑圧される事への抵抗や、解放について描いていく。
どちらかというと、伝記を分かり易く芝居に乗せてもらっている感覚が強く、共感して、泣いたりするような事は無かったけれど、純然たる事実としてこういう苦悩があった、こういう時代があったという描写は、後世の我々に、想像を強いてくる感覚がある。
劇団印象の作品、毎度見る度に思うのは、この物語はどの程度事実に基づいたものなのだろう、という事。今回も観終わった後、あちこちの情報を調べる。BBCのインド向け放送に従事していたころのオーエンのエッセイ「詩とマイクロホン」が見つかったり。よく知らなかった歴史上の人物を、演劇を通して知り想いを馳れる機会が得られるのは、毎度心地よい。